(学校図書館に寄せる思い)地味なテーマの蔵書充実を

桜美林大学学長特別補佐 芳沢光雄

 

私は現在、数学と数学教育を専門とした仕事を幅広く展開しています。数学に関心をもったきっかけは、知育玩具や素数や面積に関する疑問を小・中学校のときに抱いたことです。

4×4の升目の中で(1)~(15)の小チップを動かして元の位置に戻す15ゲームで、完成しないものがあるという疑問。2、3、5、7、11、13、17、19…という1とそれ自身でしか割れない素数が、なぜ無限個あるかという疑問。1点の面積は0なのに、点が無限個集まった正方形の面積がなぜ0でなくなるのかという疑問。等々。

当然のように、そのような疑問に対して両親ばかりでなく、学校の先生にもいろいろ質問しました。そして簡単な説明を受けると同時に、図書館にある数学の平易な専門書や読み物を何冊か教えてもらいました。

それらを読み、自ら抱いた疑問が納得できた喜び。これが数学の世界に飛び込むきっかけになったと思います。

もし学校の図書館に、いわゆる教科書に準拠した学習参考書しか置かれていなければ、当時の私は数学に対する興味が薄れたように想像します。

その後、高校時代には図書館から本格的な数学の専門書を借りて読むようになりました。当時、学校から家に帰るまでの電車の中でそれらの本を読むのが大きな楽しみで、ときどき、乗り過ごして読んでいたことが懐かしい思い出です。

振り返って思うには、学校の図書館は、学校の授業で習う学習参考書が完備しているのはまず大切でしょう。とはいえ、それだけでなく知的好奇心をもった生徒に、一歩進んだ内容のガイドになる専門的な本が置かれているのも大切だと訴えたいのです。

およそ数学は地味な世界です。話題性のあるスポーツや芸能分野と違って生徒からの書籍のニーズは少ないと思います。公共図書館であれば、ニーズの多い書籍を優先せざるを得ない面もあるかと思います。

しかし、学校の図書館という立場を考えると、流行を追う書籍もあって当然だと思いますが、長期的な視点に立った蔵書計画を望みます。

現在、私は小・中・高校時代の自分を思い出して、数学に興味・関心を高めるための算数・数学の啓発書を執筆しています。小・中・高校の児童生徒の皆さんには購入していただくより、むしろ学校の図書館に置いてもらって皆で回し読みしてもらいたいのです。

その暁には、読書会でも行って、私を招いてもらいたいという夢をもちます。児童生徒の皆さんの質問に積極的に答えて親睦を図れれば最高に幸せです。

実際、私は今までに小・中・高校への出前授業に、約20年間で200校ぐらい訪れています。その約半分は謝金無しで引き受けており、その精神は全く変わっていません。

そんな夢が実現可能になるきっかけを作るのは学校図書館です。整備が進むことを心から祈る次第です。

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