(ESD初心者へ)笑顔のつながりが大切

「国連ESDの10年」が終了し、ESDは新たなステージに突入した。その推進拠点であるユネスコスクールは、子どもたちの学びの質を向上させるため、日々実践を重ねている。今後は、ユネスコスクールが模範を示し、それ以外の全ての学校でもESDを実践する必要性が増している。そこで、ESDの先駆者に、これから本格的にESDに取り組む教員や学校へ、エールとヒントをもらった。


もみじアプローチ
もみじアプローチ

笑顔のつながりが大切
横浜市立永田台小学校長 住田昌治

「通りかかった人に声をかけて説明する際の、相手の心をとらえて離さない永田台小の児童の視線にメロメロになっていました。ああいう子どもを育てるには…と、目指す児童像が見えてきました」。

昨年12月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されたエコプロダクツ展で本校の6年生の話を聞いてくださった方の感想です。3~6年生と特別支援学級の子どもたちは、来場者に声をかけて自分が取り組んできたことや考えていることを話します。これは、大きな企業ブースが立ち並ぶ中、学校で行うような発表形式では全く聞いてもらえない現実に直面した子どもたちが、ブースから飛び出して始めた「永田台キャッチ方式」です。5年前に始まり、今では校内でも普通に行われるようになりました。

前述の6年生は、「平和」という一つの大きなテーマをコアに、1年間取り組んでいます。出合った一つひとつの事実を教員と子どもたちが確かめ合い、一人ひとりの思いに寄り添い、納得しながら実践してきました。しかし、子どもたちにはそれぞれの思いがあって意見がぶつかることもあります。「もやもやがあってもいい」「答えのない問いもある」「全ての問題に白黒つけられるわけではない」というようなことを子どもと共有することで乗り越えてきました。

ESD! ESD! と力を入れて取り組むのではなく、まず、子どもとじっくり向き合い、本音で他者と関わる時間を確保し、そして、つなげていくことが大切です。ESDは、再方向付けです。今ある「よさ」を見いだし、それを満たしていくことこそがESDのスタートなのです。そして、ESDの基盤は、ケアリングです。学校全体に安心感や充実感を感じられるような雰囲気をつくることです。

そのためには、まず大人がケアを心がけ、笑顔でつながることが欠かせません。笑いの絶えない職員室は、教員同士がよく語り合います。年度初めには、各学年の年間計画を全教員でワイワイ言いながら作っていくことで、学年内外のつながりや子どもの成長、課題も共有することができます。教科横断や総合的・関連的・系統的な学びも見えてきます。

各学年で明確なゴールを決め、テーマや付けたい力を元に指導計画を作ってがつがつと進めるのではなく、一度立ち止まって考え、語り合い、支え合う心のゆとりが大事です。教員が安心して本音で語り合える職場では、子どもも本音で語り合うようになります。

また、分かりにくいといわれるESDだからこそ、職員が納得して進めることが大切です。「カベを低く」「橋を架ける」「染み込ませる」「つなぐ」など単純化して考えることでイメージの共有をすることができます。

実践面では、「サスティナブルマップ」や「もみじアプローチ」はお勧めです。「サスティナブルマップ」は、それぞれが捉えている学校の「よさ」を出し合い、それを一枚の絵に表すことで、学校の持続可能性を視覚化し、共有します。ESDを進めていく上での教員と子どものよりどころにもなり、学校評価の指標にもなります。

また急激な変化は反発やあつれきを生みます。もみじが色づくようにゆっくりゆっくり、でもしっかり染まっていく「もみじアプローチ」が有効です。「もみじアプローチ」では持続可能性への気付きから段階的に対象を広げていきます。染まっていくスピードはみんな一緒ではないですし、染まり始めるところもさまざまですが、大人も子どもも悩んで、行きつ戻りつ、ESDはそういう日々の営みなのです。

学校全体で当たり前になっていた考え方の枠組みを見直し、「デ・ザイン(脱記号)」(これまでの枠組みから自由になる)するところから始めてみましょう。

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