(学校図書館に寄せる思い)思春期向け性教育の本を

埼玉医科大学地域医学医療センター産婦人科助教
高橋幸子

 

高校、大学時代、私の細胞はドリカムで出来ているのではというくらいドリカムを聴いて過ごした。好きな人ができれば「うれしい! たのしい! 大好き!」。ふられて友人に救ってもらえば「サンキュ」。花火の季節がくれば「あの夏の花火」を歌いたくなる。

「眼鏡越しの空」は、シングルにはない。告白する勇気のない彼女は、彼を近くから遠くから見るときメガネが必須だ。

♪〝気を隠す〟にも〝ちゃんと見る〟にも都合がいい

そんな彼女は図書館で、意中の彼が以前借りた本を見つける。

♪図書館で借りた空の写真集 カードに強くてきれいなあなたの名前がある

そして、自分も借りてみた。同じページを見て彼は何を思ったのだろう。この本は彼の部屋に潜入したに違いない。そんなドキドキが伝わってくる。

産婦人科医の立場から、思春期の子どもたちに性教育講演を行っている。「自分を大切にしてね」のメッセージが届かない子が、性的非行に走る。自尊感情の低下とコミュニケーション力の低さが問題になっているという。相手との距離感が分からないようだという。SNSでのやりとりも、相手の気持ちを想像することなく、ずかずかと入り込むようなメールを送ってしまう。すぐに返事が来ないと耐えられない。相手を思う、想像力が欠如している。

コミュニケーションの基本は「目を合わせること」。この基本を学ぶのはやはり、家庭である。小さい子どもと目を合わせてコミュニケーションするツールは、絵本だ。

子どもによっても違うかもしれないが、子どもと図書館に本を借りにいくと、新しい本よりも知っている本、読んだことがある本を見つけてきては「これ読んで」とねだる。同じ本を何度も繰り返し読む。そこには「知っている話」という安心感もあるのだろう。目を見て、同じ部分で同じ反応をする。それが安心感を作り、コミュニケーションの楽しさ、豊かさ、関係性をつくる基礎なのではないかと思う。

図書館に置いてほしい本として、動物や生物、理科などの科学的なコーナーに思春期の心や体の悩みに答えてくれる本をお願いしたい。学校図書館が難しければ、ぜひ、保健室に。さらに可能なら各クラスの学級文庫に!

学力が世界一高いフィンランドの教科書では、中3で「生物」の教科書に「ヒト」の生殖が扱われている。日本では、ウニやクラゲの生殖を学ぶが、ウニやクラゲでは「生殖」に伴う責任についてまで語れない。

私たち人間にとって、最も知るべき動物は「ヒト」である。教科書をガラリと変えるのは難しいとしたら、科学として正面から学べる環境を図書館から作ることはできないだろうか。期待したい。

片思いの彼が読んだ性教育の本。見つけた女子も借りて、いつか来るコミュニケーションできる日を夢みる……。そんな図書館が全ての学校にあったらいいなと思う。

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