教員の芽を育てる やりがいと楽しさを伝えて(上)

全国の小・中学校で、教員不足が広がっている。文科省初中局の担当者は「教員不足の解消に向けた対策は難しい」と語り、解決の糸口は見えづらい。そうした状況の中、一部の小・中・高校や大学、教育委員会などでは、教職の意義ややりがいに気付かせ、教員志望者を増やそうとする懸命の試みも進められている。そうした対策の成果は今後現れるのか。第1回は、現場レベルの取り組みを紹介する前に、教員不足を巡る全国的な現状を整理しておく。全3回。


必要な授業ができない

2017年度の始業日時点で、小学校では11自治体で常勤266人、非常勤50人が不足していた。一方の中学校では10自治体で常勤101人、非常勤153人が不足。また、実際に授業を受け持つ教科担任の不足も3自治体計34人に上り、「必要な授業ができない」「授業時間を確保できない」などの事態も発生していた。

2017年度始業日時点の教員不足(11都道府県・指定都市への調査から)

こうした状況は、文科省初中局が、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、大分県、鹿児島県、大阪市、北九州市、福岡市の11都道府県・指定都市の協力を得て実施したアンケート調査から分かったことだ。調査結果は、18年8月に開催された第101回教員養成部会で、資料「いわゆる『教員不足』について」として公表された。

背景には、過去10年ほどの教員採用を巡る動向の変化がある。10年以降、全国的に団塊世代の大量退職が進み、各自治体とも新規採用を増やした。その結果、それまで採用試験に合格できずに臨時的任用教員(臨任)として登録していた教員志望者の多くが正規採用され、臨任が不足気味となった。

正規教員の採用を増やしたといっても、団塊世代の大量退職分を補充するまでには至っておらず、足りない分を不足気味の臨任などでどうにか補っている自治体は多い。そのため、年度途中で病休・育休などで欠員が発生した際に、補充がままならないケースが発生している。

臨任が不足する背景には、採用試験の受験者減という根本的な問題もある。文科省初中局の担当者は「教員志望者の減少と地域偏在がネックだ。要因も複雑で、教員不足の解消に向けた対策は難しい」と語る。

現場の苦悩
公立小・中学校教員の退職者数の推移

教員不足で授業担当者や担任が確保できず、「授業ができない」などの事態は、18年度に入って各地で顕著に見られるようになった。

島根県松江市立中学校では、18年4~5月にかけて、教員不足のために3年生の3クラスで英語の授業を実施できない状況が発生していた。同校の英語の授業は、3人の教員が1学年ずつ受け持っていたが、3人のうちの1人である非常勤講師の異動後、後任を確保することができなかったからだという。

そのため、約1カ月間は他教科の授業を実施し、5月7日からは他の2人の英語教員が3年生でも授業を実施。後任の講師が着任した5月下旬以降、不足していた1カ月分を取り戻す形で対応したという。

同市教委の担当者は「教員不足は以前にも増して深刻化している」と述べ、「他県との連絡協議会などでも、毎回のように教員不足が話題に出るなど、各地で起きている課題だと実感している」と語る。

また、広島県呉市立中学校でも、18年度当初に必要な教員を確保することができず、国語と理科の授業を予定通り実施することができない状況が発生していた。

県教委によれば、18年度当初の段階で教員が足りていなかった県内公立学校は35校に上り、臨時的任用教員26人、非常勤講師12人の計38人が不足していたという。

こうした事例を見ても、教頭がクラス担任を受け持ったり、他の教員が授業を担当したりするなどして、ぎりぎりでしのいでいる現場の状況がわかる。対応する教員の過重労働に拍車がかかり、さらなる休職者増と欠員を生むなどの負の連鎖も、少なからず起きていると聞く。

臨時免許で改善なるか

文科省は18年10月、教員免許が失効状態にある民間の免許保持者らに対し、各自治体が一定の条件を満たせば有効期間3年の「臨時免許状」を出せるようにする方針を決めた。

これまでも教委による臨時免許状の授与は可能だったが、抑制的に運用されていたこともあり、ようやく見つけてきた候補者の免許状が失効状態で任用できないなどの事態が発生していた。今回欠員が生じた際の人材確保を容易にするため、制度の柔軟的運用が図られたという形だ。

この他に、教員が複数の教科の免許状を取得することを促す方針なども示されている。

一方、非正規教員の割合は全公立小・中学校教員の7%、約4万人に上っており、臨時免許状の授与では改善が見込めないという意見もある。

全教千葉教職員組合の寺田勝弘書記長は「非正規教員と正規教員で待遇に大きな差がある自治体もあり、人材が集まらないのは当然だ」と指摘。実際、教員を退職した者が、景気回復を背景に民間企業に流れ、時間外労働を強いられない仕事に就いているようなケースは多い。そうした中で臨時免許状制度の柔軟化を図ったとしても、退職して非正規教員を目指すという話は、まれなケースになるかもしれない。

現状の打開へ

文科省の調査によれば、各自治体が考える「教員不足」解消策として、▽正規教員の採用者数の引き上げ▽教職を目指す大学生への広報▽中学生・高校生を対象とした教職セミナーの開催▽学校における業務負担軽減の推進――などが上がっている。教員志望者を増やせば、採用までの間、非正規教員として任用できるという効果がある。

一方で、教員採用試験の受験者数は減少傾向にあり、13年度の18万902人から17年度は16万6068人にまで減少している。試験区分別の競争倍率を見ると、小学校3.5倍、中学校7.4倍、高等学校7.1倍、特別支援学校3.8倍と、小学校と特別支援学校の倍率が顕著に低い。

こうした現状を憂いているだけでは何も変わらないと、学校や大学、教育委員会など、さまざまなレベルで解決・改善に向けた取り組みもスタートしている。そのバックボーンとなっているのは、「教員志望者を増やすには、教員の仕事を体験させ、やりがいや楽しさを感じてもらうべきだ」という発想だ。

教職の魅力を伝える取り組みには、具体的にどのようなものがあるのか。第2回では、大学で進められている新たな試みをリポートする。

(小松亜由子)