(円卓)子供発の社会変革への期待

奈良教育大学准教授 中澤 静男

学習指導要領が改訂され、日本の全ての学校園で、「持続可能な社会の創り手」の育成に取り組むこととなった。

この持続可能な社会の創り手を育成する教育は「持続可能な開発のための教育(以下、ESD)」と呼ばれ、特に2005年~14年は国連ESDの10年として世界中で取り組まれてきた。日本ではユネスコスクールがけん引してきた。

また、昨今、社会全体において「持続可能な開発目標(SDGs)」の認知度が向上してきたこともあり、学校から地域社会に働き掛けることによる持続可能な地域社会づくりが起動することを期待したい。それは「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」というこれからの教育課程の理念にも合致するものである。

ESDは持続可能な社会づくりに関する人々の価値観と行動の変革を促す教育であるが、具体的な行動の変革について消費行動を例に考えてみよう。一般に、子供は以前に食べておいしかったといった経験や友達などから得た情報をもとに購入する品を選ぶ傾向があるが、大人はそれだけでなく、値段という経済的観点やブランドイメージなども加味して購入するものを決めている。いずれも消費者側の視点で購入する品を決めていると言えるだろう。しかし、ESDに取り組むことで次の3つの行動の変革が期待できる。

1つ目に生産者側の視点に立った消費行動への変革である。購入は生産者への支援でもあることを学び、地産地消の大切さを理解することで、購入する品を変えると思われる。

2つ目に地球環境の保全の視点に立った消費行動の変革である。生産方法や品物の移送距離、移送手段、消費後の廃棄方法に考えが及ぶことで、地球環境にとって良い品を選ぶようにもなるだろう。

3つ目に公正の視点に立った消費行動の変革である。輸入相手国の労働環境や自然環境に目を向け、自分の消費行動が労働者やそこに住む動植物に与える影響を考えることで、世代内・世代間の公正に資する品を選ぶようにもなると思われる。

残念ながら大人にはESDを学ぶ機会があまりないため、大人に任せていたのではこのような消費行動の変革が広がるとは思えない。ESDを学んだ子供発の、大人を巻き込んだ社会変革に期待したい。