超スマート社会に向けて 2030年以降の人材づくりは

ESDと第3期教育振興基本計画 課題と展望を分析

中教審から第3期教育振興基本計画策定について答申が出された。2030年以降の社会の変化を見据えた人材づくりに対応していくための方向性、方策などをまとめたもので、ESDとの関連も深い。そこで、ESDとの関連について2人の研究者に論評してもらった。

政府が積極的な関わりを ESD・SDGs推進への期待

中部大学教授 宮川 秀俊

2006年の改正教育基本法(公布・施行)に盛り込まれた教育振興基本計画はこのたび(3月8日)、中教審により「第3期教育振興基本計画について」として答申された。

第1期は08~12年で、10年計画の初期5年ということであり、教育基本法に示された教育の理念の実現に向けて取り組むべき施策を総合的・計画的に、社会全体の教育改革として推進された。

第2期は13~17年で、11年の東日本大震災の教訓と第1期計画の評価の下に、「自立」「協働」「創造」の理念の実現に向けた生涯学習社会の構築を今後の社会の方向性として遂行された。

これを受けて第3期教育振興基本計画(以下、第3期計画)は18~22年としているが、加えて30年以降の社会像の展望を踏まえた個人と社会の目指すべき姿と教育の役割まで言及されている。

こうした中で、一昨年末(16年12月21日)の中教審の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」の答申では、ESD(持続可能な開発のための教育)が本文1カ所と注釈2カ所に、SDGs(持続可能な開発目標)が本文2カ所に記されており、新教育課程で取り組むこととなっている。

今回の第3期計画の答申を同様の視点からみると、ESDが8カ所、SDGsが3カ所に記されている。また、関連する和文表記として「持続可能な……」が12カ所、「持続的な……」が24カ所にある。言うまでもなく、前記の新教育課程への中教審の答申は学校教育への指針であり、文科省において新学習指導要領等に反映される。

一方、後記の第3期計画は、教育基本法に基づき政府が策定する教育に関する総合計画に反映される。このことから判断すると、異なる二つの立場から、学校教育におけるESDとSDGsを手厚く推進することになる。

ここで、第3期計画の答申について、ESDとSDGsの内容を具体的に見ていくと、ESDは、「我が国がESDの推進拠点として位置付けているユネスコスクールの活動の充実を図り、好事例を全国的に広く発信・共有する」、また、「地域の多様な関係者の協働により、ESDの実践・普及や学校間の交流を促進するとともに、ESDの深化を図る。これらの取組を通して、持続可能な社会づくりの担い手を育む」とされている。SDGsは、教育を巡る国際的な政策の動向から、「持続可能な開発のための2030アジェンダで設定された教育目標(SDG4:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する)の達成に向けて推進していく」とされている。

このことは、ESDとSDGsに政府が積極的に関わり支援していくことと受け止められる。

現在、わが国のユネスコスクール加盟校は14年の「ESDに関するユネスコ世界会議」を契機として千校を超え、その存在とともにESD活動の拠点としての役割と成果が知られている。もちろん、加盟校に限らずESDは全ての学校で取り組むことが大事である。

新教育課程では、ESD並びにSDGsに関わる教育実践がこれまで以上に増えることが予測される。

先に述べた教育振興基本計画の第1期から第2期(08年~17年)は、「ESDの10年(05年~提出前14年)」と並行し、そしてさらなるESDとSDGsの15年(16~30年)に連携し引き継ぐものである。

今回の第3期計画の答申を受けて、実際の教育振興基本計画の策定は政府が行うが、ESDとSDGsをより一層推進するには、時宜を得た、政府の的確な判断と着実な実施が期待される。

未来社会を意識した教育 先駆の実践はESDの中に

宮城教育大学教授 市瀬 智紀

中教審の「第3期教育振興基本計画について(答申)」が、3月8日に示された。

今回の答申では、情報化社会の次に到来する人類史上5番目の新しい社会とされる「超スマート社会(Society5・0)」について大きく取り上げていることが注目されるが、その「超スマート社会」の到来時期として、2030年ごろを一つの区切りと想定している。

30年に向けた教育に関する取り組みといえば、15年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された「持続可能な開発目標(SDGs)」が想起される。

今回の答申では、「3.・2030年以降の社会を展望した教育政策の重点事項」の冒頭部分で、まずこのSDGsについて言及し、社会の持続的な成長・発展を目標とするSDGsのような国際的な政策を踏まえて今後の未来像を描き、その実現のために教育はどのような役割を担うべきかを明確にする必要があると述べていることが印象的である。

このような問い掛けに対して、学校現場はどのように対応していけばよいのであろうか。

初等中等教育段階の具体的な方策としては、「確かな学力の育成」の中で子供たちの基礎的な・知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度を育成する学びに向かう力を育成する方策の一つとして「持続可能な開発のための教育(ESD)」が取り上げられている。

また、「豊かな心の育成」として、自他の生命の尊重、自己肯定感・自己有用感、他者への思いやり、人間関係を築く力、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度、などについて挙げる中で、具体的な方策として、「持続可能な開発のための教育(ESD)」の推進が再掲されている。

さらに、高等教育段階では、問題発見・解決能力の習得の方策の一つとして、SDGsの達成に資するような「持続可能な開発のための教育(ESD)の深化」が取り上げられている。

こうした記述は、これまで10年以上実践と研究が続けられてきたESDが、子供たちの主体的に学習に取り組む態度、自己肯定感・自己有用感、他者への思いやり、人間関係を築く力、問題発見・解決能力といった資質能力の育成にとりわけ有効であるという認識に裏付けられたものであろう。

学校現場に立ち戻ってみると、実際には多く課題を抱えている。前述のような主体性やソーシャルスキル(Social skills)を育成できる活動を十分実践し得ていないと考える学校は多い。加えて、多くの教員は教科の目標や学校の教育目標の実現に精いっぱいであり、その一つ先にある30年以降の未来を想起しながら教育するところに到達できていない。

ただ、新時代の到来を見据え次世代の人材育成ができないのならば、何のために教科の教育や学校の教育目標を実現しているのかということになる。

30年以降の社会を展望した先駆的な取り組みをしている学校の実践は、ユネスコスクールやESDの実践の中に数多くある。それらについてお互いに学び合い、教員が30年以降の未来社会を意識しながら教育できるようになることが、この答申と学校現場をつなぐ鍵になるに違いない。