教員の芽を育てる やりがいと楽しさを伝えて(中)

全国の小・中学校で教員不足が広がり、一部自治体では年度当初に授業ができないなどの事態も発生している。背景には、教員志望者の減少に伴う臨時的任用教員(臨任)の不足などがあり、解決の糸口は見えづらい。そんな中、各地の小・中・高校や大学、教育委員会では、教員志望者を増やそうと懸命の取り組みも行われている。教員志望者と学校教育現場をつなぎ、仕事のやりがいや意義に気付かせる千葉大学の取り組みを取材した。


全国の中でも、千葉県の教員不足は深刻だ。千葉県教委によると、2018年5月1日時点で未配置となっていた教員数は105人(千葉市を除く)に上る。県教委では、1講師登録可能な年齢を65歳まで引き上げるなどの対策を講じてはいるが、抜本的な状況改善には至っていない。

そうした中で注目されるのは、県に多くの教員を輩出する千葉大学教育学部の取り組みだ。「理論と実践の往還型教育実習」という同学独自のプログラムで、教員志望の学生が学内で理論を学びながら、並行する形で現場を体験するなどして、教職のやりがいや楽しさを実感している。

実習を1週+3週の分割形に
「理論と実践の往還型教育実習」の仕組み

「理論と実践の往還型教育実習」は、同学の中学校教員養成課程で15年度から行われている。同学部附属中学校で実施される教育実習を、従来の4週間続けて行う形から、1週+3週に分割して行う形にし、教科教育法の授業と連動させる取り組みだ。

プログラムの基本設計をした伊坂淳一教授は、従来型の教育実習には大きく二つの課題があったと指摘する。

一つは学生側の認識の問題。「実践的な授業づくり、特に学習指導案の作成についての基礎的理解ができていない学生が少なからずおり、『授業づくりに何が必要なのか』という指導観が成熟していなかった」と言う。従来型の教育実習では、実習の最後に行う自身の授業にのみ意識が集中する傾向が高く、そこに至る過程に学びの中心が来るようにしたかったと伊坂教授は狙いを述べる。

もう一つは実習を附属中学校に任せっきりにしていた、大学側の体質の問題。「大学教員に、教育実習も自分たちの責任範囲であるという意識を持たせるために、教育実習指導に参加してもらうシステムを整えた」と伊坂教授は語る。

最初に1週間の実習を実施

同プログラムに参加する学生はまず、3年次の前期に「教育実践研究」で授業構想、教材研究、指導案作成の方法などを学び、模擬授業をする。数学科3年の柴田有希菜さんは「指導案の作成は大学の授業で経験できていたため、実習時に抵抗なく書くことができた」と語る。

並行する形で5~6月には、1週間の教育実習に取り組む。狙いは生徒との交流や授業観察を通じ、学級や校務に慣れること。教職へのイメージを膨らませた上で、後半の実習に向けた打ち合わせも行う。理科3年の森重比奈さんは「自分に何ができて、どんな努力をしなければならないのかを具体的なものにする1週間だった」と振り返る。

1週間の教育実習を終えた学生は、再び大学の「教育実践研究」で実習の反省と指導案について討議を重ねる。「例えば黒板に字をうまく書けなかったり、声が後ろまで通らなかったりした実習生は、学内で練習するなどして実習の反省を基に努力した」と家庭科3年の菰田美咲さんは言う。

森重さんは「1週間の実習で、クラスの到達度に合わせた教材研究の仕方や、授業内容を深めるための準備について学んだ。後半の実習に生かせた」と、分割型で行う教育実習のメリットを強調する。

後半の実習は夏休み明けに行われるが、それまでの間に附属中の教員から指導を受けたという学生も多い。その一人、国語科3年の齊藤みなみさんは「授業の流れが具体的にイメージできるようになっただけでなく、後半の実習までにやるべきことや課題が明確になった」と語る。

伊坂教授は「一方では、この期間で集中力が切れてしまう学生もいるので、モチベーションを維持する大学側の働き掛けもさらに強化していくつもりだ」と今後の抱負を語る。

多くの授業経験を
国語の授業をする齊藤みなみさん

学生はその後、3年次の後期9~10月に後半3週間の教育実習に臨む。前半の実習の反省を生かし、生徒の到達度や実態を踏まえて授業を工夫するなどして、達成感を得られた学生は多いという。「各生徒の学力や得意・不得意などもだいたい把握できていたため、机間指導中に回るべき生徒も決められた」など、余裕を持って後半の実習をスタートできた学生も多い。

附属中のある教員は「指導案を固めてきてくれるので、後半の実習のスタートから授業を持たせられる」と、従来型の教育実習との違いを語る。

柴田さんは実習を終え、「往還型だったおかげで、1度目の授業実習から自分の中で反省点を見つけることができた。そうでなければ、生徒に発問することなく一方的に教え込み、それが良くないことであることにさえ気付かなかったかもしれない」と振り返る。

実習に参加した学生へのインタビューから、現場で実践を重ねることで学びが深まり、教職の醍醐味(だいごみ)を感じられるようになっていく様子をうかがうことができた。今後同学では、小学校教員の志望者も同様のプログラムを受けられるよう、調整を図っていく構えだ。伊坂教授は「多くの教育関係者が、理論と実践は一体的に進めていくべきだという意識に変わってきている。こうした取り組みをやらないと、大学側も生き残っていけない」と実感を述べる。

一方、小・中・高校などにおいても、教員志望の学生を育成したり、高校生に教職のやりがいを伝えたりする動きが起きてきている。第3回では、そうした取り組みをリポートする。

(クローズアップ取材班)