【連載】口から語る健康 第47回 神頼みからの健康管理

日本大学歯学部医療人間科学教室教授 歯学博士 尾﨑哲則

 

新年を迎え、初詣に行った人は多いと思います。また受験を控え、合格祈願をした人もいるかと思います。神社仏閣には、それぞれご利益が示されていますし、何の神様・仏様といった言い方もされています。

神社仏閣へ行くと、仕事柄、まずは病気関連のご利益を見てしまいます。そして、歯痛関係を見つけると、必ず「記録写真」を撮ってきます。

日本には300ぐらいの「歯痛に効く」というか「歯痛のときに祈る」、すなわち、歯の痛み・悩みを癒す目的で祈願などをする神社・仏閣・石像があるといわれています。それぞれの神社・仏閣にはいわれがあり、その一部に歯痛が関連しているようです。

飛鳥時代以降江戸時代までは、貴族や武家・豪商などを対象に、むし歯などの治療を行う「口中医」という医療者がいましたが、一般庶民には無縁の存在でした。

これらの時代には、庶民は歯痛などにどのように対処したのでしょうか。歯の痛み、中でも特に、むし歯の痛みは、人が経験する痛みの中でも、かなり強烈なものといわれています。そのため、苦しい時の「神頼み」「まじない」などが、庶民にとって唯一の手段であり、これに頼らざるを得なかったのです。

歯の健康づくりの神さまではなく、歯痛鎮めのための神様であり、疾病時に対応する神さまです。これは、他の多くの疾患でも事情は同様です。病気平癒(病気が完治して回復したことという意味)を祈願することが目的になっています。

通常、人は病気をして、初めて自分の体に関心がいきます。胃の痛みを訴えて、胃があることを体験します。歯は見えていますが、通常は何も意識することなく生活しています。しかし、一度むし歯になり、進行し、歯髄に達するようになると、否応なく歯を意識せざるを得ません。そこで、お祈りが始まるわけです。

医学が目覚ましい発展をしている現在において、「歯の神様」の存在を「ばかばかしい」と言う人も少なくありません。しかし、「ガン封じ」や「ポックリ」祈願のツアーは現代でも多くのお客さんで賑わっています。今日でも、人の心に神頼みがあるのは否定できません。

これらの神様と神頼みを、昔の人がしていたこと、信じていたことで、非科学的と否定するのではなく、人そのものの在り方に関心を持たせ、健康な状態を認識し、より高めていくような健康管理を、児童生徒が自らできるように、支援していくのが重要であると考えています。

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