(新しい潮流にチャレンジ)副校長・教頭に集中する過度すぎる業務

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

働き方改革における偏りの是正が必要

〇全国公立教頭会の働き方改革への提案

学校の働き方改革が多様に論じられている。中教審の「中間まとめ」は教師の負担軽減のためにさまざまな提案を行っているだけでなく、スポーツ庁が中・高校の部活動の改善方策を提案しており、今後そうした動きは確実に学校に浸透していくであろう。

しかし、学校の働き方改革は部活動のみではない。学校の在り方そのものに関わる重要な課題が山積していて、中教審の特別部会は極めて難しい課題解決を迫られている。

今回、その顕著な課題の一つとして浮かび上がったのが、全国公立学校教頭会(全公教)の動きである。会員調査によって、副校長・教頭(以下、教頭とする)の8割が厚労省の過労死ラインの水準にある、とする報告を特別部会に提出した。8割以上が1カ月240時間以上も勤務しているとされている(本紙5月24日付)。

全公教の文書によると、実際に時間を費やす業務は、(1)依頼文書の処理や各種調査依頼への対応(2)保護者・PTA・地域・関係諸団体との連携(3)児童・生徒指導上の課題への対応――をあげている。また、疲労やストレスとなるのは、(1)と苦情対応だという。

この調査資料で驚いたのは睡眠時間のデータで、小中共に4時間以上5時間未満が22%、5時間以上6時間未満が48%、6時間以上7時間が23%とされていることである。極めて過酷な状況で、体を壊さないか心配である。仕事の能率はむしろ確実に低下する。校長の支援はないのか。年次有給休暇もあまり取れず、休日にPTAや地域行事に参加することも多いという。

こうした実態から、教頭の複数配置、主幹教諭の充実、事務職員の充実、サポートスタッフの充実を要望している。

〇学校の組織機能の抜本的な改革が必要

教頭の多忙化は、これまでも言われ続けてきた。例えば、月刊誌「教職研修」(教育開発研究所)が「『教頭』を救え!」という特集を組んだのは2014年9月号である。さらに月刊誌「総合教育技術」(小学館)が「教師の多忙感」を特集し、その中に「忙しすぎる教頭・副校長」を取り上げたのは、それより早い11年10月号である。

ただ、当時は「多忙感」とあるように、働き方改革に見られるような具体的な軽減策よりも、仕事のやり方を自己努力で変える方策を述べるものが多かった。

教頭職は限りなく多忙である。しかも一貫した職務遂行とは違って、時に予期しない仕事が降りかかることがある。仕事が断続的でまとまりがなく、その処理に追われたり、時間を多量に消費したりすることが起きる。

さらに、最近は若い教員が増えて産休代替教員が必要とされる例が多くなっているが、学校によっては代替教員が見つからず、教頭が学級担任を兼ねていることが増加しているという。あるベテラン教諭は「教頭さんがお気の毒です」と語っていた。何でも引き受けさせられるのが教頭である。あえて言えば「よろず屋」的である。

〇新しい人事配置がもたらす学校の課題

ところで、周知のように文科省の「チーム学校」の提言があって、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)などの学校導入が決まり、教師の職務軽減策が具体的に動き出している。

だが、そうした人材が学校に配置されて、実効性のある新たな教育が期待されたのだが、実態はどうであろうか。

3月16日の日本経済新聞に埼玉県立所沢高校の曽根一男校長が「学校の働き方改革に欠けた視点」という一文を寄せている。定時制のある高校で「子供の貧困対策のプラットホーム」に位置付けられ、多様なスタッフが配置されているという。曽根校長は次のように書いている。

「ただしSSWやSC、学習サポーター、多文化共生推進員、就職支援アドバイザー、地域サポートステーションといったスタッフはみな非常勤。出勤日は週3日から月2日程度までバラバラだ。職員会議や日々の始業時の打ち合わせに参加しないので教職員が段取りしないと業務できない。生徒に関する情報提供や支援策の検討、行事予定の変更連絡、活動報告書の作成連絡、活動報告書の作成支援などは教師が担う。事務職員はスタッフの採用手続きや給与・社会保険関係の事務、複数校を掛け持つ人の通勤費割り振りや所得税の特別徴収などについて他校と調整する義務が発生する」「多様な非常勤スタッフを増やすと特に教頭や教務主任が一段と忙しくなる」

今後、学校は働き方改革によって非常勤スタッフが増加する。組織内に多様な人材が多様な形で勤務する混合型組織形態に変わっていく。そうした場合、組織内の職務システム化が複雑になることは確かで、そのシステム機能を維持・推進するのは教頭の役割になるであろう。

つまり、埼玉県の高校の例のように教員の職務軽減や教育改善の方策によって人的配慮が進む結果として、かえって教頭の職務が増加するという課題がある。職務軽減策や教育改善がよりよく機能する方策を生み出す必要がある。

したがって、人を増やすことは必要だが、組織機能としてのシステムをどう作り上げるかという課題が生まれる。つまり、「混合型組織形態の活用促進」をどのようにするべきかという新たな課題である。例えば、全公教が多忙化の事項にあげている「外部との連携促進」が今まで以上に必要になることも確かである。

そのことは既に予測されていたことで、本欄でも多様な人材のシステム化やスケジュール管理の難しさについて言及してきた(2月22日付)。

曽根校長は「文科省の調査で最も勤務時間が長いのが教頭だ。教諭はそれを見ているので埼玉県では管理職試験を受ける教諭が激減し、将来の管理職の人材確保に黄信号がともっている」という。周知のように、このような実体は東京都をはじめ全国的な傾向になりつつある。

教頭の職務の魅力が失われるとき、学校管理職志望が激減し、学校体制が大きく損なわれる可能性が大きい。

教頭職の魅力回復のためにも抜本的な手だてを早急に考えるべきである。教頭は次期校長としての役割が期待されている。働き方改革部会がどのような解決策を示すか注目したい。