詳報 特別支援学校高等部 学習指導要領案

12月21日に文科省が公表した特別支援学校高等部の新学習指導要領案は、既に告示された小・中・高校などの新学習指導要領の流れをくみ、社会に開かれた教育課程の実現、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立など、初等中等教育全体の改善・充実の方向性を重視する。その上で、障害のある児童生徒一人一人に合った学びを実現し、キャリア教育の充実や生涯学習への意欲を高め、生涯を通じてスポーツ・芸術文化活動に親しめるよう配慮することを規定するなど、卒業後の自立と社会参加を意識した指導内容を盛り込んだ。

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視覚、聴覚、肢体不自由、病弱の各障害

特別支援学校高等部の教育課程は、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱については、高校の各教科などと「自立活動」で編成される。視覚障害、聴覚障害については独自の専門教科がある。

障害の特性などに応じた指導上の配慮事項については、視覚障害では①的確な概念の形成と言葉の活用②点字などの読み書きの指導③指導内容の精選④各種の補助具や教材、コンピューターなどの活用⑤見通しを持った学習活動の展開⑥高校などを卒業した生徒に対する社会経験を踏まえた指導内容――を盛り込んだ。空間や時間の概念を活用し、場の状況や活動過程を把握する活動を重視する。

障害特性に応じた指導上の配慮の例

聴覚障害では①言語概念の形成と思考力の育成②読書に親しみ書いて表現する態度の育成③言葉などによる意思の相互伝達④保有する聴覚の活用⑤指導内容の精選⑥教材・教具やコンピューターなどの活用――を挙げた。特に③では、音声、文字、手話などを活用した発表や話し合い活動の充実がうたわれた。

肢体不自由では①言語概念の形成と思考力・判断力・表現力の育成②指導内容の適切な設定・重点化③姿勢や認知の特性に応じた指導方法の工夫④補助具や補助的手段、コンピューターなどの活用⑤自立活動の時間における指導との関連――を示した。体験的な活動を通じて、的確な言語概念の形成を目指す。

病弱では①指導内容の精選②自立活動の時間における指導との関連③体験的な活動における指導方法の工夫④補助用具や補助的手段、コンピューターなどの活用⑤負担過重とならない学習活動⑥病状の変化に応じた指導上の配慮――を掲げた。間接体験、疑似体験、仮想体験などを取り入れた指導方法の工夫が求められる。

知的障害の各教科で充実の図られた内容(例)
知的障害

知的障害の場合は各学科に共通する各教科として独自に▽国語▽社会▽数学▽理科▽音楽▽美術▽保健体育▽職業▽家庭▽外国語▽情報――が置かれる。このうち、「外国語」と「情報」は生徒や学校の実態を考慮し、必要に応じて設けることができるとされている。それ以外に、「特別の教科 道徳」「総合的な探究の時間」「特別活動」「自立活動」が開設される。

各教科の目標および内容は、特別支援学校小学部、中学部の各教科と同様に、①知識および技能②思考力、判断力、表現力③学びに向かう力、人間性――の資質・能力の三つの柱に基づいて整理した。各教科の目標や内容の記述についても現行の学習指導要領と比べて大幅に記述を増やした。

各教科の内容では、「国語」で資料を活用して自分の考えを表現することを充実したほか、「数学」におけるデータの活用や「保健体育」での五輪・パラリンピックなどの国際大会の意義や役割、「音楽」「美術」での創意工夫を生かした表現などを手厚くした。成人年齢の18歳への引き下げを踏まえ、「社会」では社会参加と決まりや日本の国土と国民生活などを、「家庭」では消費生活・環境を、「職業」では勤労の意義などを取り上げる。

知的障害の程度に応じて、特に必要がある場合には、小・中・高校の学習指導要領の各教科での目標および内容の一部を取り入れることができることも規定している。

自立活動の6区分27項目
「自立活動」

「自立活動」では、個々の生徒に設定される具体的な指導内容の要素が6区分27項目となり、現行から1項目増えた。生徒の実態を把握した上で、個々の生徒に必要とされる項目を選定。項目を相互に関連付けて具体的な指導内容を設定する。

「健康の保持」については①生活のリズムや生活習慣の形成②病気の状態の理解と生活管理③身体各部の状態の理解と養護④障害の特性の理解と生活環境の調整(新規)⑤健康状態の維持・改善――の5項目。

「心理的な安定」は①情緒の安定②状況の理解と変化への対応③障害による学習上または生活上の困難を改善・克服する意欲――の3項目。

「人間関係の形成」は①他者との関わりの基礎②他者の意図や感情の理解③自己の理解と行動の調整④集団への参加の基礎――の4項目。

「環境の把握」は①保有する感覚の活用②感覚や人との特性についての理解と対応③感覚の補助及び代行手段の活用④感覚を総合的に活用した周囲の状況についての把握と状況に応じた行動⑤認知や行動の手掛かりとなる概念の形成――の5項目。

「身体の動き」は①姿勢と運動・動作の基本的技能②姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用③日常生活に必要な基本動作④身体の移動能力⑤作業に必要な動作と円滑な遂行――の5項目。

「コミュニケーション」は①コミュニケーションの基礎的能力②言語の受容と表出③言語の形成と活用④コミュニケーション手段の選択と活用⑤状況に応じたコミュニケーション――の5項目。

重複障害者に関する教育課程の取り扱い

障害の重複化・多様化への対応は、重複障害者に関する教育課程の取り扱いとして、生徒の障害の状態に応じた教育課程を編成できるよう規定した。

知的障害を含め、障害の状態により特に必要がある場合は、▽各教科・科目の目標および内容に関する事項の一部を取り扱わないことができる▽高等部の各教科・科目の目標および内容の一部を中学部または小学部の各教科の目標および内容に関する事項の一部によって代替できる▽外国語科に属する科目については、小学部・中学部の外国語活動の目標および内容の一部を取り入れることができる――と定めた。

知的障害を併有する生徒の場合は▽障害の状態により特に必要があれば、「知的障害」の各教科などを履修することができる▽各教科・科目の目標および内容の一部または各教科・科目を知的障害のある生徒のための教科の目標および内容の一部または教科に代えることができる――とした。

重複障害者のうち、障害の状態により特に必要がある場合は、各教科・科目、「特別活動」「総合的な探究の時間」の目標および内容に代えて、「自立活動」を主として指導できるとした。

特別支援学校高等部の学習指導要領は2018年度中に告示され、21年度までを移行期間とし、22年度から年次進行で実施される。なお、「総合的な探究の時間」は19年度から、知的障害における「特別の教科 道徳」は20年度から先行実施となる。