平成28年度全国学力・学習状況調査 授業改善の視点を問う

 

平成28年度全国学力・学習状況調査の結果が9月28日、公表された。全体としては全国平均と下位県との差が縮まっている傾向が、昨年度同様にみられた。また小中ともに、秋田、福井の上位常連県のほかに、石川県が小学校国語B問題を除いて、初めてトップに立った。このほか、小学校で沖縄県が昨年度に続き躍進し、今年度は全国平均を上回った。有識者から、同調査の結果を受けて最も重要となる授業改善に向けた視点などを聞いた。

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9月29日に公表された「平成28年度全国学力・学習状況調査」の国語の結果を受けて、現場は今後の授業にどう生かすべきか、埼玉学園大学子ども発達学科の梅澤実学科長に聞いた。

平成28年度「全国学力・学習状況調査」結果をどう生かすか
埼玉学園大学子ども発達学科長 梅澤 実

平成28年度全国学力・学習状況調査の結果の詳細な分析と、それに基づいた授業改善ポイントが示された。当然ながら「国語A・B」の問題で、小・中学校の国語科で培われる学力のすべてを評価できるわけではないが、調査結果を今後の授業にどのように生かすかという視点から一考してみよう。

小学校では、B問題1の2問の正答率は50%程度だった。「話し手の意図を捉えながら聞き、話の展開に沿って質問することに課題がある」と指摘されている。

通常の話す・聞くという活動は、その活動の行われる状況が大きく関わる。状況には、何のために自分は話し、聞くのかという目的意識、学級の人間関係、話す人や聞く人達の表情といったさまざまな情報が埋め込まれている。その活動に参加する者は、状況に埋め込まれたさまざまな情報を活用する。

しかし、話し合いを文字情報として読み取らねばならないときには、文字情報からその状況を思い描くことが必要になる。状況を思い描くためには、話す・聞く活動体験がそれを助けるであろうし、物語の読みにおいて登場人物の心情を考えたり、情景を読み取ったりといった学習や、説明文における図や表・グラフなどの効果を読み手として考えたりする学習が基盤になる。

B問題の「活用」とは、日々の授業を通して、読みの学習と話す・聞く学習活動の体験を往還することができる力として培われたものになっているかを問われているといえよう。

また学習状況調査には「学校図書館・学校図書室や地域の図書館にどれくらい行きますか」という問いがある。児童生徒がこのような行動をとるには、国語の授業だけでなく、「さらに調べたい」という授業内容に対する興味・関心、新たな疑問や問題意識、さらに、知識そのものに対する好奇心が醸成されなくてはならないだろう。

学習状況調査の結果は、授業だけでなく、教育課程全体を振り返る上での資料となろう。

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9月29日に公表された「平成28年度全国学力・学習状況調査」の算数・数学の結果を受けて、現場は今後の授業にどう生かすべきか、筑波大学の清水美憲教授に聞いた。

基本的概念の理解と数量関係の把握にみえる課題
筑波大学教授 清水美憲

平成19年度にスタートした全国学力・学習状況調査が10年目を迎え、このたび平成28年度の結果が公表された。今回は、解答時間が足りないと感じた児童生徒の割合が多かったようではあるが、過去にも指摘されてきた「活用力」に関する課題が改めて浮き彫りになった。

しかし、その一方で、基礎的な数学的概念の習得や、比較的単純な場面での数量の関係把握などの部分での課題が明らかになったことが注目される。実際、算数と数学のいずれにおいても、四則計算や方程式の解法等、基本的な技能に関する問題は、相当数の児童生徒が正解していた。しかし、基礎的概念の意味理解や、問題場面における数量把握などでの困難をもつ実態が明らかになった。

小学校算数Aでは、ある数を1より小さい数で割った商の大きさを問う問題(1 (1)、正答率65.0%)で、商が小さくなるという誤答が3割近くにも上り、数量の関係を割合で把握する問題(9 (2)、 正答率51.2%)の正答率も低かった。このような数量の関係を捉える力の不足は、中学校における式の利用や関数の学習における課題にも影響しているとみられる。

また中学校数学Aには、示された数の中から自然数を全て選ぶ問題(1 (2)、正答率41.4%)があったが、自然数の中にゼロを含めて解答した誤答が4割近くにも上った。比例の式でx の値の増加に伴うy の増加量を求めることかができるかをみる関数領域の問題(9 (2)、 正答率40.3%)でも、問題の正答率の低さが目を引く。

学校現場では、一定程度の練習を積み重ねれば成果が出やすい計算力のように、「目に見える」学力の向上に集中する傾向がある。しかし、各教科で「育成すべき資質・能力」が問われるなか、数学的な概念や技能を身につけた上で、数学的な見方や考え方などを働かせながら数学的に考える資質や能力を身につける授業を目指し、日常事象や数学の事象についての数学的活動を一層充実する必要がある。

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