【震災から8年③】宮城県多賀城高の防災学習

「3.11」から、8年がたとうとしている。あの大震災以降「被災地だからこそできる学習を」という強い意志の下、「防災学習」に注力する学校がある。宮城県多賀城高校だ。新しく開設した「災害科学科」を軸に、防災・減災に関わる学習を積極的に展開している。同校の佐々木克敬校長、ESD(持続可能な開発のための教育)担当の菅原淳史教諭にその狙いと思いを聞いた。


「もう」なのか「まだ」なのか
――今年3月で東日本大震災から8年がたつが、受け止めは。

佐々木校長 2011年3月11日の東日本大震災で、本校が立地する宮城県多賀城市は死者188人、関連死30人という甚大な被害に遭った。被災したわれわれは、8年という年月を「もう」なのか「まだ」なのか複雑に受け止めている。

この大震災を受け、県は11年10月に県震災復興計画を策定し、防災教育の充実を復興の重点とした。さらに県教委では「みやぎ学校安全教育基本指針」を策定し、14年2月に大震災の教訓を確実に次世代に伝承する人材を育成するための「防災系学科設置基本構想」を示した。

この構想を踏まえ本校では16年度、1クラス40人の「災害科学科」を開設。既存の普通科と合わせて防災・減災についての学習を実施している。

――どのような学習を実施するのか。

菅原教諭 国が示す「第2期教育振興基本計画」の「被災地から発信する未来型の教育モデルづくりや防災教育の促進」に基づいて、全国へ学習内容を発信するパイロットスクールとして役割を担っている。

ESDの観点を取り入れ、①大震災で最も大きな被害を受けた宮城県だからできる教育の展開②大震災の教訓を次世代に伝承し、将来の災害対応に活用③将来発生するであろう災害時、社会のさまざまな分野で役割を果たせる人材の育成――の3点を踏まえ学習を展開する。

防災学習は既存の科目や特別活動の枠組みにとどまることが多く、横断的な学習への取り組みが少ない現状がある。そこで本校では教科横断型、かつ継続して学べるプログラムを開発した。「防災」「自然科学」「国際理解」を3本柱にした授業や、外部機関と連携したボランティアや課外活動を実施している。

基幹科目として位置付け
――具体的な学習内容は。

菅原教諭 「くらしと安全A」(4単位)と「情報と災害」(2単位)の2科目を、「災害科学科」「普通科」共に基幹科目として位置付けている。

「くらしと安全A」は、「家庭基礎」および「保健」の基礎的事項を学びつつ、防災や災害についての基礎知識と技能を学ぶ合科的な科目。衣食住や健康、生活環境などを防災・減災の観点から習得し、主体的に社会と関わる能力と態度を育む。

「情報と災害」では、災害時に生死を分けた正確な情報の収集と処理方法、発信の必要性など、防災・減災のために有用な情報処理技術について学ぶ。

――その他に特徴的な取り組みは。

菅原教諭 例えば、代表的な防災・減災学習の一つ「通学防災マップ」は、津波浸水域が示されたマップ2枚に生徒らが自身の通学路を書き込み、学校と家庭それぞれで保管する。災害時、万が一通信が途絶えた場合の帰宅や送迎の可否を判断する材料に用いる。

自然科学学習では海洋研究開発機構の研究員や東北大学の教員を講師として迎え、過去に津波被害を受けた浦戸諸島などでタブレット端末やドローンを使い地形や地質分布の調査をする。

他方で、生徒自身が主体的に動く機会も重視する。国際理解学習の一つ「まち歩き」は生徒らが宮城県を訪れた海外の人を対象に被災地をガイドし、震災時の様子や復興への道のりを伝える取り組み。さらにドイツやシカゴの高校生をホームステイで受け入れ、文化・スポーツを含めた幅広い交流もしている。

ボランティア活動は高校3年間通じて、35時間以上で1単位を認定する。自治体からの要請のほかに、生徒自らが課題を発見し企画・実行して地域活性化を目指す「PBL型」も盛んに実施する。

「人生を意味付ける力」が上昇
――これまでの学習の成果や課題は。

佐々木校長 答えが一つに定まらないESDの観点から防災・減災学習を実施するため、生徒の変容を今までよりも深く知らなければならない。そこで、これまでのパフォーマンス評価にとどまらない、多様な評価方式を試みている。その一つとして東北大学災害科学国際研究所と共同で開発しているのが、災害時の能力測定のための形成的評価だ。その実験の中で1年間防災・減災学習を続けると、「人をまとめる力」や「問題に対応する力」、「人生を意味付ける力」などが上昇する結果が得られた。

――今後の展望は

佐々木校長 2018年も多くの自然災害が国内外で発生し、被害が報じられるたびに防災・減災学習の必要性が訴えられた。喫緊の課題であることは間違いない。そしてその学習は、身近な地域の課題から地球規模の課題へ、地域の特殊性から国内各地の一般性へ発展的に取り扱える。

本校は今後も学校全体で、ESDの視点から防災・減災学習に取り組んでいく。新たな教育課題に挑戦し、成果を発信できるパイロットスクールとしての任を果たしていきたい。

(板井海奈)