(鉄筆)菅官房長官が新元号発表時に……

菅官房長官が新元号発表時に掲げた墨書「令和」のレプリカが、国立公文書館で公開されていると聞いて出かけた。力強く、あるいはしなやかな一点一画、流れるような筆遣い、「令」と「和」のバランスのよさ、まさに墨書でしか生み出せない美しさに、一国民として、新元号「令和」への親しみと誇りを強く感じた。

会場を後にしながら考える。もしこれが墨書でなく、ワープロで作成された文字であったら、また、万葉集巻五「梅花歌卅二(さんじゅうに)首」の序「初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぎ」から引用されず、適当な二字熟語から国民投票などで選ばれたとしたら、さらに、元号が645年「大化」から2019年「令和」まで、ほぼ途切れることなく続いていなかったら、新元号令和は、多くの国民からそっぽを向かれたに違いない。

元号はわが国の歴史、伝統、文化を体現しているのである。かつて、評論家の福田恆存氏は「文化とは私たちの生き方であり、生活の様式である」と述べた。また、菅官房長官はレプリカ公開を通して「新しい元号に広く親しみを持たれ、生活の中に深く根差していくことを期待している」と述べている。この二人の言葉は、私たちが、歴史、伝統、文化に育まれ、規定されて生きているという意味で通底しているように思う。

「伝統と文化の尊重」は、学校教育の重要な柱である。令和を生きる子供たちにとって、令和改元が、わが国の歴史、伝統、文化への深い学びと誇りにつながればと大いに期待している。