(学校図書館に寄せる思い)多様な教育の場

文教大学教育学部教授 会沢信彦

 

自身の適性を意識し、将来の職業に思いを巡らせるのが高校時代である。運動神経はゼロ、手先も不器用、異性はもとより、同性との交友もままならない。しかし進学校に通い、実技教科以外の成績はまあまあ…。そんな「イケてない」高校生が、将来の職業として、大学教員を意識してもおかしくはない。

彼が心躍らす唯一の場は、地域の県立図書館であった。休みの度に自転車で訪れては、今は廃刊となった『全国大学職員録(国公立大学編、私立大学編の二分冊)』(廣潤社)を眺めるのである。いつの日か、自分もここに名前が載ることを夢見ながら…。この地味な「イメージトレーニング」が、彼の将来を決めたといっても過言ではない。

さて、学校の役割は、学習指導(主として授業)と生徒指導(教育相談も含む)である。学校図書館と言えば、学校における「知」の拠点であり、学習指導の面で大変重要な役割を果たしていることは言うまでもない。しかし、教育相談においても学校図書館が欠かせない存在であることは、現場の教員であれば誰でも理解しているはずである。

どんな学校にも、人間関係が苦手で、教室になじめない子どもは存在する。そんな子どもたちにとって、学校図書館は格好の「心の居場所」となる。「相談室登校」「保健室登校」があるように、「学校図書館登校」の子どもも実は少なくないはずである。

一方で、こんなエピソードを聞いたことがある。たまたま学校図書館の棚が壊れ、司書教諭が慣れない手つきで修理しようとしていたところ、昼休みに校内でも有名な「やんちゃな」男の子が通りかかった。「何をしてるの?」「棚が壊れちゃったんだ」。やんちゃ君の得意教科が技術であることを知っていた司書教諭が「そう言えば、○○君は技術が得意って聞いてたけど」と水を向けると、「いいよ。俺に任せて」と言って、器用な手つきで直し始めた。

そして、明くる日から、彼は器用なやんちゃ仲間を引き連れて、しばらく学校図書館の一角がDIYコーナーとなったそうである。これには「常連さん」も興味津々。「何してるの?」「見れば分かるじゃん、直してるんだよ。お前こそ何の本読んでるの?」と言った会話が交わされるようになった。

つまり、やんちゃ君の「自己有用感」が満たされただけではなく、およそ教室では見られない、やんちゃ君と本好き少女との「望ましい人間関係」までが生じたのだ。

この事例からも分かるように、学校図書館は、生徒指導や教育相談も含んだ、可能性に満ちた「教育」の場なのである。生徒指導、教育相談を研究対象とする者として、全ての学校教育関係者はこのことを深く理解し、学校図書館の充実に努めていただくことを強く願いたい。

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