重要課題にどう取り組むか 柴山昌彦文科大臣に聞く

柴山昌彦文科相が就任して丸2カ月がたった。11月には、遠隔教育の推進などを盛り込んだ「柴山・学びの革新プラン」を発表した柴山氏に、教育観や展望、重要課題への取り組み方針を聞いた。(聞き手・教育新聞編集部長 小木曽浩介)


――大臣就任から3カ月目に入った。いまの所感は。

文科行政は大変範囲が広い。国会も、日々質問などの準備に追われる毎日だった。あっという間だった。ようやく最近、少し慣れてきたかなと感じているが、まだまだ勉強することばかり。しっかりと気を引き締めて、これからも頑張っていきたい。

――就任時の会見では、「教育勅語」についての発言が取り沙汰された。

教育勅語の思想が日本を戦争に駆り立てた負の側面があるので、それは真摯(しんし)に反省しなければならない。しかし日本は他国と比べても、災害時に助け合ったり、家族を大切にしたりなど、日本人特有の良い精神を示している側面もある。私が言いたかったのは、後者の良い側面は大切にしたいということだ。

――あらためて教育観を聞きたい。

教育は一番われわれの根元にあり、重要な行政だと感じている。そしてそこに、社会の尊敬や関心が向けられるべきだとも考えている。

「教育は一番われわれの根元にある」と語る柴山文科相

人生100年時代を迎えるに当たり、現在Society5.0、そしてグローバル化と、大きな政策的柱がある。こういう変化の激しい時代だからこそ、一人一人の可能性とチャンスを最大限に生かして、社会変化に対応していける人材を育成することが何より大事だ。

インクルーシブで多様な、寛容の精神を養うとともに、世界に通用するトップ人材の育成という両方を、バランスを取ってやっていかなければいけない。

そういう観点から、新学習指導要領の実施や高大接続など、新しいタイプの人材を育てるための環境整備が、今後ますます重要になってくるだろう。

こういった改革に取り組むにも、しっかりとした予算が必要だ。この大事な時期に大臣になれたことを大変光栄に思うとともに、予算の獲得、政策の施行に万全を期したい。

――11月22日に「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」を発表した。

Society5.0の時代を迎える今、学校は人と人とのかかわりの中で、児童生徒の人間としての強みを伸ばしながら、人生や社会を見据えて学び合う場となることが求められている。そのために先端技術をツールとして活用し、教師の授業を支援し、児童生徒の学びの質を高める必要がある。

今回の柴山プランは、学びの核心に向けた施策の大きな方向性を示したもので、個別具体的な政策の検討に向けたキックオフとなるものだ。従来の取り組みの加速化を図りつつ、これまでにない新しい取り組みについても、スピード感を持って実施していきたい。

――具体的な柱は。

三つある。一つ目は、遠隔教育の推進による先進的な教育の実現だ。2020年代早期に全ての小・中・高校で活用できるように、全国に取り組みを普及させる。民間大学などのノウハウ活用も促進していく。

特に中学校の遠隔授業は、教室に教師がいることを前提として、ニーズの高いプログラミング教育や英会話で、実証的な取り組みを検討していきたい。

二つ目は、先端技術の導入による教員の授業の支援だ。ビッグデータの活用による指導の充実や指導力の分析で、教員一人一人の資質向上に向けた取り組みを進める。

三つ目は、先端技術の活用のために、学校のICT環境整備を進めていくことだ。

こういったプランを省内や外部有識者の協力で議論し、年度内に中間取りまとめ、6月頃までに取りまとめを実施し、必要な措置を講じる。

――学校における働き方改革についてはどう考えるか。

質の高い学校教育を維持、発展させるためには教員の業務負担の軽減が喫緊の課題だ。現場の教師が、教師でなければできない業務以外も担っている現状を、抜本的に変えることが先決だ。

勤務時間管理の徹底、業務の役割分担・適正化、学校の指導・事務体制の効果的な強化・充実、勤務時間制度の改善など、教職の専門職としての教師にふさわしい勤務環境の確保に取り組む。

――いじめについてはどうか。

いじめは決して許されない。しかし、どの学校でも、どの児童生徒にも起こり得るものだと考えている。まずは、「いじめは絶対に許されない」という意識を社会全体で共有し、児童生徒を「被害者にも、加害者にも、傍観者にもしない」教育を実現することが大切だ。

引き続き、いじめに適切に対応できる、学校における指導体制の整備を推進し、各教育委員会や学校現場の取り組みを支援していく。

――教員に伝えたいことは。

教員は日々、教育の現場で、これからの時代を担う子供という宝と真正面から向き合ってくれている。教員に誇りや生きがいを持って仕事をしてもらうことが、何より大切だ。そのために働き方改革など労働環境を整えたい。そして人を育成する職業の尊さを、学校現場だけでなく、社会全体にしっかりと伝え、教員に対し敬意を払える社会にしていきたいと思っている。