現役中学生作家・鈴木るりかさんインタビュー(上)

3年連続で『12歳の文学賞』(小学館主催)大賞を受賞し、デビュー作の連作短編集『さよなら、田中さん』(同社刊)が9万5千部という異例の売れ行きをみせた新人作家・鈴木るりかさん。昨年10月に刊行された最新作『14歳、明日の時間割』(同)もすでに各方面から大きな注目を集めている。そんな文学界の超新星は、都内の私立校に通う現役中学生。制服姿で「学校が終わってから(取材場所に)来ました」とはにかむ15歳の素顔とは――。


■人は誰かとの関わりの中で前を向く
――『12歳の文学賞』で大賞を連続受賞、その後14歳で文壇デビューも果たしました。周囲はどんな反応でしたか?

最初の受賞作は締め切りギリギリに送ったものだったので、まさか大賞を頂けるとは思っていなくて。私も家族も「えっ、あれが?」という感じでした。(本が発売されて)友達には「読んだよ」と声を掛けられたり、買ってくれた子がいたり。でも普段は、以前と全く変わらず接してくれています。

――小説はいつ書いているんですか。書く上で気を付けていることは。

『14歳、明日の時間割』は一昨年の冬休みから1年くらいで書き上げました。平日は学校優先なので、週末や夏休みにまとめて書いています。

気を付けていることは、なるべく独りよがりな小説にならないように。読む人に分かりやすく伝わるよう、難しい表現はできるだけ避けて、簡潔に書こうといつも心掛けています。

――最新作に込めた思いは。

程度の差はあっても、人は必ず他の人と関わりながら生きていて、その関わりの中で気付きや成長があって前を向くと思うんですね。この本でも中原くんという存在が、それぞれの章の主人公が前進するきっかけになっています。

最新作『14歳、明日の時間割』は各編を時間割に見立てた短編集。小さな田舎町の中学校を舞台に、史上最年少で小説の特別賞を受賞した明日香(「国語」)、東京への転校が決まっているのに、志望校が全てE判定の坪田くん(「数学」)、憎むほど体育が苦手で、マラソン大会を前に途方にくれる茜(「体育」)らの思いが描かれている。不安や逡巡(しゅんじゅん)、孤独を抱える彼らには、成績優秀でスポーツ万能、その上誰に対しても優しい「中原くん」はまぶしく見えるが、彼らに一筋の光をくれる存在でもある。

――中原くん、スーパーマンですよね。

(担当編集者と)「天使みたいな存在だね」って話をしました。最初、中原くんは「体育」だけの予定だったんですけど、最終的に全部の章に登場することになりました。知らず知らずのうちに誰かが誰かの人生に作用している、そういうことを伝えたいと思いました。

――「国語」はシチュエーション的に、鈴木さん自身と重ねてしまう部分もありました。

3割くらいは事実です。特に母親や父親のエピソードは実話ですね。「国語」は最初全然違う話を書いていたんですけど、通学途中に突然アイデアが降ってきて、そこから全部書き直しました。

ほぼ完成させていたにもかかわらず「絶対こっちの方が面白いと思うので頭から書き直します」と担当編集者に連絡を入れ、その後一週間もかけずに書き上げたそう。本作の中でも一番のお気に入りはこの『国語』だという。

――小説はどのように書き進めていくんですか。

ぼんやりとした設定は決めるんですけど、そうすると後は登場人物が勝手に動き出してくれるので、私はただその情景を書きとどめている感じです。人の描写はたぶん…私の頭の中でいろいろな人のしぐさを自然と取り入れているんだと思います。

――デビュー作の『さよなら田中さん』も『14歳―』も、印象的な箴言(しんげん)が多く出てきます。小さい頃からたくさんの本を読んできたそうですが、これまでの読書体験が基になっているのですか。

子供向けの海外ドラマに出てくる言葉やことわざはよく使います。それから、前作の「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え」や、今作の「どんな姿になっても、命の砂時計の最後のひと粒が落ちきる瞬間までは生きている」は母方の祖父の言葉で、どちらも重要なキーワードになっています。

小説は「あまり悩まず書く」と話す鈴木さん
■「生きること」は「食べること」に直結

今の時代、生きづらいのは大人ばかりではない。自らの決断だけで人生の方向を決められない年齢だからこそ抱える悩みを、鈴木さんは10代の視点で丁寧に描き出す。ただ、それ以上に胸に迫ってくるのは、彼らに生きる希望の灯がともる場面だ。

――「生きる」は2冊に共通するテーマでもありますね。

小学校6年生のときに祖父を亡くして以来、生きることについても深く考えるようになりました。そこから書いてみようと。前作では最後に三上くんが自殺しようとしちゃうんですけど、はなちゃんのお母さんに「とりあえずメシを食え」と言われてその気持ちがうせていったように、生きることと食べることは直結しているんじゃないかなと思います。

――今後はどういったテーマを書いていきたいですか。

テーマというのではないんですけど、最後に登場人物が救われる話にしたい、という思いはあります。超能力を持っているとか、そういうファンタジーなものではなくて、私たちみたいな、身近な人たちが出てくるお話を書いていきたいです。


【プロフィール】鈴木るりか(すずき・るりか) 2003年10月17日東京都生まれ。小学4年生時、「賞品の図書カードで『ちゃお』を一生分買いたい」という理由で書いた小説が小学館主催『12歳の文学賞』大賞を受賞。以降小5、小6時も受賞し、史上初の3年連続大賞受賞者となった。17年、14歳の誕生日に、大幅に改稿した受賞作2編を含む連作短編集『さよなら、田中さん』でデビュー。現在都内の私立女子中学校3年在学中。好きな作家は志賀直哉、吉村昭。好きな科目は国語、嫌いな科目は数学。