世界の教室から「ルワンダ」 IT立国を目指すデジタル教育

「アフリカの教育事情」と聞いて、どのようなイメージが思い浮かぶだろうか。サファリで動物たちに囲まれての自然教室?サハラ砂漠のオアシス教室?いろいろな光景を思い浮かべる方がいると思うが、今回はアフリカ大陸のほぼ真ん中にある、ルワンダ共和国のデジタル教育事情を紹介したい。


IT立国を目指すルワンダ

民族紛争により国民の約2割が虐殺された1994年の悲劇を乗り越え、ルワンダは近年「アフリカの奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げている。天然資源に乏しく、国土面積も狭い(四国の1.5倍)という厳しい状況下で、ルワンダは「IT立国」を掲げた国づくりを進めている。5000キロにも及ぶ光ファイバー網の整備や、「ビジネスしやすい国ランキング(世界銀行)」でアフリカ第2位に輝くなど、IT企業を中心としたスタートアップ支援で、IT立国への道を着実に歩んでいる。

そのルワンダでは、教育へのIT活用にも積極的に取り組んでいる。写真で子供が持っているノートPCを、見たことがある方もいるのではないだろうか?

これは、One Laptop Per Child(以降「OLPC」)という、マサチューセッツ工科大学のニコラス・ネグロポンテ教授が主導して、05年に立ち上げられたNPOが提供しているノートPCだ。開発途上国の教育ツールとして約100米ドルで販売されたもので、当時としては画期的な低価格のPCであり、多くの大手IT企業が趣旨に賛同し、支援を行ってきた。

運営は非営利で行われ、各国の政府と協力して配布・利用がされており、ルワンダでは18年時点で500校以上に28万台が配布されている。国の本気度は紙幣にも表れており、500ルワンダフランにはこのノートPCが印刷されている。

OLPCのノートPCを使う子供(実施主体であるOLPC, IncのHPより引用)
デジタル教育推進の難しさ

教育とデジタルリテラシーを同時に向上させることを目指すルワンダ政府だが、順風満帆というわけではない。まずは国として水道・電気などの基礎インフラが完全に整っていない中で、ノートPCに投資することの是非について賛否両論が出ている。また、インターネット接続も課題の一つであり、例えば、ルワンダの公立小学校で生徒数十人が同時につなげられるWi-Fi環境はほとんどない。加えて、100米ドルとはいえ、ルワンダ人にとっては高価な機材のため、紛失防止などの理由で、自宅に持ち帰って使えないなど、本来ネグロポンテ教授が目指していた「遊びながら覚える」という状況にはなっていないのが現状だ。

さらに、教員の質や負担も課題の一つ。地方部ではITの知識に乏しい教員も多く、数日の研修を受けるだけではITの可能性や面白さを伝えるには不十分だ。その結果、クラスではPCの構造を伝えるだけであったり、基本的なタイピングソフトを練習するだけだったりになってしまっているケースも多い。

また、いまだ停電が頻発するため、ノートPCを用いた授業のために教員が数十台を事前に充電する必要がある。加えて、日本のようにプロジェクターや大画面モニターが教室に整備されているわけではないので、教員が説明をするにも、口頭説明と巡回で対応せざるを得ないなど、教員の負担になっているという話も耳にする。

アフリカの未来に向けて

このように現時点では、ルワンダのデジタル教育はさまざまな課題を抱えている。ただ、その事実から「この取り組みは失敗だった」と言い切るのは、やや早計だと思う。

例えば、公立小学校への積極的なノートPC配布によって、「政府がITにコミットしている」という外交的メッセージを強く出すことができている。事実としてルワンダは、Smart AfricaというアフリカのIT国際機関の本部招致に成功するなど、アフリカのIT分野のリーダーとしてのポジションを確立している。

また、その他の政府プロジェクトなどと、お互い補完し合うことで、今後はデジタル教育による学習効果が見込まれるかもしれない。特に、ITインフラの整備や教員のITリテラシーが高まってこれば、インターネットやPCの楽しさを生徒に教えられ、OLPCのノートPCが非常に効果的な教育ツールとして活用される日が来ることも十分期待できる。

「IT立国」というアフリカの小国ルワンダが目指す未来、引き続きウオッチしてみてはいかがだろうか。

(宮崎大学客員教授 狩野剛)