国際社会の一員の自覚を育てる 「価値観」と「体系的な思考力」に視点

(図)価値観と体系的な思考力の整備と位置付け
第9回ESD大賞の実践紹介
小学校賞・東京都大田区立赤松小学校

東京都大田区立赤松小学校は新学習指導要領の理念に鑑み、ユネスコスクールの責務であるESDの充実に焦点を当て、研究主題を「心豊かで、主体的に活動する、国際社会の一員としての自覚をもった子供の育成」と掲げ、質の高い学びの創造を目指して取り組んでいる。

生涯を通じて行われるESDの基盤として、小学校教育では持続発展可能な社会を構成するための「価値観」と「体系的な思考力」の萌芽(ほうが)と伸長を促すことが重要であると捉えている。

そこで、まず教育活動全体を俯瞰(ふかん)し、育成してきた「生きる力」を「価値観」と「体系的な思考力」に視点を当てて整理した。(

さらに、生きる力と体系的な思考力を計画的かつ系統的に育成するために、学年ごとの「ESDカレンダー」や「ESD系統表」を作成し、実践と更新を行ってきた。児童一人一人が身に付けた「価値観」と「体系的な思考力」を基に、児童自身がそれらを関連付け活用しながら自己を変容させていく教育活動を追究している。

〔赤松小の教育活動〕

研究の狙いは、「教育活動のESDの観点での価値付け」「アクティブラーニングの充実」「『価値観』をはぐくむ授業の創造」の3点である。

主な研究の方法・内容は以下の通りである。

〈教育活動の特徴〉

▽2013年9月30日、ユネスコスクール加盟

▽『スクールサポートあかまつ』を中心とした地域ボランティアの組織化と地域の教材化の強化(洗足池を中心とした系統的な地域学習の実施)

▽『赤松小 学びのスタイル』を基にした問題解決学習の日常化

▽ESDを中心とした大田区立大森第六中学校との小中一貫教育の推進

▽「食育」「花育」「足育」の充実(2015~17年度大田区体力向上モデル校)

▽『なかよし班』(異学年による縦割り班活動)を軸にした特別活動等の充実

▽伝統を受け継ぐ特色ある教育活動の充実=「6年生全員による金管バンドの演奏」「低学年によるモルモットの飼育(2016~17年度東京都小学校動物飼育推進校)」

▽育てたい力

①本質を見抜く力 ②未来像を予測して計画を立てる力 ③多面的、総合的に考える力 ④コミュニケーションを行う力 ⑤よりよいものを創り出していく力 ⑥他者と協力する態度 ⑦つながりを尊重する態度 ⑧進んで参加する態度

〈教育課程・指導計画〉

▽全教科・領域における「ESDカレンダー」の作成とそれに基づく教育実践の充実

▽国語、社会、算数、理科、生活、総合的な活動の時間における「学びのスタイル」の開発とそれに基づく授業改善

▽特色ある教育活動の推進=赤松小ESDの主な内容「かけがえのない自然・生命」「共に生きる社会」「限りある資源・クリーンなエネルギー」「私たちの伝統・私たちの地域」

▽思考過程が構造化され、ESDの思考力と価値観が明示された指導案の作成

▽個に応じた教材の開発(導入の工夫・生活との関連・体験的活動の重視)

〈学習過程〉

▽問題解決の学習過程『赤松小学びのスタイル』の実践と効果的な話型指導

①つかむ→②見通す→③いどむ→④深める→まとめる→⑤振り返る→生かす

〈学習習慣・学習環境〉

▽外部講師の積極的活用による授業の充実

▽ノート指導の工夫(『ノートの達人』等)

▽話型指導の工夫(『説明の達人』等)

▽ICTの活用

▽「発表ボード」等の活用

▽校内に『赤松サイエンスワールド』の設置

▽ESDの価値を育む校内掲示の工夫

〈評価・発信〉

▽自己評価(学習感想・ポートフォリオ・『ペディア』)・相互評価の工夫

▽評価規準等の見直しと手だての明確化

▽『ユネスコスクール通信』の発行

▽学年便りでのESD実践報告『ESDの窓』による情報発信

〈ESDを促進する校内環境〉

▽赤松サイエンスワールド=児童の興味・関心を高めるため、算数や理科、環境の観点で内容を吟味し、定期的に更新している

▽限りある資源・クリーンなエネルギー=落ち葉掃き→腐葉土作り→各栽培活動への活用→落ち葉掃き:このサイクルを通して資源の有限性の理解を促している

▽かけがえのない自然・生命=児童による動物飼育を円滑に実施するために、獣医師と連携して、よりよい教育的効果を与える環境を整備している

▽共に生きる社会=国際理解教育や地域に住まう多様な方との交流を通して、多様性の理解を促している

▽私たちの伝統・私たちの地域=130年を超える本校の歴史の中で受け継がれてきた伝統と地域を生かした学習を通して、愛校心と地域愛、責任性の伸長を促している

〈取り組みの成果〉

2016、17年度の2年間、同校は大田区教育委員会教育研究推進校として、また、東京都教育委員会「持続可能な社会づくりに向けた教育推進校」の指定を受け、「学びを創る~ESDの充実を通して~」という研究主題を掲げ研究に取り組んできた。持続可能な社会づくりを担う児童に「価値観」と「体系的な思考力」を育成すべく具体的な手だての検討と検証を行うことで、次のような児童の変容を得ることができた。

「児童の変容」=2017年度、同校における大田区学習効果測定の結果は、4年生以上の全ての学年で、基礎力・活用力ともに目標値(期待正答率)を上回っている。また、「平成29年度持続可能な社会づくりに向けた教育推進校」に係るアンケート(第1回)からは、この2年間の取り組みにより持続発展可能な社会を構成するための関心や意欲の高さが読み取れる。これらのことから、本研究を通して「価値観」と「体系的な思考力」の萌芽と伸長がみられた。

〈今後の課題〉

本研究を通して、児童一人一人に「価値観」と「体系的な思考力」が身に付き始めている。今後も実践と検証を積み重ね、児童自身がそれらを関連付け活用しながら自己を変容させ、さらに「Think Globally, Act Locally」の視点で実践力を高めていく教育活動を追究していくことが課題である。