学校経営を効果的に~「学習する組織」の理論でやってみよう(2)「学習する組織」とは?

eye-catch_1024-768_yonezawa_fin横浜国立大学教授 米澤 利明

「学習のための機関は『学習する組織』としてデザインされ、運営することができる。言い換えれば、学校は、命令や指令、強引な順位付けではなく、学習の方向付けを導入することで、持続可能性のある、生き生きとした創造的な場に変えられる」。

ピーター・M・センゲ(以下センゲ)は、核となる考え方をこのように説明する。すなわち、学校を魅力的で創造的な場に変えるには、学校を「学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)」としてデザインすることが必要だというのである。

しかし学校を「学習する組織」としてデザインするとは、一体どういうことなのか? 本当に有効なのか? 具体的にはどうすればいいのか? 近年「学び続ける教員像」が提唱されているが、それと似た考えなのか? 本欄では、こうした疑問に応えながら論を進めたい。

そもそも「学び続ける教員像」の確立といっても、何を学び続けるのか、どう学び続けるのかなど、その概念や具体的方途が明確になっていることが大事である。では、センゲとはいかなる人物で、「学習する組織」とは、どのような概念なのかみていきたい。

スコラ・コンサルトのプロセスデザイナー三好博幸氏の解説(センゲ『フィールドブック学習する組織「5つの能力」』、2003年)によると、「学習し進化する組織」という基本的な考え方は、すでに1970年代から提唱されていたという。その後、概念や方法論が整理・体系化され、進化を遂げて、1990年にマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン校経営学部上級講師のセンゲによってまとめられ、『The FIFTH DISCIPINE』(邦訳センゲ『学習する組織』、2011)が発表されたのである。

この「学習する組織」は、組織と個人が目的を効果的に達成するために、集団としての意識と能力を高め続けることで、メンバーのやる気と潜在的な力を引き出し、職場をより働きやすく生産的にし、必要とされ続ける組織になることを目的とする。

「学習する組織」は、チームの中核的な学習能力を形成する3つの能力((1)複雑性を理解する力(2)共創的に対話する力(3)志を育成する力)と、その能力を構成する5つの「ディシプリン」((1)システム思考(2)メンタル・モデル(3)チーム学習(4)自己マスタリー(5)共有ビジョン)という概念によって体系化されている。センゲは、3つの学習能力を3本足の椅子に例えて、どれか1本だけ長くても、また短くても、安定しないと説明している。

「学習する組織」の重要なポイントは、3つの能力をバランスよく統合的に伸ばすことなのだとよく分かる。

3つの学習能力と5つのディシプリンについては、今後本欄で順次詳しく説明していく。