課題解決能力が育ってきた 地域創生科で若者世代育成

NPO法人日本持続発展教育(ESD)推進フォーラム主催の今年度第6回ESD大賞で、文部科学大臣賞とユネスコスクール最優秀賞を受賞した2校に、実践をまとめてもらった――。

文部科学大臣賞
東京都大田区立大森第六中学校s20160121_06ESD東京都

平成22・23年度に大田区教委研究推進発表校として、「夢と希望を叶える課題解決能力」をテーマに研究を始めた。その際に出会ったのがESDだ。

将来にわたって夢や希望をもち、自己の生き方や在り方を考え、多様化する社会に対応し、貢献しようとする生徒を育成するためには、「課題解決能力」が必要であると考えた。

研究では、課題解決能力を、「学校や教室での学習(学校知)にとどまらず、社会に出ても生涯学習する(自己実現のための課題解決・意欲)大切さを学ぶ能力」ととらえた。そこで、「地域は屋根のない学校」という理念の下、環境教育、防災教育、国際理解教育などの教育活動を推進した。

平成26・27年度は区教委教育研究推進校として研究の機会を得た。国立教育政策研究所教育課程ESD研究指定校としての役割も与えられた。
平成24年3月に国立教育政策研究所から発行された「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究最終報告書」では、ESDに関する構成概念として、人を取り巻く環境に関する概念に、▽多様性▽相互性▽公平性▽連携性――など6つを挙げ、持続可能な社会づくりの明確な提案があった。さらに、ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度として、▽批判的に考える力▽未来像を予測して計画を立てる力▽多面的・総合的に考える力▽コミュニケーションを行う力▽つながりを尊重する態度――など7つを挙げている。

これらの力や態度を、授業研究として具体的に組み込むことができた。

まず学校内研究組織を再構築することで、校内研究意欲を高めた。管理職、研究主任、主幹教諭で組織した研究推進委員会を週に1回、時間割に組み込むことで、校内全体の研究を活性化させられた。月1回の校内研修会では、研究授業を行った後、講師を招き、協議会を開いた。
校内研修では、全教科の教員が3組に分かれて研修を進めてきた。生徒に身に付けさせたい力や態度を育てるために年度初めに教師向けアンケートを行い、ESDで身に付けさせたい7つの能力・態度を集約し、3つに分類。「思考力分科会」「コミュニケーション分科会」「ESDの態度分科会」を組織し研修を進めた。

研究成果として、行事や委員会などの生徒の取り組みが活発になった。取り組みの前に個人やクラスの課題を設定し、その解決のために、具体的に何を実行したらよいのかというプロセスを踏む。課題を解決していけば大きな成果につながり、達成感が得られるのを生徒は実感するようになった。この達成感は、自信につながり、また次の取り組みにも生きてくる。

学校生活で、生徒自ら問題点を考え、解決に向けてできることを自分たちで取り組む姿勢も出来上がった。生徒会の呼びかけに対し、省エネのためのグリーンカーテンや、東日本大震災後、岩手県花巻市への応援メッセージの作成など、各クラスで生徒全員が取り組んだ。

ボランティア活動も活発になった。挨拶運動などの校内の活動から、地域清掃、ホタルの再生プロジェクト、農援隊などの地域の活動へ人数的にも広がりをみせている。

一昨年9月と昨年4月に行った生活アンケートでは「人が困っているときは進んで助けますか」「人の役に立ちたいと思いますか」「人の気持ちがわかる人になりたいですか」の項目で、「そう思う」と答えた生徒の数が増えており、生徒の意識の変化が見られる。
生徒一人ひとりが、自分たちができることをしていこうという気持ちを持ち、それが誰かのためになるだけでなく、自分のためにもなることを知り始めた。

ユネスコスクール最優秀賞
山口県立周防大島高校

「『届けよう、服のチカラ』プロジェクト」で回収した子ども服
「『届けよう、服のチカラ』プロジェクト」で回収した子ども服

本校は平成19年度に、島内にあった2つの高校が再編統合されて開校した新しい学校である。

教育の大きな特徴として、「連携型中高一貫教育」と地域創生科などの「特色ある学科・コース」が挙げられる。

また県内の公立高校として初めてユネスコスクールになった。これらの教育システムを生かして教育活動の充実に取り組み、今年度はESD大賞ユネスコスクール最優秀賞とともに、キャリア教育優良学校文部科学大臣表彰を受賞した。

これまでも中高一貫教育をはじめ、地域に根ざした教育、キャリア教育など、一人ひとりの生徒と真剣に向き合いながら、さまざまな教育活動を展開してきた。ICT機器もいち早く導入し、全普通教室に電子黒板を設置し、工夫した授業を行っている。

また中山間部にある学校の実情を踏まえ、塾がなくても勉強ができる、塾のいらない学校を目指した取り組みも行っている。

地域創生科(過疎化や高齢化の中で地域社会を維持・持続させるため、誰もが幸福に暮らせる地域を創造する人材の育成を目指す学科)の開設後は、未来を開き、支え続ける若い世代を育成するためさまざまな活動に取り組み、生徒一人ひとりが地域社会の一員として、主体的に持続可能な社会を創造していくことができる態度を育んできた。

またユネスコスクールになってからは、ESDの視点で従来の教育実践を捉え直すことができ、取り組みの意義付け・意識化とともに、新たな取り組みにつなげることができた。

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