「学校再建・飛躍のプロ」 長野雅弘校長の組織づくり(上)

 幾つもの中学・高校の再建に成功し、「学校再建・飛躍のプロ」として知られる長野雅弘校長。学校のみならず企業からも「長野校長のノウハウを知りたい」とアドバイスを求められ、企業数社の業績回復に貢献した実績がある。2018年度からは、東京都市大学付属中学校・高等学校の校長と同大教授を兼任する。赴任した1年目ですでに受験者数は130%にまでアップ、在校生の模試の成績も大きく伸びたという。長野校長が大事にするのは、人の「良いところ探し」。教育と人材育成のいずれにも実績のある長野校長に、組織づくりや学校再建の極意を聞いた。全3回。


■「失敗した」と悩む教員にエール
――著書で、組織運営では属する人の「心のロウソク」に火をつけることが大事だと強調されています。日々の教育活動の中で、教員の「心のロウソク」が消えたと感じる瞬間はありますか?

私は、教員の「心のロウソク」はそう簡単には消えないと思っています。子供と共有する時間や、子供たちの成長を自分の幸せと感じているからです。だから管理職になって授業が減ると、不満に思ったりします。

――それでも子供や保護者との関わりの中で、うまくいかないことが重なると、教員の「心のロウソク」が消えかかるかもしれません。どのような対応をしていますか?

「ポジティブ・フィードバック」という考え方をすすめます。どういうものか、生徒に対して行う場合を例に説明しましょう。

ある生徒の点数が70点だったとします。なぜ70点なのか、残り30点をなぜ取れなかったのか。原因を分析して対策を採るのも一つの方法ですし、間違ってはいないと思います。

一方、「ポジティブ・フィードバック」では、「70点も取れた」と捉えます。なぜ取れたのかを掘り下げて、成果につながった努力を分析する。そうすれば成功要因があぶり出され、次につながる。全く勉強せずに20点だったとしても、この方法で要因を分析すると、成功要因がはっきりと浮かび上がってきます。

――良い点数でも悪い点数でも、生かし方がある。教員の育成に応用できる考えですね。

校長には法的に権限があるだけではなく、責任や責務もあります。そして責務の一つに、教員を育成する役割がある。それをやらずに、「あの教員は駄目だ、この教員はいい」などと決め付けて点数化するようでは、校長の責務を果たしているとは言えません。

できない教員がいたら「ここはすごく良い。こちらはもう少し改善していこうか」などと、具体的な働き掛けをしないといけない。しかし、現実にはそうしたやり取りが不十分な学校も多いのではないでしょうか。

業務について事務職員と意見を交わす長野雅弘校長
――私立では教員の異動が少ないですが、公立では3年で転出することもあります。そのため、校長がさほど関わりを持たないまま異動してしまう教員もいると思います。

そうですね。でも、管理職として「良いところ探し」の名人であることは、重要な資質だと思います。それは、公立でも私立でも同じことです。

■私立だから分かる公立の難しさ
――公立学校の教員を経て私立学校の校長になったわけですが、公立と私立の違いを強く感じることはありますか。

教育をどう進めていくのか、校長として方針を示す上で違いを感じます。

時代が刻々と移り変わる中で、本来であれば「うちの学校はこういう方針で行く」という方向性を、校長が明確に打ち立てていかなければなりません。でも、公立ではそれがなかなか難しい。時代遅れの校訓だけを掲げていては、実情に合った教育ができないままになってしまいます。

――不易流行の「流行」の部分ですね。

時代はどんどん変わっています。また、大きな教育改革が進んでいます。学校が掲げるベクトルは、目指す方向は「不易」で変わらないのですが、ベクトルの幅は時代と共に太くなっていきます。

太くなる部分には、ICTも入れば、探究学習も入る。新たにいろいろなものが付け足されて太くなってはいきますが、向かっている方向自体は変わりません。その方向を見誤らず、ベクトルの太さを調整する。それができるかどうかが、学校に問われている力だと言っていいでしょう。

(聞き手 小松亜由子)


【プロフィール】

長野雅弘(ながの・まさひろ) 1956年、名古屋市生まれ。大学卒業後20年以上、高校で教壇に立つ。後に幾つもの私立学校で15年にわたり校長を務め、学校再建に尽力した。私学協会役員や各種審議会委員を歴任。2018年4月に学校法人五島育英会理事・東京都市大学客員教授・同付属中・高校校長に就任した。著書に「次代を創る教師論」(2018年9月)、「いじめからは夢を持って逃げましょう!」(2017年5月)、「校長先生、企業を救う」(2015年6月)など。