海外に飛び出す人材を育てる(上) 英語好き育成メソッド

実践的な英語力の育成は、学校教育に一層求められている。以前にも増して海外へ飛び出す人材を輩出する必要性が高まっている中、日本の英語教育は今後どうあるべきか。二つの公立高校に、グローバル人材育成に向けた新たな取り組みを聞いた。


■英語好きを育てる

都立小石川中等教育学校(梅原章司校長、生徒952人)は2008年度、文科省「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」の指定を受けた。17年度からは「コアSSH」となり、日本学術会議や大学、研究所だけではなく、海外の理数系教育重点校などと連携。生徒全員が参加する語学研修や海外修学旅行で、身に付けた英語をツールとして学校交流や意見発表をしている。

1年から5年まで、知を深めるための総合学習を展開しながら知的好奇心の育成を図っているといい、全国的な英語のディベート大会やスピーチコンテストでも、同校の生徒が相次いで入賞している。

都立小石川中等教育学校の中田淳予教諭

英語科の中田淳予教諭は、「カリキュラムの要所に『英語を好きになる仕掛け』を組み込み、英語4技能を活用して探究する力を育んでいる」と話す。

18年11月には、国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)主催「第10回IIBCエッセイコンテスト」で、119校181作品の中から、同校4年の星見友香さんが優秀賞、呉悠さんが日米協会会長賞に輝いた。同じ学校はもとより、同じクラスから複数の入賞者が同時に出るのは異例。帰国子女や英語圏への長期留学経験者もこぞって応募するコンテストだが、星見さんと呉さんに海外生活の経験はない。「英語が好き」と口をそろえる2人は、「学校の授業で英語好きになった」と明かす。

星見さんと呉さんの英語を入学時から担当しているのが中田教諭だ。生徒たちを「英語好き」にするために、二つのことを特に意識していると話す。

■ライティングで終える

一つ目は「サイクル」。一つのトピックについて「①リスニング②リーディング③スピーキング④ライティング」の順に授業を展開する。「どんなトピックでも、最後は自分の意見や考えを英語でまとめる『ライティング』で着地する。聞き流すだけ、話し流すだけにならないように意識しています」と中田教諭。英語4技能はあくまで手段であり、4技能を用いて探究する力を生徒たちに養うよう常に心掛ける。

全てのトピックの着地地点となるライティング力は、入学直後から週1本のペースでエッセーを書き、早期に基盤をつくる。最初は日記や感想文などから始まり、4年生となった段階では「死刑制度」や「テクノロジー」などのテーマについて、自らの意見を英単語300字ほどでまとめる。生徒たちが書いたエッセーは全てネーティブの教員が目を通し、添削して丁寧にフィードバックする。

「英語好き」になったきっかけを話す同校4年の星見友香さん(左)と呉悠さん

星見さんと呉さんは「日本語で書くのすら難しいと感じるテーマもある」とこぼすが、「1年生の頃から繰り返し書いているので、習慣化しています。英語で文章を書くことに全く抵抗感はありません」と話す。

■生徒の自信スイッチを押す

二つ目は「生徒の自信スイッチを押す」。そのために、年間を通し、英語に関する外部のコンテストや大会に積極的に参加するよう、生徒たちに促している。星見さんと呉さんが「IIBCエッセイコンテスト」に参加したのも、そうした中田教諭の働きかけがあったからだ。

「本校は全体的に学力レベルが高いが、中には能力があるのに自信を持てない生徒もいる。そんな子ほど外の世界に少し触れると、がらりと変わる」と中田教諭。校内ではなく外部の物差しで評価されることが、生徒たちの自信となり、新しいチャレンジへのきっかけとなっているという。

星見さんは「実はコンテストに挑戦するまで、英語はそんなに得意じゃないと思っていました」と振り返る。今回、エッセーコンテストの入賞が大きな自信につながり、今は副賞で獲得した海外プログラムでのボランティア活動を心待ちにしていると言う。自身の将来については「教育に関心があるので、関連した仕事に就きたい。海外プログラムのボランティア活動で現地の子供と交流できるので、貴重な経験にしたい」と語る。

チャレンジして「校内の世界に閉じこもっていてはだめだと感じた」と意識の変化を話すのは呉さん。「コンテストで他校の生徒と情報交換をしたのが、とても刺激になった。長期留学していた人や帰国子女の人など、同じ学校にいないタイプの人と触れ合い、視野が広がりました」と語る。現在は外部のディベート大会に自発的に出場して入賞するなど、チャレンジを続けている。

■ターニングポイントをつくる
生徒は「中田先生のおかげで前向きに英語学習に励める」と話す

中田教諭は「1人でも生徒が外に出て挑戦すると、他の生徒の良い刺激となって学年全体に波及していく」と、今回の成果を振り返る。今では生徒自ら挑戦したいコンテストを探し、応募を相談してくることもあるという。

「そうしたチャレンジや成功体験は、生徒たちにとって人生のターニングポイントとなるはず。大学受験の準備が本格化する4、5年生の2年間に、生徒たちがさまざまなところで能力を発揮し、自信に変えられる環境をつくっていたい。そのために常にアンテナを張り、背中を押すのが私の役割」と話す。

(板井海奈)