(円卓)越境できる教師教育者を

大阪教育大学准教授 寺嶋 浩介

近ごろ、いろいろな学会や研究会において、「教師教育者」が話題となっている。

教師教育者とは、一言で言えば「先生の先生」である。

例えば学校で、ベテラン教師が若手教師や教育実習生に指導をする。研究主任として、学校での研究や研修を推進する。

教育委員会においては指導主事が学校を訪問し、当該校の実践研究について指導をする。あるいは、地域の各学校の教師に対して研修をする。

私のような教員養成大学や学部に所属する大学教員も、教師教育者であると言える。現職教員に対し、講義や実習の指導をする。

これとは別に、実践研究を進める学校に対し、指導助言をすることもある。加えて、教育センターの方々と協働し、研修の設計や実践をしている。

これまで、教師教育者という存在はいなかったわけではないが、意識されてこなかった。後輩に「何でも尋ねてほしい」という気持ちはあるが、じっくりコミュニケーションをとる余裕がない。

指導主事としての概念的な役割は分かっているが、どうしても研究の視点よりも、地域の問題への対応に終始してしまう、というのが正直なところではないだろうか。

学校現場において、若手教員の割合が増えている。それに伴い、地域の中心となる若手の指導主事が増えてきた。

こうした状況で、これまでの知見を伝えたり、新しい社会の在り方に伴って学校を変えたりできる指導的立場の教師教育者の存在や、その力量向上は今後重要な課題となる。まずはそうした立場にある者が、アイデンティティーを明確にしていかないといけない。

研究や政策が進めば、今後はその役割に関するスタンダード化が図られるようになるだろう。

私はその中で、さまざまな立場を越境できる教師教育者が特に必要となると思う。

学校の研究主任として、教育委員会や大学の研究者にアクセスし、学校研究を充実させる。教育委員会と大学の連携を充実させ、具体的なプログラムや仕組みを設計できる。

さまざまな組織の実情に配慮し、お互いの違いを理解し、それを楽しみながら、教育実践研究を充実させることのできる人材が必要不可欠である。