日本ESD学会(仮称)の設立(来年4月)について

奈良教育大学名誉教授 長友恒人

 

背景と展望

国連ESDの10年(DESD)が2014年に終了して2年が経過した。日本の学校教育ではユネスコスクールがESDの推進役を担うことになり、この間にユネスコスクールは15校から939校(昨年6月現在)に飛躍的に増加した。DESD以前から国際理解教育、環境教育、開発教育等の分野でESDが実施されてきたが、これらの取り組みもDESDの期間に活性化したと聞く。

DESD終了の頃に全国規模の研究組織(学会)の設立を要望する声が聞こえてくるようになった。特に、ESDに熱心に取り組んできた教育委員会や学校教員からの要望が多かった。DESDの間に確かにESDの実践は広がった。実践の交流会も数多く開催され、事例集も刊行されたが、学会設立要望の背景には実践している教員が次の実践をどのようにすればいいのかと模索している状況があるのだと推察された。そこで宮城教育大学と奈良教育大学の有志がESD研究の全国組織(学会)を設立しようという相談をした。最初の呼びかけ(打診)を今年1月に行ったところ、多くの賛同とともに時期尚早ではないかという意外な反応も少なくなかった。DESD以前から実践してきた分野においても、ESDに関する全国的な学会組織の必要性が認識されていたという。

ESDには環境、貧困、人権、平和、開発、文化などのさまざまな課題があり、特に学校教育では、これらの課題をテーマに、批判的思考、多角的・総合的思考、分析的問題解決、協働的問題解決等の能力・資質を身につけて、現在および未来の課題に取り組むために必要な知識、スキル、態度、能力、価値観を発展させることで社会を変容させる行動力を育むことを目的に取り組まれている。現代社会が抱える多様かつ深刻な課題を対象として、従来の概念を超える資質・能力・スキル等によって未来の社会を変容させる行動が求められる、という今までにないスケールの総合的な教育がESDなのである。このことが個別にESDの実践を積極的に進めながらも、実践の目標・位置づけ・評価といったカベが実践者の前に立ちはだかるのであろう。

実践交流だけでは何が足りないのか。ESDの実践をさらに飛躍させるためには何が必要なのか。DESDのフォローアップとしてグローバル・アクション・プログラム(GAP)が提起され、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中にESDが位置づけられたが、それぞれに条件が異なる実践の場で何をどのように改善すればよいのだろうか。このような課題は学校教育だけでなく生涯教育においても同じであろう。それを一気に解決する方法はないが、課題を共有する教育者、研究者、学生、市民、企業、行政が協働して議論を深め実践していくことが、唯一の方法であるように思われる。来年4月29日に、日本ESD学会が創設される。ESDの屋台骨をみんなで創るために、あなたも参加してください。

問い合わせは奈良教育大学・中澤/TEL0742(27)9269、FAX0742(27)9269。Eメール=nakazawa@nara−edu.ac.jp

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