【連載】口から語る健康 第48回 自己効力感を学童に

日本大学歯学部医療人間科学教室教授 歯学博士 尾﨑哲則

 

平成27年度の学校保健統計の値では、小学生のう歯の割合が昭和60年度の91.36%から50.76%と大きく減少し、12歳児の1人平均の永久歯のう歯数は4.63本から0.90本へとなっています。この数値からは、明らかに学童期のう蝕は減ってきています。

しかし、平均値だけを見ているだけでは、実態が見えてきません。う蝕が減少している事実には意味があるのですが、全ての学童がこの恩恵を受けているのでしょうか。すなわち、何らかの理由で、多くのう歯を持っている学童が少なからずいます。これは、学校全体の問題ではないでしょうが、放置できるものではないと考えています。こうした学童が抱えている日常生活での問題であると、私は認識しています。その多くが、家庭での生育支援に関わるものと思われます。

全体の問題が減ってきたために、これからは、個別の学童への支援が可能になってきたと考えています。

従来なら、クラス全体での歯磨き指導を行うなど、みんな一緒の健康への支援でした。しかし、現在は、学童一人ひとりが抱える個別の課題についてみていくときと考えています。

ある児童は噛み合わせ、ある児童は歯肉に問題があるというように、う蝕以外のものが出てきますが、これらも、う蝕の問題と同様に、一つひとつの問題として各児童にあわせ、解決に向けていくことが重要かと思われます。

う蝕の問題は、次のように考えています。

ほとんどの児童がクリアしたとしても、その当該学童がクリアしていなければ、クリアすべき問題としていきます。学習の場で、できない学童を放置したままにせずに支援していくことと同じようにです。

しかし、ここで予測される問題は、う蝕という課題を持っているということ自体が、歯科における困難事例であると考えられます。家庭での食生活、清潔習慣等です。これらを、家族の協力を得て全て解決するのがベストでありましょうが、児童が主体となって、学校での支援の結果一つでも改善できれば、歯科保健が持つ問題解決による自己効力感〈セルフ・エフィカシー(self-efficacy)〉を学童に体験させることができます。

そして、最終的には、自らの健康づくりに関心を持っていくことができるのではないかと考えています。

こんなチャンスが、学校歯科保健にあると強く信じています。

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