多忙化解消は地域人材が鍵 若手・ミドルの育成と両軸で

東京都品川区立大原小学校(児童数273人)は、コミュニティ・スクール(CS)の活用を主とする「マンパワーの増加」と、若手を中心とした「教職員の人材育成」の両軸で、教員の多忙化改善に取り組んでいる。CSはここ数年で導入校が急増。学校現場での働き方改革の「サポーター」としても期待されている。教員の業務負担を軽減するためにCSをどのように運営していくべきか、次世代を担う若手教員とミドルリーダー育成のポイントとは何かを、二宮淳校長に聞いた。


CSへの働き掛けでマンパワーを増やせ

「教員の多忙化改善には、まずマンパワーの増加が必要不可欠だ。しかし、教員の増加は現実的には難しい。ならば、今いる教職員と地域の人材を組み合わせてどう工夫していけるのか、その一歩を踏み出した」と二宮校長はCSを活用した狙いを強調する。

文科省が推進していることもあり、全国的にCSの数は増加の一途をたどっている。同省の調査によると、2018年4月1日現在でCSを設置している学校は全国に5432校。公立学校に占める割合は14.7%で、この1年間で設置校は1.5倍になった。

東京都品川区は16年度から「品川コミュニティ・スクール」の取り組みをスタートさせ、18年度には全区立学校でCSが設置されるようになった。同区の場合、学校運営に参画する「校区教育協働委員会」と、実際に学校支援を行う「学校支援地域本部」の二つの組織を同時に設置したのが特徴だ。それぞれの組織運営に関わり、学校と地域をつなぐ学校地域コーディネーターを各学校に配置している。

大原小が取り組む多忙化改善のイメージ

大原小は、16年度にモデル校に指定され、CSを設置。「学校支援地域本部」を「ふるさと大原支援本部」と名付け、さまざまなボランティア活動を展開している。

同校では、教育計画に関わることで、かつ、必ずしも教員がやらなくてもよい業務を支援本部に積極的に移行し、教員の業務負担の軽減を試みてきた。その業務は、校外学習や課外活動の支援、校内の掲示物、学芸会の小道具作りなど、多岐にわたる。膨大な学校業務のうち、何割を支援本部に移行していけるか、今後も挑戦していく。

二宮校長は「例えば掲示物ならば『英語を日常的に学べるような場をつくってください』といったように、それぞれの業務に対する教育的な意味を伝えた上で取り組んでもらっている。そうすることで、支援本部のスタッフにも学校教育に関わっている意識が生まれ、やりがいを感じてもらっている」と話す。

教育効果の向上にも
「ふるさと大原支援本部」による工夫された掲示物

CSの導入で、地域未来塾(放課後に行われる基礎学力の支援や英検対策講座など)の運営をはじめ、これまでやりたくても、教員のマンパワーだけではやれなかったことに取り組めるようになった。CSを活用して児童を取り巻く環境を工夫することで、教員の多忙化改善を図るだけでなく、児童の学びや体験の充実も実現させ、教育効果の向上につながった。

二宮校長は「多くの人に関わってもらうことで、学校をこれだけの人が応援してくれているということが、子供たちにも伝わる。地域に対して感謝の気持ちが芽生えるし、やがて自分たちが大きくなったときに、支援する側になってくれることにも期待している。そのような循環ができると、地域の活性化にもなる」と語る。

ただし、こうした新しい制度が学校に入ってくるときには、校長と副校長がうまく業務分担をしなければ、逆に多忙化を招いてしまうと二宮校長は指摘する。同校では学校地域コーディネーターや支援本部のボランティアスタッフとのやり取りに関しては、校長自身がリーダーシップを取るようにしている。

「教職員のことは副校長や主幹教諭が、外のことは校長が動かすというように、本校では役割分担を明確にしている。CSのような新たな制度を回していくためには、制度が入ってきたときのかじ取りも鍵だ。制度を入れただけでは意味がない。その制度をどう使っていくのかが重要だ」と話した。

教員が業務に悩む停滞時間を減らす

教員の多忙化の一因に、若手教員の増加が挙げられている。同校でもその傾向は強い。「本校が配属1校目という教員が46%を占めている。今後さらに若手教員の増加が予測されることからも、若手教員、ミドルリーダーの育成なくして多忙化改善は実現しない」と二宮校長は指摘する。

同校は管理職と主幹教諭、ベテラン教員から成る人材育成支援部を作った。そこが主導して校務分掌の調整をしたり、若手へのOJTに取り組んだりしている。

二宮校長はその狙いを「例えば2年目の教員でも、研究主任や生活指導主事を任せている。若いうちから任せることで学ぶことも多く、期待を感じて頑張って成長してくれる。若手教員を育成しながら学校の中核として活躍させることを目指している」と説明する。

さらに低学年、中学年、高学年の教員を、それぞれ一つのハウスとする「ハウス方式」を導入。例えば、2年生の児童に何か問題があれば、低学年ハウスの教員みんなで考え、対応する。

子供たちを複数の教員が見ていくことで、1人で抱え込まずに済むようにしている。脱セクショナリズムの発想で、学び合うチームづくりにも力を入れ、組織的な対応を日常的なものにしている。

大原小に赴任して3年目となる二宮校長

二宮校長は教職員に対して「学校の働き方」そのものを考えるプレゼンテーションを定期的に行っている。例えば、「Ohara 70% plan」と名付けた、2020年までに年休取得70%を目指す方針や、保護者対応、リスクマネジメント、学級崩壊のメカニズムなどについて、校長自らが教職員にメッセージを投げ掛ける。こうしたリーダーシップによって、教員が日々の業務の在り方に悩みを抱くことで生じる「停滞時間」を減らすことにつなげている。

二宮校長は「多忙化改善には、CSの活用、地域連携、教員の育成など、全ての点を結び付け、総合的に考えて学校経営することが重要だ」と強調した。