聴覚障害者初のエベレスト登頂 田村聡さんがチャレンジの力伝える

登山に使った道具を持参して説明
登山に使った道具を持参して説明

チャレンジすれば道は開ける――。東京都立川市立南砂小学校(関口保司校長、児童数332人)は、8848メートルの世界最高峰エベレスト(チョモランマ)に聴覚障害者として世界初登頂した同市在住の登山家、田村聡さんを招き、7月15日、5、6年生への特別授業を行った。田村さんは2度の失敗を克服し、今春、登頂に成功。ヒマラヤの自然の美しさや世界中から集まった登山家との交流の楽しさや苦労などを児童らに熱心に伝えた。諦めない心、勇気、情熱の大切さを訴え、自身の経験から挑戦し続ける意義を強調した。

特別授業は、近隣の都立立川ろう学校小学部2~6年生も参加して行われた。共生社会のモデルを示すため、同校とは約50年におよぶ交流が続いている。田村さんは同ろう学校の卒業生でもある。

大型スクリーンには、ヒマラヤの美しい山々と町が映し出された。手話通訳を交えながら、田村さんは、3回にわたるエベレスト挑戦のいきさつを、身振りを交え、情熱的に語った。

初挑戦は平成26年。7950メートル地点に到達したものの、強風と悪天候に阻まれて断念。翌年に再チャレンジしたが、ネパールに大きな被害をもたらした大地震に遭遇。ベースキャンプに滞在していた時で、難を逃れたが、登頂は断念せざるを得なかった。地震発生数日前に、太陽の周囲にリング状の虹がかかる気象現象を目の当たりにしたと話し、児童に写真を見せた。

3度目は今年4月。チベット経由で入山。世界各国から隊員が集まる国際公募隊に参加した。隊員9人の中で日本人は田村さんだけ。コミュニケーションに苦労したとしながらも、エベレストを目指す共通目標の下でさまざまな人と交流し、価値観や世界観が広まったと話した。

ベースキャンプでは、氷河の氷を溶かして水を作る作業などを説明。初挑戦時に、悪天候で引き返した約7900メートル地点のキャンプ3に到達したときには、風のない絶好の気象条件だったと振り返った。山頂到着時には疲労困憊。酸素ボンベの残量が少なくなっていた。4畳ほどの狭いスペースに各国の記念旗が並び、足下には切り立った断崖が迫っていたなどと、苦しみと喜びが交錯する念願の登頂を述懐した。

田村さんは、体に障害のある人がヨットで世界1周を達成した例などを挙げ、児童に向かって、好きなことにチャレンジしようとエールを送った。自身の不屈のチャレンジを踏まえ、「挑戦によって道は開かれる。諦めず、勇気と情熱と英知を持つのが大切」と強調し、児童の未来を励ました。

同授業は、登頂報告として同市長にあいさつした際、貴重な経験を子どもたちにぜひ話してほしいと勧められて実現した。

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