【連載】口から語る健康 第39回 保険適用で歯科指導に変化

日本大学歯学部医療人間科学教室教授・歯学博士 尾﨑哲則

 

新学期から2カ月経ち、学校でもいろいろなことを経験したと思います。歯科の診療では、今まで健康保険が使えなかった処置のいくつかが、今年度から適用になってきました。特に今回は、子どもたちに関連のある話をしていきます。

学校での歯科検診で、「C0」(要観察歯)と言われることがあります。これは、歯の表面は残っていますが、その直下のミネラル成分がミュータンス菌などにより作られた酸によって溶け出し(表層下脱灰と言います)、もう少し酸の提供が続くか、外力が加わると、表面が壊れてむし歯の穴が開く寸前の歯です。

外からは、白濁した部分(白濁斑)をもつ歯として肉眼でも見ることができます。小学生では多くの場合、歯頸部(歯と歯ぐきの境目より少し歯の上に近いところ)に見られます。原因の主なものは、歯と歯ぐきの境目のプラーク除去ができていないことによるものです。この歯の白濁斑を、フッ化物塗布などの方法を用いて、このミネラルの低下した部分に、唾液中からカルシウムを中心としたミネラルを取り込み、ミネラル量を取り戻す(再石灰化といいます)ことが、保険診療として認められたわけです。ただし、現状では保険診療として行える歯科診療数は少ないと予測され、全ての歯科診療所で受けられるわけでないところが、残念です。

ある小学校で、20年ほど前、学校での定期歯科健康診断で見つけた「C0」の歯を半年後、再度、検診を行ったことがあります。歯の生えたばかりの1、2年生で、特別な処置をしないでおくと、半年後には40%弱がむし歯になり、50%がそのままで、10%弱が再石灰化して、健康な歯に戻っていきます。

しかし、ある要因で見ると、人によって格差があります。ミュータンス菌を持っているか否かです。すなわち、むし歯のなりやすさが違うようでした。ミュータンス菌をもっていない児童では、半年後にむし歯に進行した割合は25%で、かなり低いことが分かりました。ここでは、フッ化物を用いた予防的な処置はしませんでした。一般的には、ミュータンス菌に対する処置を行い、そしてフッ化物を継続的に応用すれば、かなりの歯をむし歯にしないですむことが、学問的には証明されています。

新しい診療項目が認められれば、将来的には新規に実施しようとする歯科医療機関も増えことが予想されています。今までは、その部分にプラークを溜めないために、「丁寧な歯磨きをするように」との指示に代表される歯科保健指導でしたが、今後は、このような処置が主体になっていくと考えられます。

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