平成28年度 年頭所感 (10)

学位の問題も議論が必要
文化庁長官 青柳 正規

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

今から10年以上も前に、西ドイツの首相を務めたヘルムート・シュミット氏と食事をしたことがあります。首相を辞めた後で、当時は「ディー・ツァイト」の共同編集者を務めており、幅の広い論評が国際社会でも高く評価される言論人でした。食事の話題はいくつかありましたが、日本の国家公務員や大会社の社員がなぜ博士の学位をもっていないのかと尋ねられました。その質問に対して、就職後に教育する余地を残しておきたいから、学士を取ったばかりの新卒者を採用するシステムになっているためではないかと答えたように記憶しています。その後も言い訳がましい答えをいくつか並びたてたものの、シュミット氏は結局納得がいかないままに別の話題に移っていかれました。

グローバル社会のなかで、あるいは国際社会のなかで活躍できる人材をどう養成するかがしばしば議論されていますが、学位の問題も議論されていいのではないでしょうか。

原点に返り人間性を高める
日本私立小学校連合会会長 矢崎 昭盛

さまざまな教育改革の話し合いが進んでおります。道徳と外国語活動の教科化の動きもその一つです。道徳教育に関していえば、私立小学校のミッション系の学校では「祈り」をもって児童の心に働きかけている学校があります。ここでは、この教科書でこの内容を教えなさいというのはそぐわないのです。
また英語教育推進に関しても創立以来「フランス語」を取り入れている学校もあり、今まで通りの教育を施せることが重要なのです。私学の独自性を考慮した改革が大切なのです。

英語の時間数を増やす計画においては、英語専科の先生だけでは賄えない状況が考えられます。担任でも受け持てる配慮が望まれます。

また、教員の資質向上は大切ですが、専門知識だけを植え付けるのではなく、小学校教師としての適性(子どもが好きである)や、「教育は人格を移して行うもの」という原点に返って、人間性を高める手だても考えるべきでしょう。本年が良い年でありますように。

改革は現場の実態を踏まえて
日本私立中学高等学校連合会会長 吉田 晋

この3年間、国は教育の再生を目標に掲げ、教育の将来像を描く改革提言や報告が相次ぎました。いよいよ本年は、それらに沿った制度設計が具体化することと思います。

一方、教育の当事者である学校にとって、このたびの改革の方向が必ずしも明確ではなく、中学・高校レベルの最大の関心事と言ってもよい、いわゆる「高大接続改革」についても、その趣旨や内容がいまだ不透明の部分が多く、現実味のある政策としてイメージできない状況に置かれています。

その中で、中央教育審議会がアクティブ・ラーニングの導入、英語教育の改革を中心に、次期学習指導要領の改訂作業を進めています。これらの改訂は学校にとって日常の教育活動に大変大きな影響を及ぼします。

中央教育審議会は、教育行政と学校現場を結ぶ大切な架け橋です。だからこそ、各界・各層の多様な、また学校の現場を視野に入れた丁寧な議論がなされ、実効性のある学習指導要領の改訂になるようあらためて念願します。

少人数学級実現・教育費無償化へ
全日本教職員組合中央執行委員長 蟹澤 昭三

新年、あけましておめでとうございます。

子どもたちの荒れやいじめ、不登校などさまざまな問題の背景に、経済的に不安定な家庭状況があることは、現場の教職員の多くが実感しているところです。内閣府の発表を見ても、子どもの相対的貧困率は上昇傾向にあります。こうした中で、私たちは27年目になる「子どもたちにゆきとどいた教育を求める全国署名」運動に取り組んできました。2月には国会に提出する予定ですが、現在、約800万筆の署名が集約されています。

少人数学級の実現が、子どもたち一人ひとりにきめ細かく対応することが求められる日々の実践課題にとってどれほど重要かは、国の施策が小2における教員加配措置にとどまっている中で、各自治体が独自の努力で少人数学級を推進している実態からも明らかです。今年こそ、国の教育予算を、せめてOECD各国の平均レベル並みに確保し、国の責任で少人数学級実現のための教職員定数改善計画と、教育費無償化への方向が確立されるよう、全国の教職員とともに取り組んでいきたいと思います。

教育に志を 学校に夢を
全日本教職員連盟委員長 岩野 伸哉

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
学校現場に課題が山積し子どもたちや教職員を取り巻く環境が複雑化・多様化する中で、深刻ないじめによる自殺や、少年による殺人などの重大犯罪の発生が社会問題となりました。大麻所持による高校生の逮捕が相次ぎ、薬物汚染は小学生にまで忍び寄っています。そして、各方面から「学校なんか行かなくていい」という、学校に対するネガティブなイメージが発信されています。

学校は、子どもたちが将来自立して生きていくための基盤を培うところです。生き方を探り、志を立て、自らの人生を切り開くための舵を手にする、夢に溢れた場所であるはずです。そんな学校の本来の姿を取り戻すには、改めて私たち自身が教育専門職として教育に志を持ち、学校に夢を持たねばなりません。

本年も全日教連は、未来を担う子どもたちのため教職員定数改善を含めた教育環境整備・充実と「美しい日本人の心」を育む教育の推進に、全力を尽くす所存です。

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