【連載】口から語る健康 第40回 歯周病は予防管理で対応

日本大学歯学部医療人間科学教室教授(歯学博士) 尾﨑哲則

 

テレビ番組などで、「むし歯ができたことがないので、歯医者さんへ行ったことがない」といった主旨の発言を聞くと、日本における歯科疾患への理解の低さを感じてしまいます。「歯科疾患イコールむし歯」という古典的(20世紀的)な思いから発言されているのでしょう。以外に、う蝕(むし歯)と歯周病の成因が理解されていないと思われます。

う蝕は、ミュータンス菌を中心とするう蝕原因菌が、砂糖などの糖類を取り込んでエネルギーとし、同時に乳酸を主とする有機酸を排出することによって、歯の構成要素であるアパタイト結晶(リン酸カルシウム)が溶かされていく結果によって生じる疾患です。ここで問題となるのは、ミュータンス菌が存在しているプラークです。プラーク自体は、口の中の細菌の塊が主なものです。

歯周病原因菌は、ミュータンス菌とは性質が異なる菌です。こちらの菌は、糖から酸をつくることはほとんどせず、むしろ歯肉や歯根膜(歯と歯を支える骨をつないでいる組織)などの歯周組織に害となる物質を出していきます。これらの物質による炎症の結果、歯周病が起きるわけです。

というわけですので、むし歯にならないから歯周病にならない保障は、どこにもありません。一方、わが国の成人が歯を失う大きな原因は、1番が歯周病です。

「むし歯になった人は、歯周病にならない」という言葉を聞くことがあります。これは、真実でしょうか。

ここで重要なのが、口腔内にまだトラブルが起きてないうちに、チェックができるかということです。う蝕の経験があり、定期的に歯科医院に通院している人は、歯科医師がチェックし、歯石の除去や歯口清掃の指導を歯科衛生士にしてもらいます。だから、歯周病になりにくいのではなく、予防をしているのです。

むし歯になったことのない人は、歯科診療所に行くきっかけがなく、ほとんど手入れされずに成人期を迎えます。自分ではそれなりに歯口の清掃はされていますが、歯石をとってもらったりすることがないわけです。そうすると、歯科医療者による専門的な口腔ケアを受けてプラークがつきにくい口にしてあるわけではありませんので、自ずと多量のプラークがつきやすくなっていきます。そのため、これが原因で歯周病になりやすくなります。

各家庭で「かかりつけ歯科医(治療だけでなく、定期的な予防管理やメイテナンスをしてもらう歯科医)」をもって、自発的な歯口の管理をしていく必要があるでしょう。

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