「ホロコーストの記憶」を歩く 過去から未来を旅ガイド

石岡史子・岡裕人著
石岡史子・岡裕人著

過去の負の記憶から未来への希望を探る異色の「旅ガイド」である。著者の石岡さんは、NPO法人ホロコースト教育資料センターの代表。岡さんは、フランクフルト日本人国際学校事務局長で歴史研究家。

「過去をみつめ未来へ向かう旅ガイド」が副題。主に、ドイツのベルリンと、オランダのアムステルダムに点在する、ナチによる過去の負の記憶を形にして残している場所を案内する。

ユダヤ人が大切にしているタルムードや貴重本が文字通り山と積まれて焼かれた「焚書追悼記念碑」。「空っぽの図書館」を象徴して石畳の路面にはめられた強化ガラス窓の下には、本が1冊も並んでいない書架が見える。業火は言葉を焼き払い、文化を抹殺し、時の持続性を奮おうとした。ここはベルリン中央のベーベル広場。

シューネベルク区には、かつて東西分断時代に西ベルリン政府が置かれた。この繁華街に立つ看板は「決して忘れてはならない恐怖の地」を表示している。強制収容所・絶滅収容所のあった地の名を記す。

アムステルダム・メリヴェデ広場には、昔のままの飾り気のないレンガ造りのアパートが建つ。その一角に、アンネ・フランクの一家は、幸せに暮らしていた。この広場と「隠れ家」の間に、歴史の深淵が広がる。

ホロコースト史は、ナチス・ドイツによる加害、ユダヤ人の悲惨な被害という側面だけではない。傍観や共謀、抵抗など、多様な様相があった。障害者や同性愛者、シンティーとロマ(「ジプシー」と呼ばれた人々)で犠牲になった人たちの掘り起こしも進んでいる。そうした「記憶の形」も収められている。

これらの歴史を通して、私たちは何を学ぶべきか。場所をガイドしながら、歴史を未来に生かす道を探っていく。
授業に活用できるやさしく分かるホロコースト史や、旅に便利な現地で使える地図や情報。世界のホロコースト博物館や推薦図書・映画の案内も収載した。

石岡さんは、ホロコーストを教材にした「命と人権を学ぶ」出前授業を、国内外の1千校で行ってきた。岡さんは、ドイツ滞在27年になり、同国のホロコースト教育について研究している。

学校図書館には、ぜひとも備えておきたいガイドである。
子どもの未来社/1200円+税

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