詳報 教育再生実行会議 第11次提言中間報告

教育再生実行会議の第11次提言の中間報告では、最先端技術の教育への活用と高校改革の2つのテーマについて、昨年7月からの技術革新と高校の各ワーキンググループでの議論を踏まえて提言をまとめた。中間報告の段階では具体像がまだ描かれていない提言もみられ、今年5月の最終報告に向けて、今後、WGで具体的な検討を進める。


技術の進展に応じた教育の革新

AIの急速な進化をはじめとする技術革新により、Society5.0が到来しつつある社会において、技術革新は教育にも大きな変革をもたらそうとしているとし、学校現場へのICTの導入や情報教育の重視を打ち出した。

基礎学力である基礎的読解力や数学的思考力、あらゆる学びの基盤となる情報活用能力の育成を重視。特に、プログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育を着実に実施する。国は、幅広い分野で新しい価値を提供できる人材の育成を目的に、STEAM教育を推進するため、「総合的な学習(探究)の時間」「理数探究」における課題解決的な学習活動を充実する。

急速に変化する社会に学校が即応していくため、教育課程や教科書を含めた学習指導の恒常的な見直しの在り方についても検討するとした。

技術革新における主な提言内容

学校教育にICTや先端技術を取り入れ、教育の質を高めていくため、技術革新に対応できる力を持つ教師の育成は喫緊の課題だとし、養成・採用・研修の全体を通じて、社会の変化や技術の進展を踏まえた教師の資質・能力を高めていくための方策についても言及。

国は教師が自らの資質・能力を継続的に高めていくことができるよう、国内外の企業・教育機関を含めた研修プログラム・教材の開発を推進する。また、任命権者はこれらの研修プログラムの受講を促進するため、自らの資質・能力を継続的に高める研修を受講した場合に人事評価で考慮することを考える。

また教師のICT活用指導力の向上を含む、Society5.0に対応した教員養成を先導するフラッグシップ大学(教員養成の指定大学制度)の創設も検討する。

高校「情報科」をはじめとした免許外教科担任が多い教科について、免許状を持つ教師を確保するため、免許外教科担任の許可や臨時免許状の授与を受けて指導した場合の勤務経験を免許状取得の際に考慮するなど弾力的な取り扱いを検討し、教科の免許状の取得を促進する。

企業や大学が学校と連携し、専門性の高い社会人や大学院生が教師やICT支援員としてICTを活用した教科の指導や教材の作成、校内研修での指導助言など学校教育に幅広く参画できる仕組みを検討する。自治体は、特別免許状や特別非常勤講師制度の積極的・弾力的な活用により、社会や産業での実践的な課題をテーマとする探究的な学習を支援したり、児童生徒の情報活用能力を育成したり、ICT機器やEdTechを活用して指導したりするスキルを持った外部人材を教師やICT支援員として積極的に配置・活用する。

技術の進展を踏まえ、学校規模や地理的要因にとらわれず、多様な意見や考えに触れたり、協働して学習に取り組んだりする機会を充実する。そのために▽外部人材との連携▽多様な科目選択による学習機会の充実▽通学して教育を受けることが困難な不登校児童生徒や病気療養児童生徒の学習機会の確保▽帰国・外国人児童生徒への支援――などの実現に向けて、全ての小・中・高校で遠隔教育を活用できるようにする。

特別支援教育では、ICTや先端技術を効果的に活用し、障害のある児童生徒への教科の指導効果を高めるための、支援機器の選定・活用に必要な指標・学習評価方法に関する調査研究に取り組む。

スタディ・ログを活用した、一人一人の能力や適性に応じた個別最適化された学びや協働学習の実現に向け、学校現場と企業の協働によるEdTechの効果的な活用に関する実証研究を進める。

デジタル教科書が法制化されたことを踏まえ、その活用方法や留意点に関するガイドラインを策定し、その円滑な導入に向けた取り組みを推進するとともに、デジタル教科書の効果や影響を把握し検証する。

デジタル教材をはじめとしたICTを効果的に活用し、新しい学習指導要領を円滑に実施していくため、企業や大学との連携・協働により、多様なICT環境の実態に応じたデジタル教材の作成を推進するとともに、全国の教師が技術を活用した教育方法について自主的に学んだり、校内研修に活用したりできるよう、誰でも手軽に活用できるポータルサイトを整備する。

国は、都道府県単位での統合型校務支援システムの共同調達・運用を促進するため、効率的・効果的なシステムの導入方法や都道府県単位での運用ルールについて整理し、校務の情報化を推進する。学校間のデータ連携・引き継ぎを踏まえ、出席簿、指導要録の電子化や様式の統一化の促進、校務の電磁的処理による効率化に向けて検討する。

学校のICT環境整備では18~22年度までの「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」のために必要な経費として、単年度1805億円の地方財政措置が講じられているが、使途の制限や条件付けができず、各自治体で予算化するため、現状では、自治体間で学校のICT環境整備に大きな差が生じている。こうした現状を踏まえ、国は、その要因・背景について分析し、阻害要因に対し必要な対応を速やかに実施し、市町村に働き掛けていく。

国は、自治体がICT機器を整備する際にできる限り費用を低減して調達できるよう、関係省庁が連携し、ICT機器の調達方法に関するガイドブックを作成する。また、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の在り方についてクラウドサービスの活用を想定した検討をする。

今後、自治体・学校とICT機器やEdTechを提供する多様な民間教育事業者との連携の下で、学校現場における技術の導入・活用が進むよう、学校現場のニーズを踏まえた技術や教材の開発、効果的な活用のためのガイドラインを策定する。

企業には▽学校や学習者が効果的に活用できる便利で安価なICT機器やネットワーク環境の開発・構築・整備▽EdTechを活用した学習効果の高い魅力的なデジタル教材の開発と教育現場への供給促進▽自治体や学校と連携した学校ICT環境整備に関する技術的ノウハウの提供▽ICTや探究的な学習を支援する人材供給の推進▽EdTechの技術開発や効果的な活用に関する事例創出や実証研究への積極的な協力――を求めていく。

新時代に対応した高校改革

中学校を卒業したほぼ全ての生徒が進学するようになった高校において、生徒の能力、適性、興味・関心、進路が多様化する中、高校が対応すべき教育上の課題は複雑化している。中間報告では、Society5.0を生き抜くために▽文章や情報を正確に読み解き、対話する力▽科学的に思考・吟味し活用する力▽価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探究心▽生徒一人一人が能動的に学ぶ姿勢――を共通に身に付けさせ、将来、世界をけん引する研究者や幅広い分野で新しい価値を提供できる人材となるための力を育むことが求められていると強調した。

高校生の約7割が在籍し、高校の学科で最も多い普通科では、生徒の能力や興味・関心を踏まえた学びの提供という観点で課題があると指摘。Society5.0に向けて共通的に求められる力を育成し、社会をけん引する人材を育成する観点から、普通科を学習の方向性に基づいて類型化することや学科の区分の見直しを含めて検討する。全ての生徒が、文系科目・理系科目のどちらかに偏重することなく両方をバランスよく学ぶ仕組みを構築する。

専門学科や総合学科についても、それぞれの学科が果たしている今日的役割を踏まえた上で、学科の在り方や今後の教育の質の向上方策について検討する。地域経済の活性化を担う人材を養成する専門学科では、社会や産業界の変化に応じた実践的な教育を推進する観点から、専門学科が自治体や産業界、大学と協働して、外部専門家の派遣や最新鋭の施設設備の共同利用、インターンシップの実施について地域の協力を得る仕組みを全国的に普及する。企業や大学と連携し、専門性の高い社会人が教師として学校教育に参画することを促進する。

高校改革における主な提言内容

新学習指導要領を踏まえ、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を推進するとともに、学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立を図る。その際、教科書や教材を適切に組み合わせて学校や生徒の実態に応じた授業を実施することを促す。AI・数理・データサイエンスや生命科学をはじめとした、Society5.0において重要となる分野における基礎を確実に身に付けることができるようにする。社会の急速な変化に応じて、教育課程や教科書を含め、学習指導の恒常的な見直しの在り方を検討する。

生徒が安全安心にスポーツや文化に親しむことができるよう、部活動の実施に当たっては、スポーツ庁および文化庁が策定したガイドラインを踏まえ、生徒の心身の健康管理、事故防止、体罰・ハラスメントの根絶を徹底する。

定時制・通信制課程では不登校経験者や中途退学経験者、特別な支援を必要とする生徒、帰国・外国人生徒、多様な背景を持つ生徒の割合が増加していることを踏まえ、その在り方を検討する。広域通信制高等学校においては、一部の学校で極めて不適切な学校運営や教育活動があったのを踏まえ、質の保障・向上を徹底し、社会の信頼を高めていく。

教科ごとの教師のまとまりが強い高校において、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善や、ICTを活用した指導、特別な配慮が必要な生徒への対応、地域と連携した教育活動の実施といった全校的な教育課題に対応した教師の育成を進めるため、自治体や高校は、校内研修を中核に据えた継続的な研修実施体制の構築や適切な評価の実施を推進する。

生涯学び成長し続ける教師の育成のため、若手教師の育成を重視し、初任者研修をはじめとした若手教師の研修を充実する。ベテランから若手への知識技能の伝承に取り組む。

大学は、高校の教員養成の質の向上を目指す。特に教職に関する学びを充実させるため、▽教職課程における学内の運営体制の整備▽教育内容の充実や担当教師の資質・能力の向上▽実施時期を含めた教育実習の充実▽教職課程に在籍する学生の知識・技能の定着状況をチェックするシステムの開発・普及――を実施する。国は、教職課程の教育を充実させるため、教職に強い大学と教科に強い大学が共同して質の高い教員養成ができる仕組みを検討する。自治体は特別免許状や特別非常勤講師制度の弾力的な活用により、高い専門性を持ち教師としての熱意と適性を有する学校外の人材を教育現場に活用する取り組みを推進する。

自治体は校長が自らの教育理念に基づき、特色ある教育活動を積極的に推進している場合には在職期間の長期化を図るなど、人事異動の在り方を再点検する。

現職教員以外で教員免許状を有する多様な人材が適時・適切に教壇に立てるよう、免許状更新制度の改善や、放送・通信・インターネットによる講習の開設の促進などにより免許状更新講習の弾力的な受講を可能にする。

高校が、市町村、産業界、高等教育機関、社会教育施設と協働して地域課題の解決を通じた学びを実現する取り組みを推進する。高校と地域との組織的・継続的な連携・協働体制を確立し、学校外の人的・物的資源の一層の活用を通して、「社会に開かれた教育課程」の実現を図るため、高校における「チーム学校」の実現、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入と地域学校協働活動の実施を推進する。

地域を素材に課題探究する学びを実現する上で、高校と地域をつなぐコーディネーターの果たす役割が重要であることから、国はその役割や在り方について総合的に検討する。

高校段階で地域の産業や文化への理解を深めることは、地方創生の観点からも重要であることから、関係機関の連携による高校の支援方策について検討する。

中山間地域において、高校の存在は地域の活力につながる重要な機関であり、生徒数の減少が予測される中で、小規模高校の教育水準の維持・向上を図る観点から、ふさわしい教育環境を検討する。

社会をけん引するグローバルリーダーを育成する観点から、国は、海外の高校や大学との連携体制の構築や、大学教育の先取り履修を単位認定する取り組みを推進する。

中高一貫教育の制度化や高大接続改革では、中高・高大の接続において目的意識を持った進路選択が行われるよう、多様な進路選択の実態も考慮しながら、中高の進路指導やキャリア教育の充実を図る。

多様な課題を抱える生徒にきめ細かく対応するために、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの役割が重要であることを踏まえ、国は、高校でのこれらの職員配置について全国的な実態を把握するとともに、結果に基づき、適正な配置・活用に向けた方策を検討する。

障害のある生徒の自立と社会参加に向け、国は、特別支援学校高等部や高校と労働分野の関係機関で実効的な連携体制が構築されるよう、就労支援コーディネーターや個別の教育支援計画の活用による効果的な事例について情報収集・提供する。

高校に在籍する日本語指導が必要な帰国・外国人生徒の大幅な増加に伴い、高校における帰国・外国人生徒の受け入れ体制を充実させるため、地域の関係機関やNPO、企業、大学と連携しつつ、日本語指導や学力の向上、進路・進学を支援する。