【連載】自然体験に行こう 第5回 自然は最良の教科書

公益財団法人日本野鳥の会・施設支援室
横浜自然観察の森担当レンジャー 尾崎理恵

 

「自然は教科書、教師」と記したのは、元JR西日本の鉄道技術者、仲津英治氏である。この方は日本野鳥の会会員でもある。趣味とされていたバードウオッチングにおける観察力を生かし、仕事に反映させた。

その内容はこうである。羽ばたき音をさせず、静かに飛ぶフクロウからは、翼型パンタフラフが開発された。それまで、パンタグラフが一番の騒音源であったのが、羽の静音機能を取り入れ解消された。

また、カワセミからヒントを得た次の開発は有名だ。トンネルドンといわれるトンネル微気圧波を回避するため、カワセミのくちばしの形を参考にして、500系新幹線のぞみの先頭部分がデザインされた。

カワセミは空中から水中へダイブして餌をとる。この姿は極めてスマートだ。水面に飛び込む姿は、派手に水しぶきを上げず、美しく飛び込む。こうした開発は自然界からヒントを得たものとして、多くの人に知られている。

この他よく知られているのが、ひっつき虫として遊ぶオナモミ。実の表面を覆うとげの先端が、かぎ状のフックとなり、ひっつくという仕組みだ。これはマジックテープを制作する際に一役かっている。

われわれの身近で観察できる生きものを参考にして、さまざまな物が作り出されている。こうした事実を子どもたちに伝えるのは、生きものの観察をする際に、新たな意義を加えられるのではないか。

観察をその場の体験に終わらせてはいけない。観察が社会の中で新たな技術の発見につながっている事実を伝えると、子どもたちの学ぶ意欲は向上する。そして、観察対象の構造をより細かく見て、記録をするようになる。どうしてそうなっているのか、その仕組みが生きものにとってどんな効果をもたらすのか。さらにそれは、私たちの生活に活用できるのか。

野外体験に関わる大人たちは、自然観察をしながら、常に私たちの生活と結びつけた話ができるよう準備をしておかねばならない。

私たちと生きものは、つながっている。生きものをよく観察する、守る。それは私たちの生活に大きな影響を与えるのだ。

参考:「カワセミと500系新幹線電車」(http://www.birdfan.net/fun/etc/shinkansen/)、『自然に学ぶものづくり図鑑』(PHP研究所)公益財団法人日本野鳥の会施設支援室「横浜自然観察の森」の最新情報はサイト(http://wbsj-yokohama.blog.jp/)で。

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