(円卓)学習評価―30年のギャップ

教育評価総合研究所代表理事 鈴木 秀幸

今からちょうど30年前、昭和から平成になるころ、英国の中等学校に1カ月ほどいた。

ちょうどそのとき、試験改革としてGCSE試験(中等教育修了資格試験)が始まった。改革の目的は、高次の技能といわれる思考力や判断力、問題解決力などを評価する仕組みを資格試験に組み込むことにあった。

また、コンピテンシーやアクティブ・ラーニング、深い理解など、最近わが国でも盛んに使われる用語をこのとき初めて耳にした。

試験改革(広く言えば評価改革)をもたらした要因は、既存の知識を習得するだけでは社会の変化に対応できず、知識を適切に活用したり、既存の知識を組み替えたりする能力や技能が必要となる、という認識による。

そのためには、学習指導の在り方だけでなく、評価の在り方も変える必要があるとして、試験改革が始まったのである。

当時のわが国は共通一次試験やその後継のセンター試験で、多肢選択式の問題が出題されていた。多肢選択式では高次の技能を評価できないため、これに対応する学習指導も高次の技能の育成に向けられていなかった。

わが国と英国で求める能力や技能は明らかに違っていた。この状態がさらに続けば、わが国が育成する人材の質が、社会変化に対応できなくなると危惧した。

当時のわが国は、経済的には米国をしのぐのではといわれていたが、その後の30年に何があったかは説明不要であろう。少なくとも、わが国が最先端の分野で優位を失いつつあると多くの人々が感じざるを得ない状況である。

センター試験に代わって大学入学共通テストに一部とはいえ記述式が導入されるのは、30年のギャップを埋めるものである。また、新学習指導要領が資質・能力ベースのカリキュラムの編成に手を付けたのも、ギャップを埋めるものである。

これに対応して指導要録を中心とする学習評価の在り方も変わらざるを得ない。

今回の改訂では、高校の指導要録にも観点別評価を記入することとなった。学習評価の改革がなぜ必要か、また今回の指導要録の改訂について、学習評価の在り方を検討したワーキング・グループの委員として説明する必要があると考えている。