学校を変えるいじめの科学

深刻ないじめ被害に遭っている当事者やその親、学級のいじめ問題に直面している教師が、具体的な対処法を求めて本を繰るケースは少なくないだろう。しかし、この本はそういった「対策本」ではないと著者は冒頭でくぎを刺す。

和久田学 著
日本評論社
2000円+税

本書の目的は、世界中の研究結果をベースに、いじめのメカニズムや被害者・加害者・傍観者の特徴を明らかにし、予防や初期対応に生かすことにある。単に正義感に訴えたり、対症療法的な解決を探るのではなく、いじめという事象を科学的な視点で捉えた一冊だ。

著者は教育新聞の好評連載「いじめのエビデンス」(19年1~3月掲載)を担当した、小児発達学の研究者である和久田学氏。

同氏は、傍観者の立場も含めるとほとんどの人が「いじめの経験者」だといい、自らの経験に基づいて各人が対応策を主張するために、かえって解決を難しくしていると指摘する。

第1部では、そうした個人の経験則を排し、科学的なエビデンスに基づいていじめを定義。加害者や被害者が生まれる理由、傍観者がいじめに関与しない理由などを分かりやすく解説する。

その知見を基に、第2部でいじめ予防の具体的な内容、第3部では実際にいじめが起きてしまった場合の介入方法について考察する。

教育には愛が必要だが、愛だけではいじめは解決しない。子供の一生に影響する問題だからこそ、効果が検証された方法でアプローチする必要があると訴える同氏の言葉に、一筋の光明を見る。