学生が考える部活動改革 教員志望者の本音と不安

今、部活動の在り方が大きく変わろうとしている。部活動の活動時間などを定めた部活動ガイドラインの策定や学校における働き方改革など、一連の動きを教員志望の大学生はどう捉えているのだろうか。日本部活動学会会長であり、文化庁の文化部活動ガイドライン作成検討会議の座長を務めた長沼豊学習院大学教授は今年度、同学の教職課程の選択科目として「部活動指導論」を全6回で開講した。全国的にも珍しい部活動をテーマにした授業に参加した教員志望者に、部活動に対する「本音」と「不安」を聞いた。


部活動をテーマに白熱議論

「部活動指導論」は長沼教授の著書『部活動の不思議を語り合おう』(ひつじ書房刊)をテキストに、学生が部活動の意義や問題点を議論する演習形式の授業で、さまざまな学部から教員志望者約10人が受講。4回目の授業では▽部活動の意義▽部活動の問題点▽部活動指導の在り方――の3テーマに分かれ、グループで討議。成果を模造紙にまとめて発表し、さらに全体で議論した。

「部活動の意義」グループは生徒、教員、保護者、外部の立場から、部活動の肯定的な側面についてキーワードを列挙。「部活動を通じて教師と生徒のつながりができ、家庭でも応援などで子供を見るようになる」「教員にとっても生徒の成長を実感でき、やりがいになる」「部活動がスポーツの競技人口を増やしている側面もある」といった主張に対し、発表を聞いていた学生からは「やりがいがあるのは良いが、過熱するのは良くない」と反論があった。

「部活動の問題点」グループは、主に自主性と活動費の問題をクローズアップした。自主性については「生徒と教員が話し合う場を制度としてつくらなければ、現場任せでは状況は変わらない」と指摘。活動費については、離島の学校で部活動の遠征費をクラウドファンディングで集めた事例を紹介し、「用具などもコンペをすれば費用を安く抑えられるのではないか」と提案した。

グループに分かれて発表する学生

それに対し、他のグループの学生からは「提案は面白いけれど、コンペをすると教員の負担が増えるのではないか」といった意見が出た。

最後に発表した「部活動の指導の在り方」グループは「特別の教科 部活動」という、部活動を教科化する大胆なアイデアを披露。「部活動は教育課程上、明文化されておらず、位置付けがあいまいだ。それならば教科にして、教員免許のような指導者の資格をつくってはどうか。教育課程に位置付けられれば、活動時間も明確になり、教員の負担も減る」と、そのメリットを強調した。

この斬新な提案に議論は白熱。「教科書はどうなるのか。全ての競技を扱えば、ものすごく分厚いものになる」「授業時間に組み込むと、他教科との授業時数の兼ね合いはどうするのか」などの意見が飛び交った。

「顧問はしたいけれど…」

中・高ともにバドミントン部だった福井幸さん(4年生)は「高校時代の顧問は土日返上で、毎日のように部活動に時間を割いていた。教員になったら、部活動の指導で自分の時間を取れないのではないかと気になっている。実態を知りたいと思った」と授業を受講した理由を話す。

部活動改革を巡る一連の動きを、教員志望者たちはどう捉えているのか。萩原雅貴さん(3年生)は「中学時代の陸上部で、頑張ることの大切さを学んだ。もし経験のない競技の顧問を引き受けることになっても、その競技の勉強はしたい。学ぶ姿勢を教師として示さないと、生徒もやる気を出さないと思う」と、現状の部活動を前向きに捉えている。

自分自身が部活動にどう向き合うかを議論する学生たち

一方、加藤虎太郎さん(3年生)は「部活動によって本務である授業に支障が出てしまっては、教員としていけないと思う。自分は中・高時代、競技カルタ部と将棋部に所属していたが、顧問は事務的な連絡程度でしか部室に来なかった。生徒が教え合う部活動が理想的。自分は人間らしい生活をする教員でありたい」と、現状の問題点を指摘する。

松原佳穂さん(3年生)も「中学時代は、吹奏楽部で週7日活動していた。その当時の大変さもあり、今も部活動にマイナスのイメージを抱いてしまっている。部活動を嫌いなまま教員になりたくはない。自分が家族を持ったらプライベートも大切にしたい」と将来への不安を語る。

実際に教員になり、部活動顧問を引き受けることへの不安について学生らに聞いたところ、▽経験のない部活動の顧問▽部活動に関する大会運営などの負担▽「幽霊部員」との接し方や、部活動を辞めたいと思っている生徒への対応▽生徒がけがしたときなどの保護者対応▽生徒との関係性――などが挙がった。

各グループの発表を終えて、長沼教授は「部活動の意義と課題は裏表の関係にある。三つのテーマはどれも、教員になったときに直面する自分自身の問題。そのとき、状況をただ受け入れるのではなく、解決策を提案できるようになってほしい。仕事を振られたときに『それは無理です』と言えるようになることも重要」と総括した。

否定的ではないが不安も
「部活動指導論」を担当した長沼教授

教員志望者にとって、部活動はやはり大きな関心事だった。インターネットで積極的に情報を集めている学生もいた。部活動そのものの存在意義や自らが顧問を引き受けることに否定的な学生は少なかったが、多くの学生がさまざまな不安を抱えていることも分かった。

授業を受講した4年生は、その多くが今年4月から教壇に立つ。

長沼教授は「教員志望者は全国的に減少しており、人材不足が10年先の教育現場に与える影響は深刻。初任から3年目までは部活動の顧問を持たせず、教科指導や学級経営などに専念させ、教員にとって土台となる専門性をしっかり身に付けさせるようにすべきだ」と強調する。

(藤井孝良)