地域単位の総合文化部 掛川未来創造部「palette」

少子化で学校規模が縮小すると、多くの学校が現状の部活動を維持できなくなる。特に文化部は厳しく、すでに地方の学校では生徒の選択肢が吹奏楽部と美術部だけというところも珍しくない。そんな中、静岡県掛川市では2018年度から市内の全中学生を対象に、音楽、演劇、放送を融合した合同部活動として「掛川未来創造部 palette(パレット)」を創部。今年4月には初めての後輩を迎え入れる予定で、持続可能な文化部の実現に向けて次のステップに進もうとしている。中学生が主体となった文化部の活動を通じ、地域活性化も図ろうとする掛川市の取り組みを取材した。


学校の部活動とは一線を画す

未来創造部の活動は週に3回、一般的な学校の部活動とは異なり、午後5時半から始まる。現在の部員は10人ほどで、全員が「1期生」の中学1年生だ。中には、学校の部活動の練習に参加した後に合流する部員もいる。

未来創造部で実施しているプログラムは、吹奏楽を除く音楽、演劇、放送の三つ。いずれも市内の中学校にはない活動ばかりだ。どのプログラムも、指導をするのはプロの歌手や演奏家、俳優、朗読家などだが、費用は一部の教材費を除いて無料。土日にはプロの演奏会を聞きに行くなどの移動教室も数多く設定されるなど、充実した活動内容となっている。

地域を明るくする部活動に
新入部員勧誘の動画づくりに向けて動きを確認する部員

取材に訪れた日は、来年度の新入部員募集に向け、未来創造部の活動を紹介する動画づくりのための練習が進められていた。演劇や朗読、合唱など、実際の活動の様子を部員が再現し、セリフや動き、カメラアングルなどは部員同士で話し合いながら決めていく。活動には顧問の齊藤勇・ふじのくに文教創造ネットワーク理事長と、副顧問で元教員の大村容子氏が立ち会っているものの、指示を出す場面はほとんど見られない。部員たちの自主性に任せるというのが、基本的な指導方針なのだという。

部員たちはそれぞれの動きを練習したり、最初から最後まで通しで動画の展開を確認したりしながら、「この部分はもっとこうした方がいい」「朗読は小学生に親しみのある作品に変えよう」などと話し合いながら、台本の修正と改良を重ねていく。紆余(うよ)曲折がありながらも、最終的には何とか撮影のイメージが固まった。撮影した動画は、ナレーションやテロップを付けて動画共有サイトYouTubeに公開し、そこへ誘導するQRコードを付けたチラシも作成して市内の小学6年生に配布する予定だ。

部長の宮﨑真衣さん(掛川市立東中学校1年生)は「小学6年生のとき、新しい部活動ができると聞いて、芸術に興味があったので入った。学校の部活動と違って、自分たちで話し合いながらルールを決めたり活動したりする。地域の人に支えられているので、地域を明るくできるような活動をしていきたい」と話す。

学校では陸上部に所属している池冨陸央さん(同市立西中学校1年生)は「声優になるのが将来の夢。放送や演劇が面白そうだったので入部した。演劇で有名な作品のワンシーンを自分たちで再現するのは楽しい。陸上部の練習で疲れてしまって休むこともあるが、両立はできる。違う中学校の生徒と知り合えるのも魅力」と語る。

「palette」に込めた思い
活動内容は部員同士で話し合いながら作り上げていく

未来創造部の創部から間もなく1年、齊藤氏は「ただ表現するだけでなく、生徒が自分たちで考えながら活動する、主体的な文化部を作りたかった」と語る。そのため、新しい部活動の在り方を1期生の部員たち自身に考えてもらおうと、あえて部活動の名称や部長を決めないまま、活動をスタートさせたという。

それから約半年後、部員が活動を通じて互いのことを理解し合い、部員同士の関係性が構築できたタイミングを見計らって、どんな部にしていきたいかを話し合うことにした。「一色一色異なる部員の個性がパレットの上で表現できるように」「活動を通じて自分の将来を描けるように」という思いを込めて、名称は「未来創造部 palette」に決定、ロゴも部員たちがデザインした。完成したロゴには多様な文化活動を表したモチーフに混じって、しっかりと掛川市の形も描かれている。

部長には7人もの部員が立候補し、それぞれが思いを語り合った。「ここに来る子供はみんな夢を持っている。また、スポーツ以外で自分を表現したいとも思っている。自己表現の場は学校だけじゃない」と大村氏が指摘するように、子供たちが学校やスポーツ以外で自己表現ができる場は多くない。

今年4月には後輩が入ってくるが、1期生に「先輩風を吹かす」つもりは全くない。むしろ学年に関係なく一緒にプログラムを作りながら、やりたいことができるような部にしたいとの思いが強いという。

顧問の齊藤勇・ふじのくに文教創造ネットワーク理事長

持続可能な地域部活動の実現に向けて奔走する齊藤氏は「学校の部活動を地域に出すという単純なやり方ではうまくいかない。創造性を持って、周囲の人たちと協調する子供を地域で育てれば、将来的に地域に貢献してくれる人材になる。その意味でも、これからの地域社会にとって『未来創造部 palette』の活動がいかに魅力的かをアピールしていく必要がある」と強調する。

地域部活動という新たな試みの最終目標、それは10年後や20年後に未来創造部で育った子供たちが夢をかなえ、地域で活躍することにある。

(藤井孝良)