詳報 学校の働き方改革 答申素案の全体像

12月6日に中教審初等中等教育分科会の「学校における働き方改革特別部会」が取りまとめた答申素案。昨年7月以降、1年半にわたって議論を重ねてきた教員の長時間労働の是正に向け、文科省、教育委員会、各学校が直ちに取り組むべき方策の全貌が明らかになった。答申素案に合わせ勤務時間の上限を定めたガイドライン案も示され、文科省では来年以降、財政措置や制度改正も含めた大規模な業務改善に着手する。一方、答申素案では「子供のためであればどんな長時間勤務も良しとする」という学校現場の価値観は教員を疲弊させ、結果的に子供のためにもならないとして、教員一人一人の意識改革も求めている。

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答申素案の全体像

特別部会で示されたのは「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」の答申素案。①学校における働き方改革の目的②改革の実現に向けた方向性③勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方の促進④学校及び教師が担う業務の明確化・適正化⑤学校の組織運営体制の在り方⑥教師の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の改革⑦改革の実現に向けた環境整備⑧改革の確実な実施のための仕組みの確立とフォローアップ――の8章からなる。

別紙として▽各種データに基づいた教員の勤務実態▽これまで学校・教師が担ってきた代表的な業務の今後の在り方▽働き方改革の諸施策を実施したことによる在校時間の縮減の目安▽学校における働き方改革に関する総合的な方策パッケージ工程表――が付属する。

また、公立学校の教員の勤務時間の上限を定めたガイドライン案も示された。

学校の働き方改革の必要性

第1章では、これまでの日本型学校教育の成果を踏まえながらも、今後の社会変化への対応や新学習指導要領への円滑な実施に向けて、教員の働き方の実態を改革し、チーム学校の機能強化を図る必要があるとした。そのために、学校や教員の業務範囲を明確にし、教員の専門性を生かして授業改善や児童生徒に接する時間を確保できる勤務環境の整備を目指すとした。その上で、改革の実現によって教職の魅力が再認識され、教員志望者の増加や教員自身の誇りにつなげるとした。

第2章では、教員の長時間労働の現状と要因を分析。学級担任制の小学校では学級担任の教員が担当する授業時数が多く、給食や休み時間も児童と一緒に指導や活動をしているため、児童の在校中は校務分掌業務や授業準備の時間が確保できないとした。中学校や高校では、生徒指導や進路指導の業務負担が大きく、補習指導、部活動に関わる時間も長いとした。特に増えつつある若手教員は経験の少なさやサポート体制の未整備によって長時間化する傾向があることを明記した。

この他にも▽家庭・地域の教育力低下による学校・教員の業務範囲の拡大▽指導案や教材は全て自作してこそ一人前という職業意識▽書類作成などの事務負担▽管理職のマネジメントが働きにくいなどの学校の組織運営体制の問題▽希薄な勤務時間管理への意識――などを挙げた。

勤務時間の上限規制

第3章では、勤務時間と健康管理について現状の労働基準法や給特法、労働安全衛生法など関連する法律上の規定を示した。その上で、勤務時間管理については2017年1月20日に厚労省が示した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が国公私立を問わず全ての学校で適用されるとし、校長や教育委員会などに対して全教職員の勤務時間の把握の責務があるとした。服務監督権者である教育委員会は従来多くの学校で行われてきた自己申告方式ではなくICTの活用やタイムカードによる客観的な勤務時間の把握に向け、直ちにシステムを構築するよう求めた。

また、給特法の超勤4項目(①生徒の実習②学校行事③職員会議④非常災害、児童生徒の指導に関し、緊急の措置を必要とする場合)以外の所定の時間外勤務も含めて在校時間として把握し、民間や他の公務員に準じた時間外勤務の上限の目安時間を超えないように定めた「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」については、上限の目安時間まで教員が学校で勤務をすることを推奨する趣旨として受け取られては絶対にならないと強調した。

この他に▽教職員の休憩時間や勤務時間を考慮した登下校時刻、部活動、会議などの設定▽長期休業期間における一定期間の学校閉庁日の設定▽早朝や夕方以降での留守番電話やメールによる連絡対応▽部活動ガイドラインに沿った適切な活動時間、休養日の設定――を明記した。

労働安全衛生管理では、精神疾患による病気休職者が公立学校の教育職員の0.5%を占め、教員の過労死が社会問題になっていると指摘。学校設置者に対して労働安全衛生法に基づく速やかな体制整備を求めた。特に50人未満の小規模校も含めた全ての学校でのストレスチェックの実施や教職員が身心の不調について相談しやすい環境づくりへの取り組みを促した。

教育委員会は管理職の育成・登用においてマネジメント能力を重視し、学校の重点目標や経営方針に働き方改革の視点を盛り込むことで、学校組織全体が働き方への意識を高められるようにする。学校評価とも連動させ、業務改善の実効性を上げる。人事評価においても、同じような成果であればより短い在校時間でその成果を挙げた教員の方を高く評価するようにする。

文科省、教育委員会、学校が取り組むべき方策
表1

第4章では、これまで学校が担ってきた代表的な17の業務(表1)を整理した上で、業務の役割分担・適正化を着実に実行させるために、文科省、教育委員会、各学校がそれぞれ取り組むべき方策を示した。

文科省は社会と学校とのバッファとしての役割を担い、関係機関や社会全体に対して働き方改革の趣旨や協力を求めたメッセージを発信する。今後学校に新たな業務を付加するような制度改正を実施する場合には、スクラップ・アンド・ビルドを原則とし、教職員の業務量を一元的に管理する文科省初等中等教育局財務課との相談を徹底する。

教育委員会は中間まとめを踏まえて2018年2月9日付の通知で示された13項目(表2)の取り組みを推進。各学校や地域で業務が発生した場合には、教員が専門性を発揮できる業務であるか、児童生徒の生命・安全に関わる業務であるかを踏まえた上で、その業務を誰が担うかを検討する。また、学校運営協議会制度の導入や地域学校協働本部の整備により、学校が保護者や地域住民の理解・協力を得られる体制を構築する。

表2

各学校では、管理職が教職員間で削減する業務を洗い出す機会を設定したり、一部の教職員に業務が偏ることのないように校内分担を見直したりすることで、業務の大幅な削減に取り組む。文科省が出すメッセージや学校運営協議会制度などを活用し、地域や保護者、関係機関への連携体制を推進する。

これまで学校・教員が慣習的に担ってきた業務の多くは、他にはっきりとした担い手が存在しないために、学校・教員が担ってきたものであり、仮にこれらの業務を今後学校・教員が対応しないと決めても、担い手がいない状態を放置すれば再び学校・教員の業務とされてしまいかねないとして、教員以外の専門職員、スタッフ、地域人材、学校外に委ねる場合でも、その責任の所在を明確にし、受け皿を学校や地域社会の中に確実に整備する必要があるとした。特に部活動は地域でそれに代わり得る質の高い活動機会を確保できる体制を整え、将来的に学校から地域への移行を積極的に進めるべきだとした。

また、学習指導や生徒指導、学校運営など、学校の全体計画や個別の児童生徒に対する計画作成業務に多くの時間を要していることを踏まえ、各計画の簡素化や複数計画の体系化など、合理化を進める。さらに、学習評価では指導要録における文章記述欄を大幅に簡素化し、通知表が指導要録の指導に関する記録の記載事項を全て満たす場合には、通知表を指導要録とすることも可能とするなど、大胆な見直しが必要だとした。

教育課程の編成においては、標準授業時数を大きく上回った授業時数を実施することは教員の負担増加に直結するため、すべきでないとした。さらに、食育や環境教育、防災教育など、現代的な諸課題に関するさまざまな教育については、これまでの指導内容と別に新たに取り扱うのではなく、その目的や目標を踏まえ、教科横断的な視点で関連性を持たせながら取り組むことが重要だとした。「総合的な学習の時間」の授業を土日や夏季休業期間に学校外で実施するなどして、家庭・地域と連携して探究的な学びの実現につなげることも明示した。

組織運営体制・勤務時間制度の見直し

第5章では、今後の学校の組織運営体制の在り方として▽主幹教諭、指導教諭、事務職員などのミドルリーダーによるリーダーシップの発揮▽ミドルリーダーが若手教員を支援・指導しやすくする環境整備▽事務職員の質向上や共同学校事務室の活用など、学校事務の適正・効率化――を掲げた。
教員個人に細分化して割り振られている校務分掌についても、整理統合を進め、特定の教員に業務が集中し長時間勤務が常態化することのないようにする。管理職の業務負担の軽減や若手教員の支援として、主幹教諭や指導教諭は重要な役割を担っているとした。

表3

教育委員会はチームとしての学校の実現に向け、学校の求めに応じて人材を配置するための人材バンクを整備したり、スクール・サポート・スタッフの確保のための予算を充実させたりして、管理職の負担軽減を図る。

第6章では、給特法と1年単位の変形労働時間制の導入について方針を明記した。

給特法では、同法のために教員の勤務時間管理が不要であるという認識が現場に広まり、教員の時間外勤務を抑制する動機付けを奪ったという指摘があるとした。教員の自発的勤務は管理職からの超過勤務命令の下で実施しているものではないが、教員が自らの校務分掌を踏まえて実施しているため、教員は「業務としてやらなくてはならないもの」という意識で実施しているのが実態だとした。

さらに、学校現場における自発的勤務は教員自らがその判断で実施するものであって、勤務時間管理の対象にはならないという誤解が生じ、そのために自発的勤務の時間を含めた勤務時間管理の意識の希薄化や、時間外勤務の縮減に向けた取り組みが進んでいない点は認めざるを得ないとした。

一方で、教員の専門性や職務の特徴を踏まえると、給特法の基本的な枠組みを前提とした働き方改革に取り組み、教員の厳しい勤務状況を改善するとした。なお、現在4%となっている教職調整額の水準については、改革の取り組みの成果を踏まえつつ、必要に応じて中長期的な課題として検討すべきだとした。

1年単位での変形労働時間制の導入については、現行制度上、地方公務員は適用除外となっているが、教員の勤務態様として、児童生徒が学校に登校して教育活動をする期間と児童生徒が登校しない長期休業期間では繁閑の差が実際に存在しているとし、地方自治体の判断により条例で1年単位の変形労働時間制を適用できるよう法制度上の措置をすべきだとした。

表4

ただし、実際の導入に当たっては長期休業期間中の業務量を一層縮減させることが前提だとし、▽長期の部活動休養期間の設定や部活動指導員の活用▽主催者への部活動の大会日程や大会規模の見直し要請▽研修の精選・受講しやすい環境整備――に取り組むべきだとした。

また、全教員に対し画一的に導入するのではなく、育児や介護などの事情や所定の勤務時間以上の勤務になっていない教員などには、選択によって制度を適用しないこともできるようにすることを求めた。

指導・運営体制の充実と改革のフォローアップ

第7章では、働き方改革の実現に向けた学校の指導・運営体制の強化・充実策として▽小学校における英語教育の早期化・教科化に伴う英語専科教員の充実▽中学校における生徒指導担当教員の充実▽校長や副校長・教頭の事務関係業務の軽減を目的とした共同学校事務体制強化のための事務職員の充実▽スクールカウンセラーの全小中学校への配置、スクールソーシャルワーカーの全中学校区への配置、常勤化などに向けた調査研究▽部活動ガイドラインの順守を条件とした部活動指導員の配置促進▽授業準備や学習評価などの補助業務を担うサポートスタッフの配置促進▽スクールロイヤーの活用促進▽学校運営協議会制度の導入や地域学校協働活動の推進――などを盛り込んだ。

今後の検討事項には▽小学校の教科担任制の充実、年間授業時数や標準的な授業時間数の在り方を含む教育課程の見直し▽免許更新制の実質化や多様な人材の教育活動への参画も含めた養成・免許・採用・研修全般にわたる改善・見直し▽EdTechの効果的な活用と学校外との連携▽小規模校の在り方の検討▽教員の勤務時間や労働安全衛生体制について調査・監督する地方自治体の人事委員会の効果的な活用――などを挙げた。

表5

第8章では、工程表(表5)を踏まえ、各教育委員会、学校などに具体的な働き方改革の取り組みを求めた。文科省では、学校の業務改善のための取り組み状況の調査などを通じて、働き方改革の進ちょく状況を市区町村ごとに把握し、働き方改革が進んでいない地方自治体を公表したり、取り組み状況を点数化して評価したりして、働き方改革への取り組みを促すとした。

また、文科省にさまざまな施策に積極的に取り組んでいる地方自治体には、予算上、制度上のインセンティブを講じる仕組みを構築することの検討を求めた。その上で、教員勤務実態調査と比較可能な調査について、3年後をめどに実施すべきだとした。