【連載】自然体験に行こう 第7回 サクラの木に集まる生きもの

公益財団法人日本野鳥の会・施設支援室
横浜自然観察の森担当レンジャー 尾崎理恵

 

少しずつ春らしい陽気の日が増えてきた。私の勤める観察の森でも、ウグイスのさえずりが聞こえはじめている。もちろんまだ上手ではない。ウグイスのほかにもヤマガラやシジュウカラのさえずり、ヤマアカガエルの声も聞かれ、生きものが活発になってきていることがわかる。

春を告げる生きものの定番といえばサクラだ。日本には約20種類の野生のサクラがある。観察の森にはヤマザクラ、オオシマザクラが目立つ。ソメイヨシノは日本人に最も馴染みのある種類である。これは園芸品種で、その種類は200以上もあるそうだ。ソメイヨシノは学校の校庭に必ずといっていいほど植わっている。この木を記念写真の背景にするだけではなく、ぜひ観察対象としてとりあげたらどうだろうか。

まだ肌寒い季節、花の芽がふくらみはじめ、うっすらとピンク色が見えてくる。すると、その芽をおいしそうにつまんで食べてしまう生きものがやってくる。ウソという野鳥だ。ふっくらとしたその姿は可憐でかわいらしいが、サクラにとっては、これから咲かそうとしているつぼみを食べられてしまうのだから、たまらない。数羽以上集まり、枝から枝へと食べながら飛び、移動していく。

次に幹の表面を注意深く探してほしい。そこにはジョロウグモの卵のうや蛾のまゆなどが見つかるはずだ。こうして見ることで春を待つ生きものの姿を知る。

ようやくサクラの花が咲きはじめると、次はヒヨドリが蜜を吸いに集まってくる。木の下には、花がぽとぽとと落ちている。ヒヨドリのしわざかなと思って見上げると、そこにいたのはスズメ。スズメは花をちょんぎって蜜を吸う。野鳥だけではなく、花にはクマバチやミツバチなどのハチの仲間も多く集まる。

花が終わり、葉が出てくると、今度はその葉を食べにコガネムシの仲間やカメムシが現れる。季節が変わり夏になると、幹にセミの抜け殻がみつかるようになる。

たった1本のサクラの木だが、つぼみ、花、実、幹、葉、冬芽などとじっくりと観察すると、季節の変化を感じる。花の盛りが終わったからサクラは見ないではなく、その季節ごとに観察し、見えてくる生きものとその様子に注目してほしい。遠目から木の全体を見る、近づいて幹の表面、葉の裏、花の中を見る、虫めがねを使ってみると、1本のサクラでドラマを感じるだろう。

ぜひ次年度、サクラはもちろん、身近な樹木を使って観察していただきたい。
(公財)日本野鳥の会施設支援室横浜自然観察の森の最新の自然情報はサイト(http://wbsj-yokohama.blog.jp/)に。

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