現役中学生作家・鈴木るりかさんインタビュー(下)

「小説を書くのは休みの間だけ、あくまで学業優先」という現役中学生作家・鈴木るりかさん。卓越した表現力や語彙(ごい)を持ちながらも、彼女が紡ぐ物語に貫かれているのは等身大の視点だ。インタビュー後半では、学校やクラブ活動など普段の様子と、鈴木さんの「教師観」についても尋ねた。


「作文」は得意じゃない
――学校ではクラブに入っていますか。

「家庭科部」に入っています。料理とか裁縫とか。今は高3の先輩の送別会準備で忙しいんですが(鈴木さんが通うのは中高一貫校)、文化祭では中3全員で軍手のぬいぐるみを作って展示しました。それと、毎年パウンドケーキを売るんですけど、作るのは中3からなんです。中1、中2では作らない。

――「パウンドケーキ作れるようになったら家庭科部員として一人前」という感じなんでしょうか。ところで、鈴木さんの著書ではいずれも、進学問題に直面する児童生徒が出てきます。特に中学受験組の熾烈(しれつ)な様子は衝撃的でした。ご自身も経験されたそうですが、実際はどうだったんですか。

私自身の受験は結構緩い感じだったんですが、もっと大変な人はいたと思います。毎日塾に通っていたり、すごい量の宿題を出されていたり。

『さよなら田中さん』では中学受験を控えて連日夜遅くまで塾に通い、追い込みをかける小学生の姿も描かれている。受験に備え、一月いっぱい学校を休む受験生に、塾の講師は「学校に行って気分転換することも大事」だと声を掛ける。

 実際に塾を優先せざるを得ない子供がいる中で、小学校や中学生にとっての「学校」とはどんな場所かと問うと、「楽しく、自主的に学べる場所」という答えが返ってきた。

「年齢を問わず多くの人に読んでもらいたい」と話す鈴木さん
――勉強はどうですか? 数学はあまり好きではないそうですが。

やっぱり難しくって…。ただ、これから実際に書くかどうかは別として、例えばミステリーを書くときに理数系の知識も必要になると思うので、数学への苦手意識は克服していきたいです。

――好きな教科は国語だとか。文章を書くこと自体は以前から好きだったんですか。

物語を創ることは好きでした。

――作文は得意だったんじゃないですか。

私の場合、読む人を楽しませようという意識が働いて、事実より「盛って」書いちゃうことが多いので、得意とはいえないですね。

確か小学校4年の頃だったと思うんですけど、10歳を記念した「2分の1成人式」というのがあって、「将来の夢」をテーマに作文を書いたんです。それで最初に「一から九までは『ひとつ』『ここのつ』と『つ』が付くけれど、10歳になったら付かないから違う気分になる」と書いたら、先生に「この部分は全部なくていいよ」と言われてしまって。結局その部分は全部削って、「私の将来の夢は〇〇です」という内容だけの文章になったことがありました。

――目の付けどころが面白い! もったいないですね。鈴木さん自身はどう思われたんですか。

まぁしょうがないなって。でも、そのとき先生に「鈴木さんはシナリオライターや小説家が向いてるんじゃない」と言われたんです。それを聞いて、なってみたいなと思いました。まだ文学賞に応募する前の出来事ですが、先生のその一言はすごく印象に残っています。

忘れられない小学校の先生
――著書には個性的な先生たちも登場します。実際の先生には、どのような印象を持っていますか。

小学校のときの担任の先生は本当に変わった人で、『さよなら、田中さん』に出てくる木戸先生のモデルにもなっているんですけど、授業中にノストラダムスの大予言とかオカルトっぽいことを言ってきたり、たぶんまだ若いはずなのに年齢不詳で、本当に謎が多くて。

サッカー選手って、小学校高学年の男子の多くが憧れる職業ですよね。あるときその先生が「この中でサッカー選手になりたい人?」って聞いてきたから、クラスの結構な人数が手を上げたんです。そうしたら「この中で本当にサッカー選手になれる人は1人もいません」って、ズバッと言っちゃって。

――手を上げさせておいて。

「そ、それ今言っちゃう?」みたいな。その後、そこそこいい話をしてくれたはずなんですけど、前の一言が強烈すぎて入ってこない。みんな黙ってしまって、教室が凍り付きました。

――小説のモデルになるほど、印象的な先生だったんですね。

私たちの担任をした翌年に腰を痛めて学校を辞めちゃったので、1年間だけだったんですけど。先生の話す内容も見た目も、いまだにはっきり焼き付いています。

――先生との距離感は? 「タメ口」でしゃべったりするんですか。

優しげなあまり怒らない先生だと、そういう風に話す生徒もいます。生徒指導部の先生だとちょっと態度が変わったりするんですけど。私はあまり(友達同士のようなしゃべり方は)しません。先生は先生です。

――「教師」という仕事は、鈴木さんにはどう見えているのでしょうか。学校にもAIやロボットの導入が進み、その役割も変わっていくのではないか、という話もあります。

毎年…じゃないかもしれませんが、いろんな生徒と人間として関わっていけるのはすごくいい仕事だと思います。それはAIにはできませんから。

先生は生徒にとってとても大きな存在で、私の作品にもよく登場します。実生活でも時に親よりも影響を受けることもあります。今もそうだし、誰にでも1人は大人になっても忘れられない先生がいるそうなので、そういう意味でも責任の重い仕事だなと思っています。

(クローズアップ取材班)


【プロフィール】鈴木るりか(すずき・るりか) 2003年10月17日、東京都生まれ。小学4年生時、「賞品の図書カードで『ちゃお』を一生分買いたい」という理由で書いた小説が小学館主催『12歳の文学賞』大賞を受賞。以降小5、小6時も受賞し、史上初の3年連続大賞受賞者となった。17年、14歳の誕生日に、大幅に改稿した受賞作2編を含む連作短編集『さよなら、田中さん』でデビュー。現在都内の私立女子中学校3年在学中。好きな作家は志賀直哉、吉村昭。好きな科目は国語、嫌いな科目は数学。