(円卓)SDGsの取り組みを具体的な形に

大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授 伊井 直比呂

今年4月1日に施行された改正入管法に伴う外国人労働者の受け入れは、やがて「生活者」としての外国籍児童生徒の受け入れ数の増加を招くと考えられる。

昨年度の法務省の統計によると日本に在留する外国籍の人は263万人を超え、総人口に占める割合はおよそ2%だという。今後、この割合は確実に増加することになろう。

そこで、「教育」の観点からこの状況を捉え直してみたい。毎日新聞が文科省の資料に基づき「外国籍・生徒1万人超が日本語『無支援』」という記事を掲載した(5月4日付電子版)。

小中高校と特別支援学校に在籍して日本語教育が必要と判断されながら、その機会が得られずに授業が分からない「無支援状態」の外国籍児らが1万400人に達するという。それは全都道府県に広がり、外国人の集住地域だけの課題ではないことも併記されていた。

私の研究室の学生が、関西のある公立小学校で日本語指導ボランティアに参加していた。その経験から、「日本語が分からない」ことに起因する学習内容からの疎外が、どれほどその後の人生の選択肢を狭めるかということを実感した、という。

これは、学校に通えていない子供が世界に1億3千万人いるという深刻な問題と同じであり、人権の視点から「子どもの権利条約」3条、28条、29条の国の具現化の問題として捉えられよう。

つまり、学校に行く機会を形式的に得ていたとしても、実質的に学習内容から疎外され放置されていては、学習者の「権利」に値する教育を受けているとは言えず、個々の成長や発展だけでなく、社会的発展にも大きく関係する問題ということである。

ところで、この問題をESDやSDGsの観点からも考えてみたい。これまで、教育の国際化の一つとしてESDの推進とGAP(ESDのグローバル・アクション・プログラム)の具体化が求められていた。

これらによる教育や社会の変革は、人と社会・自然との関係性において、貧困問題や心身の健康をはじめ、地球環境に至るまで公正な解決と社会づくりを目指して行われる。それはSDGsと連動して一人一人を大切にすることを前提に推進されている。

大切なのは、今、身近に困難と欠乏を抱える人に対して、ESDやSDGsの取り組みを具体的にどのような形で実現するのかだと言えよう。