【連載】ESDの魅力 その3 やっていることがESD

横浜市立永田台小学校長 住田昌治

 

ESDは「変容をもたらす教育」と言われている。

「君たちのやったことが、地域の人に変化をもたらしましたか」
「はいっ、私たちが学校の周りをチェックして、ごみ拾いをして、その後も観察してきました。市にも地域の様子を伝えてきました。地域の人はまちを汚さなくなりました。以前よりきれいなまちになりました」

今年3月、イギリスのレスター市で行われた「サスティナブルスクール・カンファレンス」に参加した折に、地元の公立小学校を訪問する機会を得た。学校内を見学した後、高学年の子どもたちとの意見交換会の場が設けられていた。私の他に日本の大学の教官が2人、韓国の大学の教官1人が参加した。子どもたちが話を始める前に、校長先生が「子どもたちは、話し出したら止まらなくなりますよ」とうれしそうに言われた。

イギリス・レスター市の小学校。この日はパジャマで登校する日。全員が自信を持って話す
イギリス・レスター市の小学校。この日はパジャマで登校する日。全員が自信を持って話す

一人の子が口火を切った。
「私たちがやっていることは生かされています。芝刈りをして得たお金で新しい環境をつくります。畑で作ったものをみんなで食べます。パンプキンスープはとてもおいしかった。自分のやったことに自信をもっています」「健康的な食事をしているか見ています。昼食にジャンクフードをもってきた子がいた場合は、親への啓発をしています」「通学に何を使っているか調べて、よく歩いている人にはバッジをあげています」「水道や電気の使用量をモニターして使いすぎに注意しています。毎日、私たちがエネルギーの管理をしています」「家庭へのプリント配布をやめて、学校からEメールで伝えてもらっています」「フェアトレードや有機農法にも取り組んでいます」――。

最後に「私たちは授業を楽しくやっています。友達と仲がいいのも自慢です」と。本当に子どもたちのフリートーキングは止まらない。子どもたちは、よく話すが、よく聞く。誰かが話しているときは最後まで聞いている。そして、驚くことは手ぶらである。日本だと発表のための原稿や資料を準備するのだと思うが、何も持たず、聞き手を見ながら自分の言葉でしっかり話す。質問にも、その場で考えて答える。さぞかし優秀な学校なんだろうと思って聞いていたら、子どもたちが校長先生に発言を促した。

「赴任当時、児童の様子は決してよいとは言えなかった。学力テストの結果もよくなかった。優先課題にくるのは持続可能性ではなかった。学校の状況を把握し、『今ここ』を大事にしてエコスクールとして活動してきた。その中で子どもたちの活躍が大きい。先生たちもいい仕事をしている。まず数人でいいから、情熱を持っている人から始める。彼ら、彼女らの実践の『いいね』が学内に広がる。トップダウンではだめだ。ワクワクする先生、情熱的な先生、子どもはそれを見ている」とまとめられた。

その後、ホールで給食をいただいたが、高学年の子どもたちが、給食の配膳や片付け、さりげない低学年への声かけ、テーブルふき等、自然に行っていた。

ESDが学校内や生活に染み込んでいる、持続可能性が内在化している学校。学校のどこを切っても持続可能性の芽が見える。持続可能な未来をビジョンとして描きながら、学校の今をしっかり捉え、情熱的でワクワクするような楽しい教育を行うことこそ、現状を変化させる担い手を育むことにつながる。

「ESDをやろう」と構えて、難しい計画を立てて大変にするのではなく、「今やっていることがESDだ」と言えるようになることが肝要だ。そのためにも、「とらわれない・おそれない・あきらめない」子ども主体の実践を積み重ねていきたい。

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