世界の教室から 北欧の教育最前線(12)ひとりぼっちのクリスマス

教師の師走

12月のスウェーデンは伝統行事がめじろ押しだ。10日にはノーベル賞の授賞式、13日はルシア祭、25日はクリスマス、そして大みそかと続く。街はイルミネーションに彩られ、デパートではクリスマスセールがピークを迎えている。そして、「師走」はスウェーデンの教師にもやってくる。

ノーベル・ウイーク

スウェーデンの教員たちは伝統行事を大切にしている。多くの学校では12月に入ると「ノーベル・ウイーク」のプロジェクト学習に取り組む。受賞対象となった研究や研究者の生い立ちを調べたり、晩さん会の食事やテーブルマナーを学んだりする。学年が上がると、ノーベル賞の社会的機能や国際政治との関係、アルフレッド・ノーベルの遺言と近年の課題について分析することもある。

授賞式当日の10日になると、学校のカフェテリアでは晩さん会を模した特別な食事が出され、ステージでは優秀なプロジェクトが表彰される。また、高学年の生徒が企画して晩さん会後にダンスパーティーを開く学校もある。

主催国とはいえ、スウェーデン人の受賞はそれほど多くない。それゆえ、毎年の「ノーベル・ウイーク」は科学の発展を身近に感じる良い機会となっている。

ルシア祭

ノーベル賞が終わると次はルシア祭だ。13日は朝から公共放送(SVT)で特別番組が放送される。学校では白いドレスを着て頭にろうそくを着けた女の子たちが隊列を作り、歌を歌いながら行進する。天使、ジンジャーブレッド(人型のクッキー)、星の男の子、妖精トムテ(あるいはサンタクロース)などの衣装を着た子たちがこれに続く。

照明を落として真っ暗になった体育館ではルシアのろうそくがステージをわずかに照らし、サンタ・ルシアの合唱が厳かに響く。ルシアの儀式の後には、クリスマスバザーが開かれる。子供たちが作ったクリスマス飾りなどが並べられ、保護者が買っていく。スウェーデンではクリスマスは家族で祝うため、ルシア祭は学校で祝うミニ・クリスマスのような行事になっている。

スウェーデンはプロテスタントを国教と定めているが、学校と宗教は分離されている。イスラム系の移民・難民も多く、教室の中には偶像崇拝を禁じられている子もいる。それでも、ルシア祭やクリスマスは伝統行事の一環として毎年行われている。クリスマスの時期が近くなると、日用品や文房具を詰めたプレゼントを用意し、貧困国の子供たちに送る学校もある。バザーの収益金をどこに寄付するか、子供たちが話し合ったりする。

ツリーの下には大量のプレゼントが届いていた
クリスマスの慈善活動

クリスマスに慈善活動としてプレゼントや寄付を贈るのは、学校だけでなく、社会の中に広く浸透している慣習のようだ。

北欧で約200軒のホテルを運営するノルディック・チョイス・ホテルズは、クリスマスを独りで過ごす子供にプレゼントを届ける活動を展開している。活動に賛同する人はおもちゃ屋などでプレゼントを購入し、「メリークリスマス! このプレゼントは3~5歳の外遊びが好きな子向けです。ピアより」というようなカードを添える。

ホテルのクリスマスツリーの下にプレゼントを置いていくと、慈善団体を通じてひとりぼっちの子供に届けてくれる。寄付者に見返りはない。ホテルも、集められたプレゼント一つにつき約130円(10NOK)をユニセフに寄付している。昨年は6万3880個のプレゼントが集まり、約8430万円(63万8800NOK)が寄付された。

一年で最も日が短いこの季節には、日照時間は6時間を切る。登校も下校も暗闇の中だ。スウェーデンの冬は暗くて寒く、過酷だ。この寒さが社会的連帯の温かみを際立たせているのかもしれない。

(林寛平=はやし・かんぺい、信州大学大学院教育学研究科准教授。専門は比較教育学、教育行政学)