地域との協働を軸にESD 桜プロジェクトで町づくり

第8回ESD大賞 文科大臣賞・福岡県大牟田市立吉野小学校

NPO法人日本持続発展教育(ESD)推進フォーラム主催の第8回ESD大賞受賞校の実践から、文部科学大臣賞を受賞した福岡県大牟田市立吉野小学校(橋本一郎校長)の実践を紹介する。なお、受賞校の実践は、「第8回ESD大賞受賞校実践集」として刊行され、全国のユネスコスクールに配布される。


左肩・吉野小写真1福岡県大牟田市立吉野小学校は、自然豊かな地域にある。一方、九州新幹線の開通で駅の新設、道路の整備等が行われ、地域の環境も変わってきている。商業形態・消費生活の変容によって、校区内の商店街の様相も変化している。

同校が開校した約60年前は、桜のきれいな学校が地域の特色の一つでもあったが、現在では老木化や住宅地の整備により、桜の木も少なくなってきている。

そのような中、2013年に「桜プロジェクト」と題して、吉野の町を活性化させる取り組みを始めた。

1.ねらい

桜プロジェクトを中心とした全校的な取り組みおよび地域との協働的な活動を通して、「吉野の町の活性化」を図り、持続可能な社会の一員として自覚し行動できるような能力・態度および郷土を愛する心情の育成を目指す。

2.ESDで身に付けさせたい能力・態度の学校化

国立教育政策研究所から示されているESDで身に付けさせたい能力・態度を基に、学校独自に小学校段階における姿、そして低・中・高学年の姿を設定した。さらには、7つの能力・態度を問題解決能力、伝え合う力、関わる力、行動力と整理して取り組んでいる。

3.地域との協働

持続可能な社会の一員として、地域のまちづくりへ働き掛けるには、人々と協働していくことが大切である。地域との関わりやつながりを深める活動を意図的に行うことが必要である。主に以下の4つの視点からその活動を学習等に位置付けながら取り組んでいる。

(1)子供たちから地域へ働き掛ける活動(2)地域の方から子供たちへ教えてもらうなどする活動(3)子供と地域間における双方向(交流など)の活動(4)共通の目標を持ち、それぞれの立場から活動したり、一緒に活動。

このようなつながり・関わりを深める活動を通して、人々と協働することの意味や価値も体感できるようにしている。これらの活動は、学習のねらいや発達段階を考慮して検討。桜プロジェクトを中心とした「吉野の町づくり」への各学年の働き掛けも学年間の系統を考えている。

左肩・吉野小写真24.実践内容

地域の活性化のため、地域の方々との関わりを多くし協働している地域への見方・関わり方が「点、個別」から「面、協働および機能的」に高まるよう工夫している。

〈1年生・生活科〉

「昔の遊びをたのしもう」=昔遊びを行うことや遊び方を教えてもらうことを通して、地域の方の知恵や温かさに触れ、人との触れ合いを味わう。

〈2年生・生活科〉

「吉野のすてきみつけよう」=吉野校区の季節に応じて変わる「すてき」と季節が変わっても変わらない「すてき」を見つけ、地域の人・ものへ働き掛けながら、その素晴らしさを味わう。

〈3年生・総合的な学習の時間〉

「吉野の町の工夫見つけ隊」=福祉の視点から町づくりについて関わる社会参画の第一歩である。子供たちは、吉野校区を住みよい町にするために現在行われている工夫を見つけるとともに、町をよくするためのアイデアを考え地域へ発信する。

〈4年生・総合的な学習の時間〉

「生き生きビオトープ大作戦」=ビオトープの管理人として、環境や生き物を守っていくこと、作っていくことを体験していく。自分たちの手で作り上げる身近な体験の場となる。また、専門的な知識や大人の手が必要なこともあるため、地域の方の知恵や技術等の援助を受け、ビオトープを整備する。地域の方々と活動する大切さを学ぶ機会である。

〈5年生・総合的な学習の時間〉

「吉野小桜プロジェクト」=このプロジェクトでは、地域の方と町のイメージを「桜でいっぱいの美しい町」と共有化を図っている。子供たちの立場から何ができるかを考えたり、地域の方にアドバイスをしてもらったりして、植樹や桜の保護、環境の整備、広報活動・地域行事への参加等の活動をしている。

取り組み内容を検討していく中で、自分たちにできること、大人に手伝ってもらうこと、大人にお願いすることなどを仕分けしながら、自分たちにできることを考えている。自分たちで行ってきた活動は、桜を守る活動と桜を広める活動である。桜を守る活動では、季節に応じて肥料を足したり、草刈り・水やり・落ち葉清掃をしたりしている。桜を広める活動では、地域の祭りなどに参加し、桜でいっぱいの美しい町づくりの取り組みを行っていることをピーアールし、多くの方に知ってもらうようにしている。

〈6年生・総合的な学習の時間〉

「大牟田の未来をえがこう」=吉野校区から大牟田市と、視野を広げた町づくりについて考え、行動できることに取り組んでいる。「福祉に関する町づくり」を実施。=大牟田市では、認知症の方や家族を支えるため、町で出会う認知症の方に声を掛ける運動が展開されている。地域の民生委員にアドバイスを受けながら、子供たちも自分たちにできることを考え、行動している。

5.連携の広がり

地域との協働として、地域の豊富な人材を活用している。桜プロジェクトでは、地域の「さくら絆プロジェクト」の方と「桜の美しい町をつくろう」という共通の目標を持ち、協働している。「さくら絆プロジェクト」は、子供たちの活動に賛同した民生委員、子供見守り隊、保護者などで結成された地域のプロジェクトである。さくら絆プロジェクトは、定期的に会合を開き、子供たちの活動を支援する取り組みや、同プロジェクト独自でできることなどを話し合い、実践している。

6.ESDストーリーマップの作成

さまざまな取り組みについては、子供たちの主体的な学びや活動となるよう、ESDストーリーマップを作成。総合・生活を社会、理科、道徳などの他教科領域と関連させ、子供たちの思いや思考を一つのストーリーとした具体的構想のことである。子供たちの思いや主体的な活動を大切にするため作成している。

関連記事