eスポーツ部を学校に あり?なし?(上)

対戦型のコンピューターゲームで技を競う「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」。今年3月末には初めて高校対抗の全国大会が開催され、部活動を発足させる学校も現れるなど広がりを見せている。

一方で、「家庭でもゲーム漬けになり、生活習慣が乱れるのではないか」「引きこもりの一因になるのではないか」と懸念する声も多い。本連載では、eスポーツをめぐる最新動向をリポートしながら、学校教育に取り入れていくことの成果と課題などを検証していく。


日本と諸外国のゲームを取り巻く環境の違い

ライムライト・ネットワークス・ジャパンは19年3月、「オンラインゲームの状況に関する調査」の結果を発表した。同調査は日、米、英、印など9カ国で、週1回以上ビデオゲームをしている18歳以上4500人を対象に実施された。

この調査を通じ、日本のゲーマーの特徴として▽プレー時間が週1時間未満のカジュアルゲーマーと、20時間を超えるヘビーゲーマーに二極化している▽スマートフォンでのプレー時間がゲーム専用機やパソコンの2倍以上で、各国と比べて突出している▽「他のゲーマーのプレーをオンラインで視聴する」と回答した人の割合が9カ国中で最も多い▽「寝るのを惜しんでゲームをしたことがある」という回答が全体では53.2%だったのに対し、日本では54.8%とやや高い▽「ゲームのために友人との約束を忘れた」とする回答は全体平均(26.0%)を大幅に下回る5.2%――などの実態が明らかになった。

また、eスポーツの賞金が年々上昇し、世界的な広がりを見せる中、「プロのゲーマーになれるとしたら、仕事を辞めてもいい」と回答した人の割合は全体平均で35.7%、最も高いインドで49.2%だったのに対し、日本では14.0%と極めて低く、プロゲーマーを目指す意識が低いことも明らかとなった。

eスポーツ先進国・米国の動向

18年秋、全米州立高校協会(NFHS)が、eスポーツを高校の公式スポーツ種目として認定した。また、NFHSネットワークは公式サイトにおいて、19年1月のシーズン、約20州の高校がeスポーツ州チャンピオン大会を開催し、約2万5千人が参加したと発表している。同シーズンには全米大会も開催され、インターネットでライブ配信されるなどアメフトやバスケットボール級の注目を集めたという。

NFHSは、eスポーツを推進する理由の一つに「低コスト」を挙げる。NFHSによれば、高校生向けeスポーツの公式プラットホームを提供するプレイ・バーサス社の1シーズン登録料は1人につき64ドルで、1カ月に換算すると16ドル。米国ではほとんどの高校にICT環境が整備されているため、各学校が負担するのはこの登録料のみで、他のスポーツと比べて安価な運営が可能としている。

加えて▽プレーヤーが協力してミッションの達成を目指すため、チームワークが養われる▽体格や性別にかかわらず、さまざまな高校生に活躍の場が与えられる――など、教育的効果が期待されるとしている。

町おこしに活用する自治体も

大がかりな施設を必要とせず、年齢や性別を問わないという利点を生かし、日本国内ではeスポーツを町おこしに活用する自治体も見られる。

大分県eスポーツ連合(西村滉兼会長)は、eスポーツと温泉とを掛け合わせた「eスポーツツーリズム」で観光誘致に取り組んでいる。具体的に、プロチームの発足や大会の開催、ゲーミングPC体験コーナーの設置などを展開。主催する大会では、有料入場の大人1人につき小・中学生3人まで無料で入場できるシステムを採用している。

同連合は16年に任意団体として発足し、18年12月に一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)の地方支部として公認された。西村会長は「小中学生など次世代の子供たちに、eスポーツや温泉の良さを味わってほしい」と呼び掛けている。

19年に予定されている大会

高校生を対象としたeスポーツの大会も、全国各地で次々に立ち上げられている。

今年3月に開催された「第1回全国高校eスポーツ選手権」決勝戦

19年3月23、24日には、高校対抗による初の全国大会「第1回全国高校eスポーツ選手権」の決勝戦が、千葉県の幕張メッセで開催された。また、そのフィナーレででは「第2回全国高校eスポーツ選手権」が8月以降に順次開催されることも発表された。主催者は「eスポーツ部発足支援プログラム」を実施しており、19年度は部活動を発足させた高校にゲーミングPC5台を2年間無償で貸し出しするとしている。

また、これとは別に「ステージゼロ」と銘打った高校対抗のeスポーツ大会も開催されることが決定している。5月にはそのオンライン予選が始まり、6~7月に全国7都市で地区予選大会を行った後、8月に千葉県浦安市で決勝大会が開催される予定だ。

さらには、10月に開催される茨城国体においても、「文化プログラム」の一つとして都道府県対抗のeスポーツ選手権が初めて実施される。4月には対象ゲームの一つ「ウイニングイレブン」の特別予選会が行われ、地元・茨城からは県立水戸桜ノ牧高校のチームが、「少年の部」の代表として本戦出場を決めた。なお、同校にはeスポーツ部はなく、出場する3人はサッカー部所属だ。

「ゲーム障害」を不安視する声も

eスポーツが世界的に広がる一方、ゲームのやりすぎを懸念する声も広がっている。世界保健機構(WHO)が19年5月に採択予定の国際疾病分類の最新版には、新たな依存症の一つに「ゲーム障害」が加えられ、22年1月から施行される予定だ。

最新版の分類によると、「ゲーム障害」には▽ゲームをしたいという衝動が抑えられない▽日常生活や他の関心事よりもゲームを優先させる▽健康を損なうなど悪影響が出てもゲームを続ける――の三つが、主な兆候としてあるという。

こうした症状が少なくとも12カ月間続き、学業や仕事、家族との関係性などに支障を来している場合に「ゲーム障害」と診断され得る。

WHOは「ゲームをしている人の約2~3%がゲーム障害と見られる」と指摘。国際疾病分類に盛り込むことで「各国で診断例が増えて研究が進み、治療法確立への寄与を期待する」としている。

全国でも珍しい、ネットゲーム依存の専門外来を備える神戸大学医学部附属病院によれば、受診者には不登校や引きこもり、暴力などを起こしている患者も多いという。中でも多いのは中学・高校生の患者で、卒業後も引きこもってしまう人も少なくないとのことだ。

(小松亜由子)


学校教育にeスポーツを組み入れるのはありか、なしか――。(中)では、全国に先駆けてeスポーツ部を設置した愛知県立城北つばさ高校への取材を通じ、部活動として見たeスポーツの現状をリポートする。