【連載】口から語る健康 第42回 海外の歯磨剤は成分異なる

日本大学歯学部医療人間科学教室教授(歯学博士) 尾﨑哲則

 

この時季、多くの人が夏休みを使って海外へ行きます。そんなとき、日本でも知っている名前の歯磨剤があると、ついつい使ってみたり、お土産用に買ったりします。しかし、使ってみると、意外なことが起きる場合があります。

歯磨剤のように人体に使用される製品は、正しい使い方、適正な品質を確保するために、医薬品医療機器等法(旧薬事法)に規定されています。歯磨剤は「医薬部外品」と「化粧品」、一部は「医薬品」に区別され、通常市販されている歯磨剤は「医薬部外品」または「化粧品」に属しています。

歯磨剤の基本的な成分は、物理的に歯の汚れを落とし、歯の表面をきれいにする清掃剤(研磨剤)、細かな泡立ちによって口中の隅々の汚れを取りやすくする清掃助剤や発泡剤。その他に粘結剤や香味剤などです。

化粧品の歯磨剤は、「歯を白くする」「口中を浄化する」「むし歯を防ぐ」「口臭を防ぐ」「歯のヤニを取る」「歯垢(しこう=プラーク)を除去する」「歯石の沈着を防ぐ」など種々の働きがあります。医薬部外品の歯磨剤は、前述の基本的な成分の他に、フッ化物、殺菌剤、抗炎症剤など各種の薬効成分を配合することによって、「むし歯の発生および進行の予防」「歯肉炎・歯周炎の予防」などの、化粧品の歯磨剤にはない効果を付加したものです。薬効成分が1つないし2つ配合されているものが多い傾向にあります。

ここから、最初の問題の答えに入ります。内容成分が一緒であっても、国によって法律が異なるために、成分の濃度が違います。例えば、むし歯予防用フッ素の濃度は、日本では1000ppmまでですが、イギリスなどでは2000ppmまで許可されています。同じように発泡剤として使われるラウリル硫酸ナトリウムも、国によって許可濃度が異なり、海外で発売されているものの方が高い場合が知られています。そのため、同じブランドであっても、発売国の法令に従うために、製品に含まれる濃度が異なります。

泡立ちをよくするための発泡剤によるトラブルで一番多いのが、唇の粘膜の荒れです。ひどい場合は、粘膜が剥離します。日本人と外国人で比較すると、口の粘膜の厚さや敏感度が異なるために起きるようです。

最近の歯磨剤は、発泡剤や香味成分が抑えめです。多量に泡が出て強い清涼感が得られるほどの発泡剤や香味成分は配合されていません。むしろ低発砲で、あまり清涼感を得られないレベルまで低くされています。ほとんどゆすぐ必要がない歯磨剤も発売されています。

このような歯磨剤の改良に伴い、通常は歯磨きの際の歯磨剤使用を奨励しています。これは、歯磨きをすることによって薬効成分を口の隅々まで届けようという、ドラッグ・デリバリー・システムとして応用されています。現在市販されている歯磨剤の約90%が医薬部外品です。また従来よりも薬効成分についての研究開発が進み、歯周病予防にも多くの薬効成分が使われています。歯磨きは、むし歯予防のためという時代から、歯周病予防のためという時代になりつつあります。自分の口に合った歯ブラシ・歯磨剤について、かかりつけの歯科医に相談するのを勧めます。

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