(ESD初心者へ)学校まるごと(ホールスクール)ESD時代へ

「国連ESDの10年」が終了し、ESDは新たなステージに突入した。その推進拠点であるユネスコスクールは、子どもたちの学びの質を向上させるため、日々実践を重ねている。今後は、ユネスコスクールが模範を示し、それ以外の全ての学校でもESDを実践する必要性が増している。そこで、ESDの先駆者に、これから本格的にESDに取り組む教員や学校へ、エールとヒントをもらった。


学校まるごと(ホールスクール)ESD時代へ
聖心女子大学文学部教授 永田佳之

昨年11月に名古屋で開催されたESDに関するユネスコ世界会議では「国連ESDの10年」で達成した成果が共有されました。そこで採択された「あいち・なごや宣言」は、これからの教育が進むべき道標としてさまざまな国際会議等で引き合いに出されています。「10年」を継承する事業としても「グローバル・アクション・プログラム(GAP)」がスタートし、360以上のESD事業が世界各地で展開されています。同宣言の言葉を引けば、ESDは「スケールアップ」の段階に入ったのです。

一方、この10年を振り返ってみると、ESDの課題も見いだされます。今、国際的に共有されている課題は「ESDの断片化」です。ESDは教育の方向性を示すビジョンであり、教育の在り方そのものを変えていく原動力なのに、具体的な実践となると、「総合学習での実践」や「グリーンカーテンの設置」をもってよしとし、ESDを矮小化してしまう傾向が見られます。これらはもちろんESDの特徴ですが、部分的な要素にしかすぎません。

そこでGAPの優先課題としてその重要性が改めて強調されたのがホールスクール・アプローチ、正確には学校以外の組織も含め、組織全体でESDに取り組むというホール・インスティテューション・アプローチです。ところが、この手法について私が学校で説明すると、「全体計画」や「年間計画」をすでに作成しています、という校長先生は少なくありません。

本来、ESDは持続可能な未来への変容をもたらす刷新であるはずなのに、これでは何の変容も生まれません。こうしたカベ(学校教育として当然視されている常識)を乗り越えるために、海外では多くの知見が共有されつつあります。そこで共通しているのは、計画性というよりもデザイン性の重視です。筆者の研究室では、欧州や豪州の学校デザインを参考に、旧来の学校計画とは異なるホールスクールを構想できるように「学校まるごとESD指標」を開発しています。

紙幅の関係でその詳細を描くことはできませんが、ユネスコスクールがESDならではの実践をしているかどうかを自己チェックするための指標を例示すると、次のようになります。

○気候変動など、地球規模の問題を学校全体で取り組んでいるか
○海外の学校と交流にとどまらず、一緒に問題解決に取り組んでいるか
○「生物多様性の日」など、国連デーを毎月取り上げ、その問題を生徒と考えているか
○教師は説明しすぎたり、まとめすぎたりせず、生徒の意思決定プロセスを大切にしているか
○遠足や修学旅行にエコロジーや社会的公正の視点を入れているか
○給食のフードマイレージを測定したり、食にまつわる持続可能性を考えたりする機会をもっているか
○校内や地域、家庭でのエネルギーについて考える機会を設けているか
○環境問題を自分ごととして捉えることを重視している(自身のライフスタイルと環境問題を結びつけている)か
○管理職は、職員に対しても、生徒に対しても、優劣の評価の目差しを持ち込まないようにしているか
○安心して冒険できる(失敗できる)職場環境または教室環境をつくっているか

以上は、一例ですが、こうした視点の一つひとつが持続可能な社会をつくる基盤となると考えられます。そして何よりも大切なのは、ESDは新たなチャレンジですから、生徒と共に教師自身もワクワクするような活動でなくてはなりません。右記のような個々の取り組みを、できるところから具現化していき、その延長線上に「学校まるごとESD」が独自に構想されていくことが、世界のESDの最前線の課題を共有することになると言えましょう。

関連記事