(ESD初心者へ)主体的な関わりを創り出す

「国連ESDの10年」が終了し、ESDは新たなステージに突入した。その推進拠点であるユネスコスクールは、子どもたちの学びの質を向上させるため、日々実践を重ねている。今後は、ユネスコスクールが模範を示し、それ以外の全ての学校でもESDを実践する必要性が増している。そこで、ESDの先駆者に、これから本格的にESDに取り組む教員や学校へ、エールとヒントをもらった。


「クロスアート」の作品づくり。広島とハワイの姉妹校の生徒が同テーマで絵を描く。修学旅行で実際に会って絵を説明し合うことで、文化の違いを体験
「クロスアート」の作品づくり。広島とハワイの姉妹校の生徒が同テーマで絵を描く。修学旅行で実際に会って絵を説明し合うことで、文化の違いを体験

主体的な関わりを創り出す
広島県ユネスコスクール連絡協議会会長 高市和子

広島県のユネスコスクール加盟校は平成27年12月現在で49校(小学校19校、中学校10校、高校19校、特別支援学校1校)となり、ESDに積極的に取り組む学校が増えています。その背景には、22年度に設立されたユネスコスクール連絡協議会と広島県教育委員会(義務教育指導課ESD担当)の連携によって学校におけるESDを推進する活動が継続して行われていることがあります。

ユネスコスクール連絡協議会の役員会には県教委のESD担当も参加して、県内の優れた実践事例に関する情報交換や一年に一度開催するESD研修会の企画内容について協議します。ESD研修会は、各学校のESDの取り組みの充実を図るとともに、その効果を県内全域に普及することを目的にしており、例年、ユネスコスクール加盟校をはじめ広く全県の学校に参加が呼びかけられます。文科省や全国のESD牽引者の方々から講師をお招きして講演をいただくとともに、実践事例の発表・分科会などを行い、研修会参加校が各校での実践のヒントを得ることでESDの輪が少しずつ広がってきました。

県のユネスコスクール活動全体が継続的に活性化するためのシステムが、組織としても研修会の運営母体としても上手く機能するように作られていることが、広島県の最大の特長です。ESD実践者のネットワークを組織的に構築することが多くの優れた実践事例に結びついています。組織的な取り組みは、各校での実践や教員の意識啓発にも大きな影響があることを本校(広島県立広島井口高校)の事例でご紹介します。

本校では、2年生で学ぶ総合的な学習の時間「ACTI(アクトアイ)」の一部として、海外姉妹校(ハワイ)との交流による国際理解の分野でESDに取り組んでいます。主なプログラムは、姉妹校の生徒と文通(ペンパル・アクティビティ)を通して互いの立場の違いや文化の違いについて理解を深め(6月~3月)、修学旅行での交流で価値観の違いや相互理解の難しさを体験し(10月)、交流や学習成果について意見を発信する英字新聞を制作し(10月~11月)、学びの集大成として英語によるプレゼンテーションを行う(11月~3月)、などです。

現在、ACTIは数人のプロジェクトチームとして全体計画を作成し、各学年の指導グループへの指導案や教材の提示、指示を行います。必要に応じて学年の協議を持ち、意思統一や調整を図ります。教員2人がTTで指導を行うため、ACTI全体では各学年延べ16人で指導グループを構成しています。英語科・情報科・家庭科などの教科や、進路・教務・総務などの分掌および各種の国際交流事業とも連携し、ほぼ全ての教員がACTIの活動としてESDの取り組みに参画するような推進態勢になっています。プロジェクト・リーダーも固定化させず、アクティビティの主担当経験者の次に学年リーダーを経験し、その後全体リーダーを担えるようにすることで、総合的な学習の時間やESD活動への教員全体の理解が広がるとともに、実践経験が学校に定着していくことが期待できます。

本校でのESDのテーマは国際理解ですが、ESDには環境、食育、防災、人材育成をはじめ、さまざまなテーマが学校や地域ごとに考えられます。今から本格的にESDに取り組んでみようとお考えの先生には、テーマを決めると同時に、学校としての推進態勢について管理職を交えて決めておくことをお勧めします。さらに、できるだけ多くの教員の知恵が集まる仕組みも取り入れておけば、時間の経過とともにESDの実践は深化し、学校全体がより協同的なチームになるはずです。

(広島県立広島井口高等学校長)

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