社会課題を解決する社会イノベーションのアイデアと、その創出プロセスを高校生が競う第1回全国高校生社会イノベーション選手権(以下、イノチャン)が、8月18、19日の両日、東京大学で行われた。初回のテーマとなったのは「防災」。イノベーション教育と防災教育を掛け合わすことで見えてきた、児童生徒が主体的に「防災」に取り組むためのヒントとは――。
■防災に対する当事者意識の低さが問題
イノチャンは「社会イノベーションを学び、実践する場を高校生にも提供したい」との思いから、東京大学工学部社会基盤学科および専攻に所属する学生たちが主体となって立ち上げた。第1回大会の本戦には、全国から一次審査を通過した7校9チームが参加した。 第1回のテーマを「防災」とした理由について、大会運営委員会の同大学4年、西條圭祐さんは「社会の中に潜む課題として、防災は意識が高い。その一方で新しいアイデアが創出されづらい分野でもある。だからイノベーションと掛け合わせると面白いのではと考えた」と語る。 また、高校生にとって「防災」は主体的に取り組むのが難しいテーマでもある。……

 対2018年度比11.8%増の5兆9351億1300万円を計上した、文科省来年度予算の概算要求。文教予算では、学校における働き方改革での教員加配、スクール・サポート・スタッフ、部活動指導員の配置、大規模災害やこの夏の猛暑を踏まえた学校施設整備費の大幅増が目立つ。その中であえて注目したいのが「Society5.0」関連予算だ。同省は「Society5.0に向けた人材育成」として、複数の新規事業を含め、37億8700万円(前年度比20億1700万円増)を要求した。その内容は、これからの社会変革に対応するため、未来の教育をデザインするための先行投資と捉えることもできる。

■これからの教育を見据えた新規事業
新規に「学校における未来型教育テクノロジーの効果的な活用に向けた開発・実証事業」として7億円を計上した。個別最適化された学びの実現に向け、学校現場と企業などとの協働により、学校教育で活用できるEdTechの開発・実証を行う。教員養成でも、「次世代の学校教育を担う教員養成機能強化事業」として5億円を新規計上した。Society5.0を見据えた新たな教育課題に対応するため、教科指導法などにアクティブ・ラーニングの指導法を取り入れるほか、具体的なエビデンスに基づいた教育の質の保証システム構築を推進する。 高校改革にも焦点を当てる。WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業として1億6700万円、地域との協働による高校教育改革推進事業として4億円を、いずれも新規事業で立ち上げる。 前者では、これまでのSGHなどの実績を活用、高校と国内外の大学、企業、国際機関が共同し、高校生により高度な学びを提供する仕組みを構築する。……

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku_r20180426藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

◇数値目標ばかりを振り回すのは控えるべき◆
本紙電子版8月3日付で報じられているように、大阪市の吉村洋文市長は、来年度以降の全国学力調査の結果を教員の業績評価や校長の経営戦略予算に反映させる考えを明らかにした。
 この考えに対して、各方面から強い批判が寄せられている。象徴的なのは、インターネットの署名サイト「change.org」における教育コーディネーターの武田緑氏らのキャンペーンだ。本紙電子版8月9日付が伝えているように、1万4千人以上(8月23日現在1万5千人以上)が市長の方針に反対し署名している。  まず、市長の考え方を確認しておこう。ともすると、学力調査の成績が高ければ教員や学校が高く評価され、成績が低ければ教員や学校が低く評価されるという印象が生じるが、さすがにそうではない。  各学校が学力調査の成績を○ポイント向上させるといった数値目標を設定し、達成できれば教員の勤勉手当や校長裁量の経営戦略予算を増額。……

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

クロスカリキュラムで充実を目指す

〇教科等横断の3つのタイプ
 今回出版された文科省の『小学校学習指導要領(29年度告示)解説』(東洋館出版社)の『総則編』で私が最も注目したい内容がある。それは教育課程編成における教科等横断の視点である。何に注目したかと言えば、教科等横断のカリキュラムが可能なように極めて具体的に「内容」が『資料』の形で示されていることであった。中学校も含まれている。「現代的な諸課題に関する教科等横断的な教育内容」である。例えば、「伝統や文化に関する教育」「主権者に関する教育」「消費者に関する教育」などである。それらが各教科・領域等でどのような指導内容があるかを学習指導要領から抜き出してまとめているのである。  ところで、教育課程編成において「教科等横断」の考え方が強調されてきたが、新指導要領の「総則」等で主に言われていたのは「言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力」であった。詳しい説明はない。それが今回の資料では「教科横断的な学習内容」としての新たな学習内容提示がある。どう考えるべきだろうか。  私は、教科等横断のカリキュラムを編成する場合、三つのタイプがあると考えている。……

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

学級担任のロマンが導く学級づくり

〇学級経営軽視の風潮はないか
 学級経営は、学級担任に課せられたミッションを達成するためのマネジメントである。また、学級は学校組織を構成する基礎単位であって、学級が充実することで学校全体がよりよく機能する形になっている。例えば、ある学年や学級が崩れると、学校経営に深刻な影響をもたらすことはよく知られている。学級経営をよりよく展開することが学校教育をより充実したものにするのである。しかし、最近の傾向をみると、学級経営軽視の風潮がかなりみられる。  例えば、人事考課が実施されて教員個々の「自己申告書」が提出されるが、それが理由で学級経営案を作成するのをやめた学校がかなりみられた。教師の負担過重という理由である。もともと自己申告書と学級経営案とでは、その性格も必要度も異なっている。自己申告書はマル秘扱いであるが、学級経営案は公開すべきもので、担任の学級経営のビジョン等をさまざまに自由に記述でき、学年内などで相互の啓発的な話し合いに活用できるものである。  学級担任もまた「おらが学級」の意識を明確に持つために、どのような学級づくりを進めるか、そのビジョンを持ち、マネジメントを考える。……

 黒板の日付は7月6日のままだった――。同日深夜から早朝にかけて、西日本豪雨が岡山県倉敷市真備地区を襲った。近くを流れる小田川などの堤防が決壊し、地区の中心部が浸水。現在もインフラの復旧作業や避難生活が続いている。同市では9月3日からの授業再開に向け、被災した小・中学校について、一時的な間借り教室の確保やプレハブ校舎の建設を進めている。夏休み中、避難所となっている学校では、子供たちのための学習教室も開設された。豪雨被害から1カ月が過ぎた頃、学校再開に向けて動き出した現場を訪ねた。
■逆さまに転がるグランドピアノ
 8月10日、JR倉敷駅から車で30分ほどかけて真備地区へ向かった。山あいののどかな田園地帯が広がっていたはずが、小田川を橋で越えた瞬間、風景が一変した。道端に積み上げられた壊れた家具、窓という窓を開けた家々、車から降りると、土埃(ぼこり)とまだかすかに水の臭いがする。炎天下の中で連日、急ピッチでの復旧作業が進められ、夏休みに入り多くのボランティアも加わっていたが、元の生活を取り戻すまでにはまだ時間がかかりそうだ。  真備地区の中心部にあり、堤防決壊地点にも近かった倉敷市立箭田小学校(大﨑卓己校長、児童数287人)は、一晩で校舎の2階床上80センチ付近まで水に浸かった。同地区で最も被害の大きかった学校の一つだ。同校の大﨑校長に被災した校舎を案内してもらった。  鍵のかかった教室を開けてもらうと、部屋中にこもる湿気が身を包んだ。……

 自死によって亡くなる子供の数が最も多い時期は、8月下旬から9月上旬にかけて(2007~17年、警察庁調べ)。警察庁は自死の理由を、男子は「学業不振」「家族によるしつけ・叱責」、女子は「学校の友達との不和」「親子関係の不和」と分析する。児童生徒の自死はいじめ問題が取り上げられがちだが、実際の原因はさまざまだ。悲劇の防止に向けて考える本連載第2回は、50年以上に渡り相談窓口業務を請け負うダイヤル・サービス株式会社に、打ち明け先のない子供の悩みの実態を聞いた。
■電話で命を救う
子供からのSOSに備え24時間態勢で待機するのは、臨床心理士やスクールカウンセラーなどの専門資格と現場経験を併せ持つ相談員。寄せられる相談の多くは「親にこんなことを言われた」「友達とけんかしてしまったけど、どうやって仲直りすれば良いか」など、日常的な内容だ。中には、友達の多い人気者が本当の自分を出せずに悩んでいるという相談も。親や教員に打ち明けられなかった悩みを抱える児童生徒にとって、電話相談窓口は赤の他人だからこそ話せる場となる。 夜間のコールは精神状態が不安定な場合が多く、緊急度が高い。さらに、家の外からかけてきている電話は急を要するケースと判断する。過去には子供との通話途中から警察と連携し、通話中に警察が子供を保護したこともあった。家を出た子供の多くは「行き場がない」「頼れる人がいない」という、ぎりぎりの状況に置かれている。電話の向こうの顔が見えない相手に命が救われた子供も多いという。
■非対面の価値
子供は大人に相談するという経験が少なく、対面だと気を使って話せなくなったり、否定されることを恐れて本当のことを話さなかったりする。……

深掘り・小宮山教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子 (リクルート次世代教育研究院院長)

今月8日、米教育事業大手ピアソンが興味深い調査結果を公表した。「ミレニアルズの先:次世代の学習者たち」(原題は“Beyond Millennials: The Next Generation of Learners”)という題のレポートで、ミレニアルズ世代と呼ばれる24歳から40歳の世代と、Z世代と呼ばれる14歳から23歳の世代の学びに、どのような違いがあるか、両世代に該当する14歳から40歳の2587人を対象にオンラインアンケートを行ったものだ。今回はその調査レポートについて翻訳しながらひもといていく。
■動画を用いた学びが好まれる
同調査によれば、両世代の違いで顕著な点は、Z世代はYouTubeの動画を通じた学びをミレニアルズ世代よりも好むということだ(Z世代59%、ミレニアルズ世代55%)。事実、学びの方法としてYouTubeは教員から教授される方法の次に位置付けられ、授業や教室の生徒同士のグループワーク(Z世代57%、ミレニアルズ世代47%)、本を読むこと(Z世代47%、ミレニアルズ世代60%)よりも好まれている。 また、Z世代はミレニアルズ世代に比べると、大学でテクノロジーを活用して学ぶのは普通で、生活の一部になっており、学校内外でより手っ取り早く学べることも望んでいる。……

2017年、357人の小・中・高校生が自殺で亡くなった――。小学生11人、中学生108人、高校生238人。自殺者数は日本全体では減っていても、小・中・高校生では微増している。15~19歳の死因は自殺が1位だという(厚労省調べ)。 子供の自殺について分析する福永龍繁・東京都監察医務院院長は「10代の自殺は動機が分からないことが多い」と対策の難しさを話す。本特集では、生徒の自死を経験した教員のその後や、専門機関が調査した子供の悩みの実態などをもとに、悲劇の防止に向けて考える。第1回は、教員になって3年目、29歳で女子生徒Aさん(当時17歳)の自死を経験し、20年たった今も後悔と自責の念に苦しみ続けるB元教諭に話を聞いた。
■初任校での悲劇
B元教諭は5度目の採用試験で合格。教科は英語だが、教員を志した理由は「バスケットボール部の顧問がしたくて」。教員3年目には担任していた2年生のクラスで唯一のバスケ部員が、後に自殺という悲しい決断をするAさんだった。「いつも周りを思いやる優しい子で、部活にも休まず参加してとても熱心だった」という。 3年生が引退し、5人しかいない2年生が主軸になると、試合中のAさんのミスが目立ち出した。「負けが続くと生徒の心がすさみ、楽しむ気持ちを失う。一つでも多く勝たせて、成功体験を積ませたい」と思ったB元教諭は、Aさんを厳しく指導し始めた。 教員3年目で念願のバスケ部正顧問になったB元教諭は、毎日懸命に指導に取り組み、「チームのため、生徒のため」と心を鬼にしてAさんを叱った。……

eye-catch_1024-768_chichibu国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

授業研究の助言者として招聘(しょうへい)された場で、「教えてください」と言われる機会は多い。「新しい学習指導要領について教えてください」という質問は理解できるが、「発問の仕方、板書の仕方が分からないので教えてほしい」などと言われると、「そこまで聞きますか」と突っ込みたくなる。「いろいろな考え方があると思いますが、私はこう思います」と答えながら心の底で「正解なんてない。なぜ、こんなことを聞くのか」とじくじたる思いでいる。これについて、私が以前から尊敬している秋田県の元指導主事の先生に助言を求めた。その方は「授業を作るのは教師自身だ。なぜ自分で考えようとしない、と憤っているのは、あなただ。その場面で困っているのはその教師でなく、あなただ。あなたは何に困っているのだろうね」と答えた。  授業の作り方に関して外部に正答を求める教師は、外の世界にモデル的な授業があり、それを教えてもらうことが指導力向上につながると考えているのではないか。このような考え方をアンディ・ハーグリーブスの枠組みでは、ヒューマンキャピタル(個人で所有できる知識や技能)の育成ばかりを意識し、ディシジョナルキャピタル(状況に応じた意思決定の積み重ねであり、個人としての内省に加え同僚との対話、協議の中で育まれる)を軽視している、と捉えられる。  そのような教師の多い学校は、教師同士の関係が希薄でソーシャルキャピタルが構築されていない場合が少なくない。……

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