2020東京五輪へ「1クラス1競技運動」 鈴木大地スポーツ庁長官に聞く

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――オリンピック・パラリンピックではスポーツとともに、開催国を含めて文化発信が重要とされている。その点について。

国際オリンピック委員会(IOC)では、若者のオリンピックである「ユースオリンピック競技大会」で文化・教育プログラムを盛んに実施している。ヨーロッパでは、スポーツと文化が結びつきながら発展してきた経緯がある。スポーツだけでなく、文化も一緒に発信しながら進めることで、相乗効果が期待できる。文化発信は重要だと考えている。

今年10月には京都と東京で「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」が開催される。これは、ラグビーワールドカップ2019、そして2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会と、日本で開かれる大きな国際競技大会に向けてのキックオフイベントである。

――スポーツにおける教育的価値について。

スポーツは、教育的側面で発展してきた歴史がある。日本では一部の競技に「道」という表現が付いている。全てのスポーツにおいて礼節は重要だ。アスリートである前に、社会に通用する人間にさせたいとの目的でスポーツを経験させる保護者が多いのではないだろうか。指導者も同様だと思う。

日本の選手は、協議の場に入る前に、そこに向かって礼をする。私もプールにそうした。柔道などでもそうだ。日本のスポーツを経験した子どもたちは礼儀正しくなったと聞く。スポーツにある教育的価値とその重要性が、ここからもあらためて分かる。

――2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が4年後に迫った。東京都は、オリンピック・パラリンピック教育を推進するための提言を出し、文科省も中間まとめを取りまとめた。

スポーツ庁長官に就任する前には、文科省のオリンピック・パラリンピック教育有識者会議の委員だった。

2020年東京大会の開催決定を機に、オリンピック・パラリンピックムーブメントを全国で展開していこうとの流れになっている。

こうした中で、海外ではドーピングが発覚したり、国内では賭博問題が起きたりと、スポーツ界はさまざまな問題を抱えている。これを機会に、スポーツマンシップやスポーツの意義、教育的価値などを全国の学校に伝えていけたらと思っている。

98年に開かれた長野冬季オリンピック・パラリンピック競技大会では、開催地である長野市内の小・中学校が応援する国や地域を決め、当該国・地域の文化など学習したり、オリンピック・パラリンピック選手と交流したりする「一校一国運動」を行った。子どもたちは、世界が広いのを知ったと思う。

こうした取り組みを、東京大会でも進めていきたい。東京だったらいろいろなことができる。「一クラス一競技運動」もできるのではないだろうか。

――組体操による事故が多発している。対策を講じた教委もある。スポーツ庁では、安全配慮を求める通知を発出した。

組体操を実施するかどうかを、今一度検討してもらいたい。子どもたちに達成感を味わわせたいのであれば、別の取り組みでも体験させられる。実施するかどうかを決めるのは、あくまでも学校である。

だが、実施するのなら、十分な安全配慮が必要だ。年間8千件も事故が起きており、過去には亡くなった子どももいる。教員研修を実施して、知識や対処方法を身に付けてもらいたい。事故は想定外のところで起きるもの。それを念頭に、指導してほしい。

――教員に向けて一言。

下村博文前文科相からは、これだけは伝えてもらいたいとのメッセージをもらった。「スポーツは、子どもたちの体を強くするだけなく、頭の働きも良くする」と。米国のスポーツ科学によると、運動が学力を向上させる効果があるとの研究結果が出ている。教員の方には、そうした事実を知ってほしい。また指導方法についても考えてもらいたい。

まずは、初めに体を動かす喜びと楽しさを伝えてほしい。特に運動が不得意な子どもたちにどう指導していくのかも重要だ。最初の関わりが、その後を決めてしまう。スポーツのすばらしさを子どもたちにしっかりと伝えてほしい。

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